和谷夢短編集
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◇失敗は始まり(2021年バレンタインデー)◇
母さんに頼まれて、近所のスーパーに買い出しに行ったら見知った後ろ姿を見かけて、その背中に声をかけた。
すると肩を一瞬、上下させ彼女が振り返る。
「げっ。」
と、渋い反応をしながら。
「なんだよ、その反応。」
「いや、別に。」
そう言いながら、幼馴染は俺と目を合わせようとしなかった。怪しげな雰囲気を醸し出してる。
ふと、幼馴染の顔から視線を逸らすと手に持ってる物に気づく。それは、既製品のハート型のチョコレートが入った箱だった。そこでやっと、幼馴染と俺が今いるのはバレンタインデーの特設コーナーなんだと認識した。
俺はデリカシーの欠片も無しに、幼馴染が手に持ってるのを指差し、それ。と一言言うと、彼女の手からその箱がすり抜けて床に落ちる。同時にパキッと短い音がした。幼馴染をかなり動揺させてしまったらしい。
「あ、悪い…。」
縁起悪く、真っ二つに割れたチョコの箱を拾おうとしたら向こうが先に拾って、俺に言った。
「ちょっと、そこから動かないで。」
幼馴染はチョコを持ってレジへ行った。
俺は、はい。としか言えなかった。間接的に俺があのチョコを割ったも同然だし。
「──はい、責任持って食べてね。」
そしてあの割れたチョコは、チェック柄の包装紙で包まれて戻ってきた。
相手の不本意でもらっていいのかを迷いつつ、返答に困っていると幼馴染が顔を伏せがちに呟いた。
「来年は……もっとちゃんとしたの、あげるから。」
表情は見えてないけど、緊張が伝わるのには十分。
スーパーの籠を持つ手の力を強めて、俺も相槌を打ち、そのチョコを受け取った。
母さんに頼まれて、近所のスーパーに買い出しに行ったら見知った後ろ姿を見かけて、その背中に声をかけた。
すると肩を一瞬、上下させ彼女が振り返る。
「げっ。」
と、渋い反応をしながら。
「なんだよ、その反応。」
「いや、別に。」
そう言いながら、幼馴染は俺と目を合わせようとしなかった。怪しげな雰囲気を醸し出してる。
ふと、幼馴染の顔から視線を逸らすと手に持ってる物に気づく。それは、既製品のハート型のチョコレートが入った箱だった。そこでやっと、幼馴染と俺が今いるのはバレンタインデーの特設コーナーなんだと認識した。
俺はデリカシーの欠片も無しに、幼馴染が手に持ってるのを指差し、それ。と一言言うと、彼女の手からその箱がすり抜けて床に落ちる。同時にパキッと短い音がした。幼馴染をかなり動揺させてしまったらしい。
「あ、悪い…。」
縁起悪く、真っ二つに割れたチョコの箱を拾おうとしたら向こうが先に拾って、俺に言った。
「ちょっと、そこから動かないで。」
幼馴染はチョコを持ってレジへ行った。
俺は、はい。としか言えなかった。間接的に俺があのチョコを割ったも同然だし。
「──はい、責任持って食べてね。」
そしてあの割れたチョコは、チェック柄の包装紙で包まれて戻ってきた。
相手の不本意でもらっていいのかを迷いつつ、返答に困っていると幼馴染が顔を伏せがちに呟いた。
「来年は……もっとちゃんとしたの、あげるから。」
表情は見えてないけど、緊張が伝わるのには十分。
スーパーの籠を持つ手の力を強めて、俺も相槌を打ち、そのチョコを受け取った。