ヒロアカ短編集

◇どこまでも天然水な轟くん◇

「轟君、おはよ」
「はよ」

寮生活になってからも早朝に走る私の生活ルーティンは変わることはなかった。変わったのはただ、轟君と走る時間が被ること。軽い挨拶を交わした後、準備運動をしていきなりペースを上げずに徐々に上げていく。
朝の澄んだ空気が、心地よい。
轟君も寡黙だからか無駄に絡んだりしてこないし彼と走るようになったからと言ってなんら影響はない。
ただ気がかりが一つ。

「……轟君、私のペースに合わせなくていいのに。本当はもっと早く走れるでしょ」

どんな返事がくるか分かってても毎日聞いてるこの質問。

「このくらいのペースがちょうどいい」

ほら、やっぱり。そろそろこのやりとりが不毛に思えてきた。彼が隣に居るから走りにくいとかないんだけど、私が彼のペースを狂わせてしまって悪い気がするから。深くは聞かないけどなんで私に合わせるんだろう。

「ふーっ。」

いつもそんなこと考えているとあっという間にノルマの7割は走り終えて一休み。

「飲むか」
「あー、ありがとう。あとでお金返すね轟君。」

自販機で売ってるペットボトルのミネラルウォーターを渡される。乾いた喉を潤すのにガブ飲み。

「あ、悪い」

すると彼の口から衝撃の一言。

「飲みかけだった」

その瞬間、口から水飛沫を上げた。虹が映るとかそんな綺麗なもんではないけど。
とりあえず、心臓のペースを狂わされた私はもう、彼に申し訳なく思う必要はないみたいだ。
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