和谷夢短編集
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◇どんなイルミネーションよりも◇
改札を通ると、そこはもう暗闇だった。いや、暗闇は言い過ぎか。街灯はついてるし。
でも、つい数時間程前までは、きっとイルミネーションを見に来た人達で溢れていただろう。暗闇で映えるイルミネーションが、人々を暖かく照らしていたのだろう。私が駅に着いた頃には、まるでシンデレラの魔法が解けたみたいに、寂しいことにライトアップは終了していた。
静まり返った街で、私の吐く息が白く虚しく空気中に舞う。
少し歩いて、待ち合わせ場所の名所として知られている時計台に着いた。今日一緒にイルミネーションを見に行く約束をしていた、彼氏である和谷に着いたよとメールを送る。すると近くの喫茶店から、複数の紙袋を片手に持った彼が出てきて、私の方に小走りで来てくれた。
「お疲れ。仕事大変だったな。」
「本当にごめん。」
深々とお辞儀をして、和谷に謝るとしょうがねーって。と明るい声音で言いながら、私の頭頂部に優しく手を置いてくれた。
私は少し頭を上げてそのまま和谷の胸板に寄りかかる。
すると、和谷が何も言わず私の頭を優しく撫でててくれた。単純に和谷の手や身体の体温なのか、人の温もりとやらなのか分からないけど、とにかく温かく感じた。
今日は定時ぴったりに上がれるはずだったのに、私のお抱えのお客様が急遽、定時間際に店に駆け込んできて、やむを終えず残業をする羽目になったのだ。
「……帰ろうか。」
帰っていいとメールで言ったのに和谷が寒い中、私が来るまで待ってくれて、会えただけでも満足した私は、寄りかかっていた和谷から離れて、そう小さく呟いた。
「もう遅いし、俺の家泊まってけよ。明日お前仕事休みだし。」
「え、でも明日は和谷、早いんでしょ?もうゆっくり休んだ方がいいんじゃない?」
「明日のことは明日どうにかする。それに待ってただけでそんなに疲れてねーし。ほら、行こうぜ。」
待つのも結構疲れると思う。と言いそうになった声は、都合良く呑み込むことにした。
せめて料理だけでも、と思い、スーパーの半額シールが貼られてるけどお惣菜やサンドイッチとか食べたい物や飲み物を好きなだけ買って、調達。胃袋のキャパなんか知ったこっちゃ無い。
それから和谷の家に着いて、部屋に入ろうとすると、俺がいいって言うまで玄関で待ってて。と、部屋のドアを閉められ、その場に取り残されてしまった。
「もう入っていいぞ。」
「お邪魔します。」
ドアノブに手をかけ部屋を開けると、月灯りすら入らないほど真っ暗で。
でも、部屋全体を囲うように床に置かれた、色とりどりに光るいくつかの小さなクリスマスツリーが、部屋をささやかに照らし、私を迎えてくれた。
「やっぱ外のイルミネーションに比べると、全然雰囲気出ねーな。」
和谷のその言葉を聞いて、私は真横に居る和谷と距離を詰めて、彼の肩に頭を預けて言った。
「そんなことないよ。たとえ、これからどんな綺麗なイルミネーションを見たとしても、和谷と見たこのイルミネーションには勝てない。」
「……ありがとな。」
暗くて、和谷の表情はよく見えなかったけど、きっと照れ臭そうにしてるんだろうか。
寒い中、私を待ってるだけでも疲れただろうに、愚痴一つ言うことなく、むしろ自分にできることは精一杯やって。私を大事に思ってくれてるのを、このイルミネーションから感じ取れて、より和谷を愛おしく思ってしまった。
改札を通ると、そこはもう暗闇だった。いや、暗闇は言い過ぎか。街灯はついてるし。
でも、つい数時間程前までは、きっとイルミネーションを見に来た人達で溢れていただろう。暗闇で映えるイルミネーションが、人々を暖かく照らしていたのだろう。私が駅に着いた頃には、まるでシンデレラの魔法が解けたみたいに、寂しいことにライトアップは終了していた。
静まり返った街で、私の吐く息が白く虚しく空気中に舞う。
少し歩いて、待ち合わせ場所の名所として知られている時計台に着いた。今日一緒にイルミネーションを見に行く約束をしていた、彼氏である和谷に着いたよとメールを送る。すると近くの喫茶店から、複数の紙袋を片手に持った彼が出てきて、私の方に小走りで来てくれた。
「お疲れ。仕事大変だったな。」
「本当にごめん。」
深々とお辞儀をして、和谷に謝るとしょうがねーって。と明るい声音で言いながら、私の頭頂部に優しく手を置いてくれた。
私は少し頭を上げてそのまま和谷の胸板に寄りかかる。
すると、和谷が何も言わず私の頭を優しく撫でててくれた。単純に和谷の手や身体の体温なのか、人の温もりとやらなのか分からないけど、とにかく温かく感じた。
今日は定時ぴったりに上がれるはずだったのに、私のお抱えのお客様が急遽、定時間際に店に駆け込んできて、やむを終えず残業をする羽目になったのだ。
「……帰ろうか。」
帰っていいとメールで言ったのに和谷が寒い中、私が来るまで待ってくれて、会えただけでも満足した私は、寄りかかっていた和谷から離れて、そう小さく呟いた。
「もう遅いし、俺の家泊まってけよ。明日お前仕事休みだし。」
「え、でも明日は和谷、早いんでしょ?もうゆっくり休んだ方がいいんじゃない?」
「明日のことは明日どうにかする。それに待ってただけでそんなに疲れてねーし。ほら、行こうぜ。」
待つのも結構疲れると思う。と言いそうになった声は、都合良く呑み込むことにした。
せめて料理だけでも、と思い、スーパーの半額シールが貼られてるけどお惣菜やサンドイッチとか食べたい物や飲み物を好きなだけ買って、調達。胃袋のキャパなんか知ったこっちゃ無い。
それから和谷の家に着いて、部屋に入ろうとすると、俺がいいって言うまで玄関で待ってて。と、部屋のドアを閉められ、その場に取り残されてしまった。
「もう入っていいぞ。」
「お邪魔します。」
ドアノブに手をかけ部屋を開けると、月灯りすら入らないほど真っ暗で。
でも、部屋全体を囲うように床に置かれた、色とりどりに光るいくつかの小さなクリスマスツリーが、部屋をささやかに照らし、私を迎えてくれた。
「やっぱ外のイルミネーションに比べると、全然雰囲気出ねーな。」
和谷のその言葉を聞いて、私は真横に居る和谷と距離を詰めて、彼の肩に頭を預けて言った。
「そんなことないよ。たとえ、これからどんな綺麗なイルミネーションを見たとしても、和谷と見たこのイルミネーションには勝てない。」
「……ありがとな。」
暗くて、和谷の表情はよく見えなかったけど、きっと照れ臭そうにしてるんだろうか。
寒い中、私を待ってるだけでも疲れただろうに、愚痴一つ言うことなく、むしろ自分にできることは精一杯やって。私を大事に思ってくれてるのを、このイルミネーションから感じ取れて、より和谷を愛おしく思ってしまった。