このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

和谷夢短編集

夢小説設定

この小説の夢小説設定
苗字を決めてください
名前を入れてください

◇悪夢の8月31日◇

真っさらな漢字、計算ドリル、読書感想文。
義務教育が始まってから8月31日にこの光景をみるのは、もはや恒例。

「…2学期の時間割表は?」
「これ」

助っ人で隣に住む1学年上の幼馴染を呼んで、手伝ってもらうのも恒例行事。中3にもなればもう呆れ顔すらされなくなった。
手渡した2学期の時間割表は、この夏休みの宿題提出日の期限を守れるカギとなる。
8月31日ともなれば無鉄砲に片っ端から宿題を片付けるよりも、始業式の日の後の1番最初の授業が提出日のものもあるからそれは後回しで、始業式に提出するやつだけとりあえず終わらせる。が、教わった最終手段。

けれども、1人じゃ終わらせられる気がしなくて結局のところ小学校高学年になった頃から、毎年コンビニアイス2つでなんとか手を打ってもらってるのが現状。

「毎年こうして痛い目見るのに懲りないよね、和谷は」
「お前も毎年おんなじことになるって分かってるのに先手を打たないの懲りないよな」
「やかましいわっ!」

変わらないこの光景、やりとり。
8月31日だけ、まるでループしているみたいだ。

「──でもさ。これも今年で最後と思えば例年よりも頑張っちゃおうかな。今日1日で全部宿題終わらせよう。」
「最後?」

時間は止まらないのに、手を止めて聞いた。
するとさも当たり前かのように言う。

「今年、プロ試験合格しちゃえばこの悪夢の8月31日ループから抜け出せるでしょ。」

掲げていたリミットはちょうど今年。確かに若獅子戦で例年よりも手応えを感じてはいる。けれどもいざそのリミット時期に差し掛かっているのを実感すると、意識してなくても漏れなく不安もついてきて、つい自信のない返答をした。

「そりゃ、そうだけど…」
「いいよー。もし、ダメだったらまた8月31日空けとくから安心しな」
「安心できるかっ!」

やけにリアルに想像できてしまい、発破かけられたかのようだった。

そのおかげで、来年は来なかった。

「今日、空いてる?」
「プロ棋士になっても一般教養の宿題あるの?」
「宿題以外で呼んじゃ、わりーかよ。」

宿題漬けの8月31日は。
29/47ページ
スキ