和谷夢短編集
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◇変わらない昇段祝い◇
都会の高級繁華街の象徴ともいえる、老舗洋菓子店の広告塔は夜の街に輝きを放っていた。その広告塔があるビルの目の前の横断歩道待ちで、毎回思うことがある。
「思ったんだけど、本当にケーキでいいの?昇段祝い。」
「あぁ。なんで?」
「やっぱ気を使われてるなーと思って」
家が近所の義高君の昇段祝いを祝うようになったのは、彼が15歳で私は16歳の時。物心ついた時から一緒に遊んでいて、上下関係の隔たりは存在しなかった。
けど、10年間昇段祝いをしてきてそこのケーキ以外は頼まれたことがない。
この10年で関係もご近所さんじゃなくて、同棲をする仲に変わった。
他のでもいいんだよ?と聞いても広告塔の店のケーキでいいの即答。
「そんなことねーよ。……ほら、行くぞ」
いつも、1つ言えば二言三言返ってくるのにやけに口数が少ないように感じる。
そんな彼にどこか違和感を覚えつつも信号が青に変わり手を引っ張られる。
お店に入って義高君が頼むのはショートケーキ2つ。
それも10年間変わっていない。そんなに好きならホールで買うし、家でのんびり食べたらいいのにと言ったこともある。けれども、彼にとってこの広告塔の店で食べることに意味があるんだと。
「こうするのも今年でちょうど10年ね。10年もあれば色んなことが変わるのに、この昇段祝いだけは全く変わらないの貴重に思えてきた。やっと」
ケーキでお腹を満たした後、窓の外を眺めながら言った。すると、本日やけに口数少ない義高君が咳払いをして口を開いた。
「そういえばここ、俺の師匠がプロポーズした場所でさ。多分、こんな風に───」
窓ガラスに彼が木製の小さな箱を置いたのが見えて、テーブルに視線を戻した。緊張しているのか、ご丁寧に義高君は自身の手の汗を紙おしぼりで拭ってから箱を開けてくれた。
そして、中に入っている指輪が示す想いに迷いなく笑顔で応える。
「はい、誓います」
祝福の鐘を鳴らすその日まで待ちきれなかった一言で。
都会の高級繁華街の象徴ともいえる、老舗洋菓子店の広告塔は夜の街に輝きを放っていた。その広告塔があるビルの目の前の横断歩道待ちで、毎回思うことがある。
「思ったんだけど、本当にケーキでいいの?昇段祝い。」
「あぁ。なんで?」
「やっぱ気を使われてるなーと思って」
家が近所の義高君の昇段祝いを祝うようになったのは、彼が15歳で私は16歳の時。物心ついた時から一緒に遊んでいて、上下関係の隔たりは存在しなかった。
けど、10年間昇段祝いをしてきてそこのケーキ以外は頼まれたことがない。
この10年で関係もご近所さんじゃなくて、同棲をする仲に変わった。
他のでもいいんだよ?と聞いても広告塔の店のケーキでいいの即答。
「そんなことねーよ。……ほら、行くぞ」
いつも、1つ言えば二言三言返ってくるのにやけに口数が少ないように感じる。
そんな彼にどこか違和感を覚えつつも信号が青に変わり手を引っ張られる。
お店に入って義高君が頼むのはショートケーキ2つ。
それも10年間変わっていない。そんなに好きならホールで買うし、家でのんびり食べたらいいのにと言ったこともある。けれども、彼にとってこの広告塔の店で食べることに意味があるんだと。
「こうするのも今年でちょうど10年ね。10年もあれば色んなことが変わるのに、この昇段祝いだけは全く変わらないの貴重に思えてきた。やっと」
ケーキでお腹を満たした後、窓の外を眺めながら言った。すると、本日やけに口数少ない義高君が咳払いをして口を開いた。
「そういえばここ、俺の師匠がプロポーズした場所でさ。多分、こんな風に───」
窓ガラスに彼が木製の小さな箱を置いたのが見えて、テーブルに視線を戻した。緊張しているのか、ご丁寧に義高君は自身の手の汗を紙おしぼりで拭ってから箱を開けてくれた。
そして、中に入っている指輪が示す想いに迷いなく笑顔で応える。
「はい、誓います」
祝福の鐘を鳴らすその日まで待ちきれなかった一言で。