和谷夢短編集
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◇日曜日の2人◇
日曜日、家の近くの個人経営の喫茶店で窓際2人掛けの席に1人。コーヒーに淀んで写る自分の顔を眺めていた。
「また浮かねえ顔して」
声をかけてきたのは幼馴染の義高だ。彼が一人暮らしをした後もたまにこの喫茶店で会う。時には、今みたいに私が彼氏との待ち合わせで待ってる時にも。
「……彼氏と待ち合わせ」
「げっ」
「してた」
どういう状況かも知らずに私の目の前の席に腰掛けようとする彼に、こうして脅すのも恒例。
「してたってことは、またか?」
「そう、またデートドタキャン。もうこれで何回目よ。」
断られる理由はいつも男友達との約束。私は今付き合ってる彼氏の男の友情とやらに勝てないらしい。
「10回目」
「数えんな」
「ちげーよ。お前が今のヤツと付き合いだして、この喫茶店で浮かない顔してる回数」
今の彼氏と付き合って1年。断られた回数はそのぐらい行ってそうだからつい反応してしまう。別に断られるたびに逐一義高に報告してたわけじゃないのに、ムキになる必要なかった。でも、実家を出てる彼から見てもそんなに浮かない顔を見せてるとは思わなかった。
「ホント、私も懲りないよね。」
断られる確率が多いのに、服も髪型もメイクも気合いいれてる。
向こうにドタキャンされた腹いせにこっちも男と2人きりで遊んでやるとかそういうことをしようとは思わなかった。そんなことしたら、負けだと思ってる。
彼氏は狡い。女と2人きりで遊んでるわけじゃないから。
潔く遊んでくれればこっちも諦めがつくのに、彼の笑顔1つで許せてしまう私は甘い。
だから腹いせに行動してしまったら100%こちらに非がある。ドタキャン常習犯を理由に自分の非を作る必要はない。
そして個人店なだけに結構な値段するコーヒー一杯を飲み干す。
「それじゃ、またね」
いくら幼馴染でも、1人の男性。安心仕切って話し込んじゃいけない。節度を持って接しなければ。
「──俺さ、行きたいとこあんだけど。」
義高もそれは理解しているはず。だからいつもなら声をかけないのに今日は違った。
「もし見つかってなんか言われたら、俺からしつこく誘われたって言えよ。
それで怒られるんだったら、お前が大事にしねーからだって一喝してやれ。」
不敵に笑う彼に背中を押され視界が滲み出す。そして一雫、頬をなぞった。
「なんなら俺が直接言ってやっても……わっ、大丈夫、じゃないよな。俺ハンカチとかティッシュとか気の効いたもん持ってねえや。」
焦って、ズボンやシャツの胸ポケット、バックに手を突っ込んで漁る姿を見てたらそれも引っ込んでしまった。
「大丈夫、今ので笑って元気でた。」
「気の効かない奴で悪かったな。」
口を尖らせて言う義高。けれどもすぐに小さな笑いを漏らして、まぁ元気になったんならいいや。と言ってくれた。
いつぶりだろう、2人きりで出かけるのは。仲が悪かったわけじゃないけどなんだか昔に戻ったみたいで。
お会計を済ませて、お店を出る。青空にたなびく雲の下、2人肩を並べて歩きながら口元が綻んだ。
日曜日、家の近くの個人経営の喫茶店で窓際2人掛けの席に1人。コーヒーに淀んで写る自分の顔を眺めていた。
「また浮かねえ顔して」
声をかけてきたのは幼馴染の義高だ。彼が一人暮らしをした後もたまにこの喫茶店で会う。時には、今みたいに私が彼氏との待ち合わせで待ってる時にも。
「……彼氏と待ち合わせ」
「げっ」
「してた」
どういう状況かも知らずに私の目の前の席に腰掛けようとする彼に、こうして脅すのも恒例。
「してたってことは、またか?」
「そう、またデートドタキャン。もうこれで何回目よ。」
断られる理由はいつも男友達との約束。私は今付き合ってる彼氏の男の友情とやらに勝てないらしい。
「10回目」
「数えんな」
「ちげーよ。お前が今のヤツと付き合いだして、この喫茶店で浮かない顔してる回数」
今の彼氏と付き合って1年。断られた回数はそのぐらい行ってそうだからつい反応してしまう。別に断られるたびに逐一義高に報告してたわけじゃないのに、ムキになる必要なかった。でも、実家を出てる彼から見てもそんなに浮かない顔を見せてるとは思わなかった。
「ホント、私も懲りないよね。」
断られる確率が多いのに、服も髪型もメイクも気合いいれてる。
向こうにドタキャンされた腹いせにこっちも男と2人きりで遊んでやるとかそういうことをしようとは思わなかった。そんなことしたら、負けだと思ってる。
彼氏は狡い。女と2人きりで遊んでるわけじゃないから。
潔く遊んでくれればこっちも諦めがつくのに、彼の笑顔1つで許せてしまう私は甘い。
だから腹いせに行動してしまったら100%こちらに非がある。ドタキャン常習犯を理由に自分の非を作る必要はない。
そして個人店なだけに結構な値段するコーヒー一杯を飲み干す。
「それじゃ、またね」
いくら幼馴染でも、1人の男性。安心仕切って話し込んじゃいけない。節度を持って接しなければ。
「──俺さ、行きたいとこあんだけど。」
義高もそれは理解しているはず。だからいつもなら声をかけないのに今日は違った。
「もし見つかってなんか言われたら、俺からしつこく誘われたって言えよ。
それで怒られるんだったら、お前が大事にしねーからだって一喝してやれ。」
不敵に笑う彼に背中を押され視界が滲み出す。そして一雫、頬をなぞった。
「なんなら俺が直接言ってやっても……わっ、大丈夫、じゃないよな。俺ハンカチとかティッシュとか気の効いたもん持ってねえや。」
焦って、ズボンやシャツの胸ポケット、バックに手を突っ込んで漁る姿を見てたらそれも引っ込んでしまった。
「大丈夫、今ので笑って元気でた。」
「気の効かない奴で悪かったな。」
口を尖らせて言う義高。けれどもすぐに小さな笑いを漏らして、まぁ元気になったんならいいや。と言ってくれた。
いつぶりだろう、2人きりで出かけるのは。仲が悪かったわけじゃないけどなんだか昔に戻ったみたいで。
お会計を済ませて、お店を出る。青空にたなびく雲の下、2人肩を並べて歩きながら口元が綻んだ。