ヒロアカ短編集
◇ 真夏クレ〜プ◇
昼下がり、風も吹かない灼熱の街を歩いていた。サングラスとキャップ帽子で身を隠す啓悟くんと。
久しぶりにお休みが被って、珍しく啓悟くんから外に行こうと言ってくれた。
外に繰り出したのは良いものの、汗流れる身体が、涼しい場所と喉を潤す冷たい食べ物や飲み物を欲している。
それなのに、フワッと熱気に乗ってやってきた甘いにおいが誘惑してきた。
においを辿って彼に断りもなく、フラフラ歩いていたら、ポップな飾り付けされたキッチンカーの前にいた。
それは今欲しているアイスクリームやかき氷、ラムネとかとはかけ離れたクレープのにおいだった。
人が全然いない。
「食べる?」
啓悟くんの柔らかい声とニッコリ笑顔。
優しい、優しすぎる。「こんな熱いのに、クレープ?」とか、顔歪ませて言ってもいい場面なのに言わないなんて。
「ごめんね!気にしないで。においにつられただけだから!」
食い意地張ってました宣言で、この場を押し切る。
再び涼しい場所、食べ物、飲み物探しに戻ろうと数本歩き出す。啓悟くんはクレープ屋さんのキッチンカーから動かない。
「どうしたの?」
「……俺、今日はキミの我慢に付き合わない。」
唇は笑っているのに、なんでそんな寂しそうな顔するんだろう。
「我慢じゃないよ。食い意地張ってただけだよ。」
啓悟くんに近寄って言った。
すると、プッと小さく笑われた。
「そーいう言い方すんのズルいな。」
ありのままを言っただけなのに、ズルい?
私に聞き返す隙も与えず、啓悟くんが私の手首をそっと掴んでクレープ屋さんのキッチンカーに近寄った。立て看板に書いてあるメニューを見て、秒単位で啓悟くんはどれにするか決めてしまった。
こういうところも、速すぎる男。
でも「決まったら、教えて」なんて、笑顔で私のことは急かさない。
こんなできる男が私の彼氏でいいの?なんて、一抹の不安を抱えながら、クレープを決めた。
「ありがとう。じゃあ、コレにする」
私が選んだのは、いちごバナナチョコ生クリームカスタード。注文する時、絶対噛む自信がある。
「おっけー」
「あ、待って!」
緩く返事をして、啓悟くんがキッチンカーに注文しに行こうとするのを慌てて止めた。
「啓悟くんは、席で待ってて。私買ってくる!」
キッチンカーのすぐそばにある、パラソル付きの丸いテーブル席に、彼を無理やり座らせた。
「別に俺は──」
啓悟くんが何か言いかけていたけど、構わずにクレープの注文しに行った。
小さく息を吸って
「すみません。いちごバナニャっ」
やっぱり噛んだ。恥ずかしい。しかも、恥ずかしくて顔を伏せた瞬間に発見してしまったメニュー表。これ指差せばよかったと後悔しても遅い。
何事も無かったかのようにもう一度言おうとしたら、右耳から聞き慣れた声がした。
「いちごバナナ生クリームカスタード2つ」
バッと顔を上げると、啓悟くんがいた。私の代わりに注文してくれた。
私は声が出せずに口が金魚みたいにパクパクしてしまう。
「えっ……ホークス公安委員長!?」
男性店員さんの声が弾んだ。
そりゃそうだ。今私の真横にいるのはサングラスもキャップ帽子も外してしまった、鷹見啓悟だから。
「こんにちは。」
啓悟くんは朗らかに店員さんに挨拶する。
しかも私の肩に手を乗せている。なんなら指軽く食い込んでる気がする。もう私に距離を取らせないように明らかにやんわり逃げ道塞いでるよね。「ただならぬ関係です」って示してるようなもんだ。
店員さんは、特に私達のこと何も詮索せずにむしろ
生クリームマシマシ大サービスしてくれた。
なんだか、全てに申し訳ない。
パラソル付きの丸いテーブルでクレープを食べながら聞いた。
「なんで、サングラスと帽子とっちゃったの?」
「キミのこと日陰者にしたくないから。」
そのたった一言がとてつもなく強力だった。
声が詰まる。視界が霞みそう。
「俺と、俺の周りの人のこと、気にしてくれてるんでしょ。俺と付き合ってるのバレたら色んなところに迷惑かけるって。だから、普通の恋人みたいなデートとかあれこれ我慢してる。」
「我慢じゃないよ。……普通の恋愛できないって分かってて、啓悟くんとお付き合いさせてもらってるから」
声が震えそうになるのをなんとか堪えて言い切った。
「はい、また出ました。我慢じゃないよって口癖」
啓悟くんがヘラっと笑った。
何も言えずにいると啓悟くんが続けた。
「本音言うとキミのこと好きすぎて隠しておきたい。けど、それ以上にキミが俺にとってめちゃくちゃ大事な人だって知ってもらいたい。
……あと、変な虫がつくの防止としても隠して置きたくない。」
啓悟くんの大人な感情と子供っぽい本音の両方が見えて思わず、小さく笑ってしまう。
可愛いな、なんて思っていたのも束の間。
「だから、キミばっかり我慢せんでよかよ」
彼が私の手を取り、流れるようにテーブルの上で堂々と指先を交わらせた。体温が上昇していく。
この身体中の熱さは、「夏だから」の一言では済まされない。
昼下がり、風も吹かない灼熱の街を歩いていた。サングラスとキャップ帽子で身を隠す啓悟くんと。
久しぶりにお休みが被って、珍しく啓悟くんから外に行こうと言ってくれた。
外に繰り出したのは良いものの、汗流れる身体が、涼しい場所と喉を潤す冷たい食べ物や飲み物を欲している。
それなのに、フワッと熱気に乗ってやってきた甘いにおいが誘惑してきた。
においを辿って彼に断りもなく、フラフラ歩いていたら、ポップな飾り付けされたキッチンカーの前にいた。
それは今欲しているアイスクリームやかき氷、ラムネとかとはかけ離れたクレープのにおいだった。
人が全然いない。
「食べる?」
啓悟くんの柔らかい声とニッコリ笑顔。
優しい、優しすぎる。「こんな熱いのに、クレープ?」とか、顔歪ませて言ってもいい場面なのに言わないなんて。
「ごめんね!気にしないで。においにつられただけだから!」
食い意地張ってました宣言で、この場を押し切る。
再び涼しい場所、食べ物、飲み物探しに戻ろうと数本歩き出す。啓悟くんはクレープ屋さんのキッチンカーから動かない。
「どうしたの?」
「……俺、今日はキミの我慢に付き合わない。」
唇は笑っているのに、なんでそんな寂しそうな顔するんだろう。
「我慢じゃないよ。食い意地張ってただけだよ。」
啓悟くんに近寄って言った。
すると、プッと小さく笑われた。
「そーいう言い方すんのズルいな。」
ありのままを言っただけなのに、ズルい?
私に聞き返す隙も与えず、啓悟くんが私の手首をそっと掴んでクレープ屋さんのキッチンカーに近寄った。立て看板に書いてあるメニューを見て、秒単位で啓悟くんはどれにするか決めてしまった。
こういうところも、速すぎる男。
でも「決まったら、教えて」なんて、笑顔で私のことは急かさない。
こんなできる男が私の彼氏でいいの?なんて、一抹の不安を抱えながら、クレープを決めた。
「ありがとう。じゃあ、コレにする」
私が選んだのは、いちごバナナチョコ生クリームカスタード。注文する時、絶対噛む自信がある。
「おっけー」
「あ、待って!」
緩く返事をして、啓悟くんがキッチンカーに注文しに行こうとするのを慌てて止めた。
「啓悟くんは、席で待ってて。私買ってくる!」
キッチンカーのすぐそばにある、パラソル付きの丸いテーブル席に、彼を無理やり座らせた。
「別に俺は──」
啓悟くんが何か言いかけていたけど、構わずにクレープの注文しに行った。
小さく息を吸って
「すみません。いちごバナニャっ」
やっぱり噛んだ。恥ずかしい。しかも、恥ずかしくて顔を伏せた瞬間に発見してしまったメニュー表。これ指差せばよかったと後悔しても遅い。
何事も無かったかのようにもう一度言おうとしたら、右耳から聞き慣れた声がした。
「いちごバナナ生クリームカスタード2つ」
バッと顔を上げると、啓悟くんがいた。私の代わりに注文してくれた。
私は声が出せずに口が金魚みたいにパクパクしてしまう。
「えっ……ホークス公安委員長!?」
男性店員さんの声が弾んだ。
そりゃそうだ。今私の真横にいるのはサングラスもキャップ帽子も外してしまった、鷹見啓悟だから。
「こんにちは。」
啓悟くんは朗らかに店員さんに挨拶する。
しかも私の肩に手を乗せている。なんなら指軽く食い込んでる気がする。もう私に距離を取らせないように明らかにやんわり逃げ道塞いでるよね。「ただならぬ関係です」って示してるようなもんだ。
店員さんは、特に私達のこと何も詮索せずにむしろ
生クリームマシマシ大サービスしてくれた。
なんだか、全てに申し訳ない。
パラソル付きの丸いテーブルでクレープを食べながら聞いた。
「なんで、サングラスと帽子とっちゃったの?」
「キミのこと日陰者にしたくないから。」
そのたった一言がとてつもなく強力だった。
声が詰まる。視界が霞みそう。
「俺と、俺の周りの人のこと、気にしてくれてるんでしょ。俺と付き合ってるのバレたら色んなところに迷惑かけるって。だから、普通の恋人みたいなデートとかあれこれ我慢してる。」
「我慢じゃないよ。……普通の恋愛できないって分かってて、啓悟くんとお付き合いさせてもらってるから」
声が震えそうになるのをなんとか堪えて言い切った。
「はい、また出ました。我慢じゃないよって口癖」
啓悟くんがヘラっと笑った。
何も言えずにいると啓悟くんが続けた。
「本音言うとキミのこと好きすぎて隠しておきたい。けど、それ以上にキミが俺にとってめちゃくちゃ大事な人だって知ってもらいたい。
……あと、変な虫がつくの防止としても隠して置きたくない。」
啓悟くんの大人な感情と子供っぽい本音の両方が見えて思わず、小さく笑ってしまう。
可愛いな、なんて思っていたのも束の間。
「だから、キミばっかり我慢せんでよかよ」
彼が私の手を取り、流れるようにテーブルの上で堂々と指先を交わらせた。体温が上昇していく。
この身体中の熱さは、「夏だから」の一言では済まされない。
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