和谷夢短編集
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◇遠回り◇
いつもと違う道で通学や通勤するだけでも、運命とやらが変わるらしい。
街にある占い屋に通うほど、マニアである姉からの入れ知恵で、半信半疑でありつつも試してみた。いつもと違う、遠回りの帰り道で。
「あれ、お前の家こっちの方だったっけ?」
すると後ろから声をかけられたので、振り向くとクラスメイトの和谷くんが私服姿で居た。視線を彷徨わせながら、私は答える。
「たまにいつもと違う道を歩くと、良いことがあるって聞いたから、そうしてみた。」
ただの気分で、とか、なんか上手く言い回しは思いつかなかったんだろうか。でもわざわざ誤魔化す理由も無いから、結果これで良かったんだと思うことにした。和谷くんは、へぇー。と相槌を打った後に続けて言った。
「んで、なんか良いことあった?」
彼の柔な笑みと、優しい声音が私の心を弾ませる。
「……特に無かった。」
「ハハッ、そう簡単に良いことなんか起こらねーよなぁ。んじゃ、俺こっちだから。」
「うん。」
また明日。と、お互いに言葉を交わして別れた。
学校外で和谷くんに会えたこと。
それに留まらず、和谷くんの私服まで見れてしまったこと。それから、普段から親しく話す仲では無いのに、和谷くんが私を見て声をかけてくれたこと。また明日って言葉を交わせたこと。
それが私にとっての「良いこと」だったんだよ。と、素直に伝えたら、和谷君は一体どんな反応を示して、どんな感情を表情に乗せるのだろう。
想像するだけでも怖い。
遠くなる和谷くんの背中を見えなくなるまで、複雑な気持ちで私は見つめていた。
いつもと違う道で通学や通勤するだけでも、運命とやらが変わるらしい。
街にある占い屋に通うほど、マニアである姉からの入れ知恵で、半信半疑でありつつも試してみた。いつもと違う、遠回りの帰り道で。
「あれ、お前の家こっちの方だったっけ?」
すると後ろから声をかけられたので、振り向くとクラスメイトの和谷くんが私服姿で居た。視線を彷徨わせながら、私は答える。
「たまにいつもと違う道を歩くと、良いことがあるって聞いたから、そうしてみた。」
ただの気分で、とか、なんか上手く言い回しは思いつかなかったんだろうか。でもわざわざ誤魔化す理由も無いから、結果これで良かったんだと思うことにした。和谷くんは、へぇー。と相槌を打った後に続けて言った。
「んで、なんか良いことあった?」
彼の柔な笑みと、優しい声音が私の心を弾ませる。
「……特に無かった。」
「ハハッ、そう簡単に良いことなんか起こらねーよなぁ。んじゃ、俺こっちだから。」
「うん。」
また明日。と、お互いに言葉を交わして別れた。
学校外で和谷くんに会えたこと。
それに留まらず、和谷くんの私服まで見れてしまったこと。それから、普段から親しく話す仲では無いのに、和谷くんが私を見て声をかけてくれたこと。また明日って言葉を交わせたこと。
それが私にとっての「良いこと」だったんだよ。と、素直に伝えたら、和谷君は一体どんな反応を示して、どんな感情を表情に乗せるのだろう。
想像するだけでも怖い。
遠くなる和谷くんの背中を見えなくなるまで、複雑な気持ちで私は見つめていた。