ヒロアカ短編集
◇ 好きなヤツの為なら頑張るって感じの爆豪くん◇
最近、爆豪くんとすれ違う。付き合っているのに。
同業で、お互い忙しいのは分かっている。もちろん毎日なんてワガママ言わないけど、気づいたら2週間もプライベートで会えていない日が続いていた。それはもういいとして。
極め付けは久しぶりに休みが被るから、会えないかメッセージを送った時のこと。
【悪い、無理。】
バッサリと振られてしまった。俯きがちにうさぎのイラストのOKスタンプを押して返信する。
爆豪くんだって数少ない休み自由にしたいよね。
そう心の中で言い聞かせても、つい、ため息が出てしまう熱帯夜だった。
人を焼肉でもするかのような陽の光に耐えながら、淡々と任務をこなす日々。
いつの間にかあの熱帯夜からまた2週間経っていた。
私の送ったうさぎのOKスタンプで止まったままのやりとりを動かしたのは、爆豪くんだった。
【月曜日 朝7時。サングラスと酔い止め、日焼け対策持ってここに来い。】
一瞬、任務?と思った。でも、すぐに送られた地図の画像を見て声をあげそうになる。休憩中で周りに迷惑をかけないよう静かにニヤケることに徹した。
「爆豪くん、おはよー!」
迎えた月曜日の朝7時。本日晴天なり。
待ち合わせ場所で彼の姿を見た瞬間、大袈裟に片手をブンブン振って呼びかける。いい大人だってことを忘れて、はしゃいだ。
目の前には鮮やかな青い海が広がっている。そして何より、爆豪くんと久々に2人きりで会えたのがはしゃがざるを得なかった。
現場はよく被るから久々ではないけど。2人きりというのが重要。
爆豪くんは、相変わらず真顔で片手を軽く上げて、挨拶を済ませる。それでいい、これぞ爆豪くん。
爆豪くんの背後には色んな小型船が海に揺られていた。
「今日は誘ってくれてありがとう。」
まさかクルージングに誘ってくれるだなんて思っても見なかった。それに、船や船長とか手配するのも大変だっただろうに……。特別な日でも無いのに、ここまでやってくれる彼への好きが募りまくりだ。
「乗れ」
いつもの端的な爆豪くんの言い方。だけど乗り物を前にすると、不思議とテロリストに指示される人質にでもなったような錯覚を覚える。
「うん、それでは遠慮なく」
おふざけはここまでにして、案内されたセーリングクルーザーに心臓をバタつかせながら乗る。
中に入るとさらに心臓がバタつく。
小型船なのにキッチン、ソファー、ベッドまでついてラグジュアリーな内装に興奮せずにいられない。
「豪華やー」って雄英寮始まった時のお茶子ちゃんのように卒倒しそうだった。
日常からかけ離れた空間についうっとりしていると、クルーザーが急に動き出した。
あれ、爆豪くんは?それに船長にまだご挨拶できてない!
とりあえず適当に船内を小走りしていたら、操縦室についたので、ドアをノックして開ける。
見えた光景に瞬きを忘れて、しばし目をかっぴらくこととなった。
「失礼しまーす。ご挨拶遅れ……って、え!?爆豪くん!?」
爆豪くんは後ろを振り向かずにチッと舌だけ打つ。
「うっせーな。気ィ、散るだろーが。」
怒号ではなく珍しく静かに喋る爆豪くん。
見慣れない光景すぎて、自分の頬をつねる。
「大丈夫、痛い。」
「てめェ、なにしてんだ」
爆豪くんが運転してる……船を。
ジンジンする頬がこれは現実だと教えてくれた。
「爆豪くん、船の操縦免許取ったんだ。」
「ヒーローが無免許運転するわけねーだろ、ボケ。」
「……なにゆえに?」
船と爆豪くん、全く結びつかない。
少しの間の後、彼が髪を乱雑に掻きながらボソリと呟いた。
「……テメーが、乗ってみてえって言ってたからだろーが。」
「え?」
「TVで見とっただろ」
そういえば先月、バラエティ番組で夏の旅行の特集やってて船旅してる芸能人達を見た覚えがある。
忘れてたくらいだから、きっと軽い気持ちでその時の私は「乗ってみたい」って言ったんだ。
「覚えててくれてたの?」
何気なく言った本人よりも、覚えていて、気にしてくれて。爆豪くんのこうした優しさに触れると、心が温まってなんだかこそばゆい。
「んで、テメェは忘れてんだよ。船から突き落とすぞ」
目を吊り上げて、低い声。爆豪くんに怒られると何故か笑いが込み上げてくる。
言葉はこんなにトゲトゲしいのに、行動で大切にしてるからって示してくるんだもんなぁ。
甘い言葉よりも甘い事実や思い出をたくさん作ってくれる。
「あはは、ごめん。3歩歩いたら忘れる人種なもので。」
「ふざけんじゃねぇ。」
「……本当に、ここまでしてくれてありがとう。」
またチッと、舌打ちで彼は返事した。なんとなくさっきよりも優しい気がした。
船の操縦に集中している、真剣な爆豪くんの横顔を独り占めできてもう、お腹いっぱい。
ある程度走ったら、停泊した。
あのラグジュアリーな部屋で一休み。
「運転お疲れ様です、爆豪船長。」
両腕広げてドカッとソファーに座る爆豪船長。
感謝の意を込めて肩を揉んだり、冷蔵庫にあったドリンクや持ってきたお菓子を準備した。
「免許取ってから今日が運転初めて?」
「先に練習台に出久と切島たち乗せたわ。アイツらが船乗った瞬間、命の保障はねえっつって。」
「そ、そこまで入念に準備してくれてたんだね。」
その船が陸から離れて、命の保障が無いと言われた瞬間、上鳴くんと瀬呂くんの阿鼻叫喚。静かに漢らしく受け入れた切島くんと、緑谷くんがなんとなく想像できてしまった。
この日の為に命懸けで付き合ってくれたみんな、本当にありがとう。心の中でそっと合掌した。
「そういえば、免許取るのどれくらいかかったの?」
「諸々含めて1ヶ月」
「ひぇっ」
思わず変な声が出た。ちょうど私が呑気に爆豪くんに2人きりで会えないのが寂しいとか思っていた時期じゃん。
「……爆豪くんの数少ないお休み、全てこの免許のために時間使ってたの?」
「おう」
爆豪くんは涼しい顔して言うけど、社会人が船の免許取るなんて、想像しただけでも気が滅入る。私なら諦めてる。
彼が私のたった一言の為に裏でこんなに頑張ってくれていたなんて……感謝しきれないな。
「神棚に爆豪くんの船の免許証飾って365日お祈りしたいくらい、感謝してる。ありがとう。」
「テメーの言い回しどーなってんだよ」
「それだけクソデカ感情を抱えてるってこと。ね、免許証見てもいい?」
爆豪くんが意味わかんねーって呆れながらも、財布から船の運転免許証を取り出してくれた。
両端を掴んで受け取った。
爆豪くんが身を削って取ってくれた船の免許証。
素材はプラスチックで軽いだろうに、重みがある。
「一級って、一番難しいやつ?」
「たりめーだろ。中途半端なもんやったって意味ねえ」
やるなら1番。そうだ、爆豪くんっていつだってそうなんだよね。……私も見習わなきゃ。
爆豪くんの努力の結晶である、船の免許証を見て深く頷いた。
「よしよし、本当に頑張ったね。ありがとう、爆豪くん」
「テメェ、気色悪ぃことすんな」
爆豪くん本人の頭を撫でるのには勇気が無かったから、代わりに船の免許証の顔写真爆豪くんを人差し指で優しく撫でたら怒られた。
一息ついたらデッキに出てみた。
頬や髪を撫でる生暖かい潮風の香り。
果てしなく広がる陽の光で煌めく海。
思わず、わぁっ。と子供みたいに反応してしまった。
そんな私を見てなのか、爆豪くんが一瞬、フッと優しく笑っていた気がする。次に見た時は鬼の子も泣く爆豪勝己の顔に戻ってしまった。
しばらくお互いに好きなようにデッキを歩き回って、遠くに見える街や橋、工場の景色、釣りをしている船とか眺めていたら、爆豪くんと肘が当たって距離が自然と縮まっていたことに気づいた。
「あ、ごめん。」
そう一言言って離れようとすると、顎を優しく持ち上げられる。そのまま、爆豪くんから軽く唇を重ねてくれた。
なんにも憚るものが無いオープンなこの状況のキスは、当然慣れなくて。全身が熱を帯びていく。
唇が離れると爆豪くんと視線が交わる。
また無言で爆豪くんが唇を重ねる。
外だというのに随分と積極的。
唇が離れたタイミングで聞いてみた。
「……今日は、外なのに積極的だね。」
「ここなら週刊誌の野郎どもの目もねえからな」
「ふふっ、確かに」
この煌めく海の上でならドローンでも使わない限り、週刊誌の記者達の目は確かに届かなさそう。
そんな爆豪くんとの甘いひとときもあっという間に終わってしまった。
早起きで疲れているだろうに、爆豪くんは車で私を家まで送ってくれるみたいで、もう至れり尽くせり。
「今日は朝早くからありがとね。……いや、今日だけじゃないか。免許取ったり今日までの準備も本当にありがとう。」
見慣れた街並みが見えてきたところで、改めてお礼を言う。
午後は少しでもゆっくり休んで。
そう言おうとしたら、不機嫌な様子で爆豪くんが喋った。
「おい、こんなんで満足してんじゃねーぞ。」
「いやもう大満足じゃ済まない程、大満足だよ?」
あんな優雅で甘々な時を過ごせて、致死量の幸せを浴びたというのに。
家の近くに来て降りる準備をするのに、シートベルトを外そうとすると、爆豪くんの暖かくて大きな手に捕らえられてしまった。
「……帰す気ねーから。テメェが出勤するまでな」
「えぇ!?」
私の手に指をしっかり絡ませながら、不敵に笑う爆豪くん。
なす術なく、車は私の家を通過点に彼の家へ。
部屋に入るまで、手は強く握られたままだった。
いったい、爆豪くんはどれだけ私を幸せ漬けにすれば、私の心を溶かせば気が済むんだろう。
……いや、やっぱり気が済まないで欲しい。
最近、爆豪くんとすれ違う。付き合っているのに。
同業で、お互い忙しいのは分かっている。もちろん毎日なんてワガママ言わないけど、気づいたら2週間もプライベートで会えていない日が続いていた。それはもういいとして。
極め付けは久しぶりに休みが被るから、会えないかメッセージを送った時のこと。
【悪い、無理。】
バッサリと振られてしまった。俯きがちにうさぎのイラストのOKスタンプを押して返信する。
爆豪くんだって数少ない休み自由にしたいよね。
そう心の中で言い聞かせても、つい、ため息が出てしまう熱帯夜だった。
人を焼肉でもするかのような陽の光に耐えながら、淡々と任務をこなす日々。
いつの間にかあの熱帯夜からまた2週間経っていた。
私の送ったうさぎのOKスタンプで止まったままのやりとりを動かしたのは、爆豪くんだった。
【月曜日 朝7時。サングラスと酔い止め、日焼け対策持ってここに来い。】
一瞬、任務?と思った。でも、すぐに送られた地図の画像を見て声をあげそうになる。休憩中で周りに迷惑をかけないよう静かにニヤケることに徹した。
「爆豪くん、おはよー!」
迎えた月曜日の朝7時。本日晴天なり。
待ち合わせ場所で彼の姿を見た瞬間、大袈裟に片手をブンブン振って呼びかける。いい大人だってことを忘れて、はしゃいだ。
目の前には鮮やかな青い海が広がっている。そして何より、爆豪くんと久々に2人きりで会えたのがはしゃがざるを得なかった。
現場はよく被るから久々ではないけど。2人きりというのが重要。
爆豪くんは、相変わらず真顔で片手を軽く上げて、挨拶を済ませる。それでいい、これぞ爆豪くん。
爆豪くんの背後には色んな小型船が海に揺られていた。
「今日は誘ってくれてありがとう。」
まさかクルージングに誘ってくれるだなんて思っても見なかった。それに、船や船長とか手配するのも大変だっただろうに……。特別な日でも無いのに、ここまでやってくれる彼への好きが募りまくりだ。
「乗れ」
いつもの端的な爆豪くんの言い方。だけど乗り物を前にすると、不思議とテロリストに指示される人質にでもなったような錯覚を覚える。
「うん、それでは遠慮なく」
おふざけはここまでにして、案内されたセーリングクルーザーに心臓をバタつかせながら乗る。
中に入るとさらに心臓がバタつく。
小型船なのにキッチン、ソファー、ベッドまでついてラグジュアリーな内装に興奮せずにいられない。
「豪華やー」って雄英寮始まった時のお茶子ちゃんのように卒倒しそうだった。
日常からかけ離れた空間についうっとりしていると、クルーザーが急に動き出した。
あれ、爆豪くんは?それに船長にまだご挨拶できてない!
とりあえず適当に船内を小走りしていたら、操縦室についたので、ドアをノックして開ける。
見えた光景に瞬きを忘れて、しばし目をかっぴらくこととなった。
「失礼しまーす。ご挨拶遅れ……って、え!?爆豪くん!?」
爆豪くんは後ろを振り向かずにチッと舌だけ打つ。
「うっせーな。気ィ、散るだろーが。」
怒号ではなく珍しく静かに喋る爆豪くん。
見慣れない光景すぎて、自分の頬をつねる。
「大丈夫、痛い。」
「てめェ、なにしてんだ」
爆豪くんが運転してる……船を。
ジンジンする頬がこれは現実だと教えてくれた。
「爆豪くん、船の操縦免許取ったんだ。」
「ヒーローが無免許運転するわけねーだろ、ボケ。」
「……なにゆえに?」
船と爆豪くん、全く結びつかない。
少しの間の後、彼が髪を乱雑に掻きながらボソリと呟いた。
「……テメーが、乗ってみてえって言ってたからだろーが。」
「え?」
「TVで見とっただろ」
そういえば先月、バラエティ番組で夏の旅行の特集やってて船旅してる芸能人達を見た覚えがある。
忘れてたくらいだから、きっと軽い気持ちでその時の私は「乗ってみたい」って言ったんだ。
「覚えててくれてたの?」
何気なく言った本人よりも、覚えていて、気にしてくれて。爆豪くんのこうした優しさに触れると、心が温まってなんだかこそばゆい。
「んで、テメェは忘れてんだよ。船から突き落とすぞ」
目を吊り上げて、低い声。爆豪くんに怒られると何故か笑いが込み上げてくる。
言葉はこんなにトゲトゲしいのに、行動で大切にしてるからって示してくるんだもんなぁ。
甘い言葉よりも甘い事実や思い出をたくさん作ってくれる。
「あはは、ごめん。3歩歩いたら忘れる人種なもので。」
「ふざけんじゃねぇ。」
「……本当に、ここまでしてくれてありがとう。」
またチッと、舌打ちで彼は返事した。なんとなくさっきよりも優しい気がした。
船の操縦に集中している、真剣な爆豪くんの横顔を独り占めできてもう、お腹いっぱい。
ある程度走ったら、停泊した。
あのラグジュアリーな部屋で一休み。
「運転お疲れ様です、爆豪船長。」
両腕広げてドカッとソファーに座る爆豪船長。
感謝の意を込めて肩を揉んだり、冷蔵庫にあったドリンクや持ってきたお菓子を準備した。
「免許取ってから今日が運転初めて?」
「先に練習台に出久と切島たち乗せたわ。アイツらが船乗った瞬間、命の保障はねえっつって。」
「そ、そこまで入念に準備してくれてたんだね。」
その船が陸から離れて、命の保障が無いと言われた瞬間、上鳴くんと瀬呂くんの阿鼻叫喚。静かに漢らしく受け入れた切島くんと、緑谷くんがなんとなく想像できてしまった。
この日の為に命懸けで付き合ってくれたみんな、本当にありがとう。心の中でそっと合掌した。
「そういえば、免許取るのどれくらいかかったの?」
「諸々含めて1ヶ月」
「ひぇっ」
思わず変な声が出た。ちょうど私が呑気に爆豪くんに2人きりで会えないのが寂しいとか思っていた時期じゃん。
「……爆豪くんの数少ないお休み、全てこの免許のために時間使ってたの?」
「おう」
爆豪くんは涼しい顔して言うけど、社会人が船の免許取るなんて、想像しただけでも気が滅入る。私なら諦めてる。
彼が私のたった一言の為に裏でこんなに頑張ってくれていたなんて……感謝しきれないな。
「神棚に爆豪くんの船の免許証飾って365日お祈りしたいくらい、感謝してる。ありがとう。」
「テメーの言い回しどーなってんだよ」
「それだけクソデカ感情を抱えてるってこと。ね、免許証見てもいい?」
爆豪くんが意味わかんねーって呆れながらも、財布から船の運転免許証を取り出してくれた。
両端を掴んで受け取った。
爆豪くんが身を削って取ってくれた船の免許証。
素材はプラスチックで軽いだろうに、重みがある。
「一級って、一番難しいやつ?」
「たりめーだろ。中途半端なもんやったって意味ねえ」
やるなら1番。そうだ、爆豪くんっていつだってそうなんだよね。……私も見習わなきゃ。
爆豪くんの努力の結晶である、船の免許証を見て深く頷いた。
「よしよし、本当に頑張ったね。ありがとう、爆豪くん」
「テメェ、気色悪ぃことすんな」
爆豪くん本人の頭を撫でるのには勇気が無かったから、代わりに船の免許証の顔写真爆豪くんを人差し指で優しく撫でたら怒られた。
一息ついたらデッキに出てみた。
頬や髪を撫でる生暖かい潮風の香り。
果てしなく広がる陽の光で煌めく海。
思わず、わぁっ。と子供みたいに反応してしまった。
そんな私を見てなのか、爆豪くんが一瞬、フッと優しく笑っていた気がする。次に見た時は鬼の子も泣く爆豪勝己の顔に戻ってしまった。
しばらくお互いに好きなようにデッキを歩き回って、遠くに見える街や橋、工場の景色、釣りをしている船とか眺めていたら、爆豪くんと肘が当たって距離が自然と縮まっていたことに気づいた。
「あ、ごめん。」
そう一言言って離れようとすると、顎を優しく持ち上げられる。そのまま、爆豪くんから軽く唇を重ねてくれた。
なんにも憚るものが無いオープンなこの状況のキスは、当然慣れなくて。全身が熱を帯びていく。
唇が離れると爆豪くんと視線が交わる。
また無言で爆豪くんが唇を重ねる。
外だというのに随分と積極的。
唇が離れたタイミングで聞いてみた。
「……今日は、外なのに積極的だね。」
「ここなら週刊誌の野郎どもの目もねえからな」
「ふふっ、確かに」
この煌めく海の上でならドローンでも使わない限り、週刊誌の記者達の目は確かに届かなさそう。
そんな爆豪くんとの甘いひとときもあっという間に終わってしまった。
早起きで疲れているだろうに、爆豪くんは車で私を家まで送ってくれるみたいで、もう至れり尽くせり。
「今日は朝早くからありがとね。……いや、今日だけじゃないか。免許取ったり今日までの準備も本当にありがとう。」
見慣れた街並みが見えてきたところで、改めてお礼を言う。
午後は少しでもゆっくり休んで。
そう言おうとしたら、不機嫌な様子で爆豪くんが喋った。
「おい、こんなんで満足してんじゃねーぞ。」
「いやもう大満足じゃ済まない程、大満足だよ?」
あんな優雅で甘々な時を過ごせて、致死量の幸せを浴びたというのに。
家の近くに来て降りる準備をするのに、シートベルトを外そうとすると、爆豪くんの暖かくて大きな手に捕らえられてしまった。
「……帰す気ねーから。テメェが出勤するまでな」
「えぇ!?」
私の手に指をしっかり絡ませながら、不敵に笑う爆豪くん。
なす術なく、車は私の家を通過点に彼の家へ。
部屋に入るまで、手は強く握られたままだった。
いったい、爆豪くんはどれだけ私を幸せ漬けにすれば、私の心を溶かせば気が済むんだろう。
……いや、やっぱり気が済まないで欲しい。
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