伊角夢短編集
◇好きなものには貪欲で◇
プロ棋士になってから
院生のみんなで飲みに来た。
「…おい、平気か?」
「へーきへーき」
ある程度酒を飲んで気分がいいのか
いつもよりも砕けた感じでそう答えるのは
俺と同い年で院生仲間で九星会にも通っていた女子。
今は普通に大学生で成人済み。
「全然平気じゃないだろ。」
久しぶりにみんなで会えたのが嬉しかったのか結構いい飲みっぷりだった。
「伊角くん、へーき、だから…。」
結局、自分で酔い潰れて机に突っ伏す。
そこに和谷が
「いくらなんでも久しぶりだからってお前、ハイになり過ぎ────」
介抱しようとアイツに伸ばす手を遮って
「コイツに触れないでくれるか」
2人の間に割って入った。
和谷達がプロ試験合格した一番キツイ時に
自分だって落ちたというのに
自分のことよりも
俺が次に繋がるように
九星会の先輩達が中国棋院に行く話に
アイツは俺の名前を出してくれた。
それだけじゃない、
院生のタイムリミットが近づく焦り、
進路への焦り。
同じ悩みを抱えて切磋琢磨してきた戦友
だと、ついさっきまでは思ってた。
「…あ、ごめん。」
「悪い、和谷。俺が連れて帰るよ。」
とりあえず2人分の料金を置いていって
荷物を持って背中に背負い店を出る。
今の俺には周りがどう思ってるかなんて考える余裕もない。
中国棋院に行く時もそうだった。
周りに何の報告もせずに勝手に行動して、囲碁に対して貪欲で
ましてや、
今背負ってるヤツにも
誰にも触れられたくないだなんて
俺は
結構ワガママな人間だったみたいだ。
プロ棋士になってから
院生のみんなで飲みに来た。
「…おい、平気か?」
「へーきへーき」
ある程度酒を飲んで気分がいいのか
いつもよりも砕けた感じでそう答えるのは
俺と同い年で院生仲間で九星会にも通っていた女子。
今は普通に大学生で成人済み。
「全然平気じゃないだろ。」
久しぶりにみんなで会えたのが嬉しかったのか結構いい飲みっぷりだった。
「伊角くん、へーき、だから…。」
結局、自分で酔い潰れて机に突っ伏す。
そこに和谷が
「いくらなんでも久しぶりだからってお前、ハイになり過ぎ────」
介抱しようとアイツに伸ばす手を遮って
「コイツに触れないでくれるか」
2人の間に割って入った。
和谷達がプロ試験合格した一番キツイ時に
自分だって落ちたというのに
自分のことよりも
俺が次に繋がるように
九星会の先輩達が中国棋院に行く話に
アイツは俺の名前を出してくれた。
それだけじゃない、
院生のタイムリミットが近づく焦り、
進路への焦り。
同じ悩みを抱えて切磋琢磨してきた戦友
だと、ついさっきまでは思ってた。
「…あ、ごめん。」
「悪い、和谷。俺が連れて帰るよ。」
とりあえず2人分の料金を置いていって
荷物を持って背中に背負い店を出る。
今の俺には周りがどう思ってるかなんて考える余裕もない。
中国棋院に行く時もそうだった。
周りに何の報告もせずに勝手に行動して、囲碁に対して貪欲で
ましてや、
今背負ってるヤツにも
誰にも触れられたくないだなんて
俺は
結構ワガママな人間だったみたいだ。
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