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伊角夢短編集

◇伊角さんを敵に回すときっと怖い◇

「なぁ、端っこに座ってるあの子可愛くね」
「1人っぽさそうじゃん、声かけてみようぜ。」

研修手合いが終わった後の帰り道
1個下の1組の女子に数学を教えて欲しいと言われ、
コンビニのイートインコーナーに寄り道することになった。

2人分の飲み物を頼んで待っていると
そんな会話が聞こえて
そういえば端っこに座らせたよな。と思い出す。

「お前から声かけてこいよ」
「いや言い出しっぺのお前から」
「……」

なんだ、声かけようとしてる割には
全然じゃないか。

そう思いながら、
何も聞いてないフリをして
飲み物を乗せたトレーを持ちながら
2人組の男の横を通り過ぎる。

「…あー、わっかんないな。」

当の本人はと言うと、分からないなりにも真剣に問題に向き合っていて
集中していたようで、俺がトレーを置いたことにも、来たことにも気づかない様子。

2人組の方にも目を向けると
なんだかそわそわしてるから

見せつけるように

後ろから肩を叩いて振り向き様に
人差し指で頬を狙った。

「っ!?」
「プッ、ははっ!」

驚いた表情を見て
思わず吹き出してしまった。

「え、唐突に!?伊角君そんなことする人だったけ!?」
「ちょっとふざけてみた。
面白い顔見せてくれてありがとな。」
「…うん。(面白い顔…!?それはもう私の顔面の作りからして面白い顔ってこと…?そのうち存在が一発ギャグとか言われるんじゃ…)」

本人がそんなに悩んでたとは知らず
俺は俺で、
さっきの2人組に優しく笑いかけた。

気安く近づくなよ。

と、警告するように。
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