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伊角夢短編集

◇深夜電話(special thanks:ちはやさん!)◇

発信コール音から切り替わって聞こえてきたのは、あくび声。

「こんな時間になっても電気ついてるから、レポート用紙がすごいことになってるんじゃないか?」
「失敬な。レポート書くのにちゃんと起きてたけど、休憩がてら15分仮眠のはずがおかげで1時間寝てたわ」
「結局寝てるじゃないか。良かったな、起きれて」
「どうも。」

出だしの会話が終わっても特にどっちから電話を切るわけでもなく、沈黙が流れる。高校生の時から、お互い携帯電話を持つようになって深夜に電話をすることは今までもあった。
大体、俺からかけることが多い。今日みたいに夜中部屋に電気がついていると大抵テスト勉強か、ただの夜更かしかのどちらかだと分かりつつも、もし寝てるのなら起こさなくてはと謎の使命感に駆られる。

「レポートは無事か?」
「案の定、ご臨終。」

レポート用紙はおそらくミミズみたいな線が飛び交っているのが想像つく。
いつもならここで早く終わらせて寝ろよ。の一言で切るが、今日は気になることがあった。

「……そう言えば、駅前で男と歩いてただろ」

途端に通話先が静かになる。
ワンクッション、ご臨終レポートの流れからなら唐突感は薄れると思ったものの見事に撃沈。

「その…。俺が突っ込むべきじゃないのは分かってた。」

彼氏という立場でもないのに、それでも気になるのは。

「もしかして、それ見たの今日の夕方?」
「あぁ」

そして俺が見た男の特徴を次々と言われて、相手に見えてるわけじゃ無いのに頷きながらそうだと答えると笑い飛ばされた。

「それ、2つ下の従兄弟!」

聞けばこの春大学に通うのに上京してきて、この辺のアパートで1人暮らしを始めたから、ただ街案内をしていただけとのこと。
君は、いつまでそうやって私のオカンやってくれるの?冗談混じりに言われて

「さぁ、いつまでだろうな」

出かけた言葉を飲み込み代わりにそう発した頃には、枕元の目覚まし時計がちょうど夜中の3時を回っていた。

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