和谷夢短編集
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◇和谷とただ制服デートするだけ◇
水曜日、15:30。
「……本当に来てた。」
「約束すっぽかすようなヤツに見えるか、俺?」
制服で和谷と待ち合わせしなくちゃいけなくなった事の発端は遡ること3日前の日曜日。
息抜きに院生1組の男女で合コンみたいに数合わせてカラオケに行った。
その時に、小宮が急にロシアンたこ焼きを頼んで男女グループに別れて、当たった2人は罰ゲームとか言い出すからこんなことになった。
まぁ、せっかく大人数ならカラオケだけじゃなんかもの足りないよね。と、お気楽に考えてた。私自信が当たるまでは。
それでだ、当たってからは手のひら返したようにそもそも、ロシアンたこ焼きの時点で罰ゲームだというのにさらに罰ゲームってどんな合わせ技だよ、新手のイジメか?と思った。
お相手は和谷で同い年カップルだとか、囃し立てられた挙句、決まったのが制服デートで、冒頭に戻る。
お互い水曜日が4時間目で早く終わるからその日にということで待ち合わせ。
「和谷のとこ学ランなんだ。」
「そういうお前こそセーラー服じゃん」
なんて、当たり障りの無い会話をしながら2人して並んでテキトーに歩く。
「……俺さ、お前と一回遊んでみたかったんだよな」
「えー、意外。」
「ほら、結構ゲームやってんだろ」
「そうだね。」
上に兄が3人も居る環境のせいか格闘ゲームとかアクションゲームやり込んでて確かに和谷とは碁以外でもよく話が合う。
「ゲーセンでお前とやってみたいゲームがあるんだよ。ちょっと付き合ってくんねぇかな」
「よし、望むところだ」
そのゲームは銃を持って、ゾンビをひたすら倒してラスボス倒して脱出するゲーム。
つい、腕をまくって本腰入れた。
金銭的にラストまでは出来なかったけど、今度は絶対クリアしようって2人で誓った。
ゲーセンから出ようとすると、今流行りのプリクラを撮ろうと順番待ちしてる私と同じくらいの年の女子中学生達に目が入って、立ち止まる。
もしも、今碁をしてなければ放課後あんな感じで友達と帰りに遊んでたのかな。と、1人浸っている私を見るに見兼ねて和谷が腕を引っ張って最後尾に並ぼうとしてハッとした。
「い、いいよ!無理してそこまで付き合わなくても!さすがに恥ずかしいでしょ!」
「いや、付き合うよ。滅多にこんな時間取れねーし、今日はお互いしたいことしようぜ。」
「和谷……。ありがとう。」
本当にいいヤツ。和谷がロシアンたこ焼き当たってくれてよかったと思った瞬間だった。
案の定、お互いプリクラなんて始めてで、ふざけてカップルモードなんか選ぶからハグとかほっぺにチューとかお手本ポーズで出てきて、とてもじゃないけどそんなこと出来るわけがなく、ピースや変顔でなんとか誤魔化す。
落書きの時間なんかどうすればいいのか分からなくて、とりあえずお互いの頭にツノはやしたり、眉毛を繋げたり幼稚なことをして遊んでいた。
そして、プリクラ機から出るとあのなんとも言えないテンションから解放されて、普段囲碁をしてる私達にとってはプリクラなんてものは若過ぎたんだと思い知った。
気を取り直して、和谷にはワガママを言わせてもらった。と言ってもクレープ食べたいってだけだったんだけど。
甘々だからどうかな。と気を使って遠慮しようと思った。でも意外と平気だったみたい。
最後に行くところは決まっていた。
「シメはやっぱり」
「ここだよな。」
考えが一致して、普段行かないところほど碁会所探してしまうのはもう、碁打ちとしての性みたいなもん。
カラン。と鈴の上品な音を響かせながら和谷がドアを開けた。
「あら、学生カップルが来るなんて珍しい」
受付のお姉さんに言われて
え、はたから見てそう見えてたの?
今の今まで何も考えずに和谷と歩いてたばかりに今更緊張。
席料1人五百円と言われ、それぞれお金を出し席に着く。
ニギリで黒番、白番決めてよし、打つぞって時に
「悪い、ちょっとトイレ」
「はいはい」
そう言われて、力を抜いて1人で待ってると
「へぇー姉ちゃん、碁打てるのかァ。
おじさんと一局打ってみない?
そうだな、可愛いから買ったらお小遣いあげちゃうし、負けたら───────」
夕方なのに酒が入ってデキあがっちゃってるおじさんに声をかけられてしまった。
最初わざと打てないフリして酔い覚ましに本気で打って捻ってやろうかと思ったら
「おじさん、それなら先に俺と打とうぜ。コイツ俺よりも強いから、小手調べにさ。」
ニコニコ笑顔で和谷が戻ってきて私とおじさんの間に割って来た。
本当は私の方が和谷よりも順位低いのに……なんでだろう。
そう思いつつも対局を見ることにした。
そして
「───っ、ありません」
30分もしない内に頭を下げたのはおじさんで、見た限りだと私でも勝てそうな感じだった。
おじさんは和谷で懲りたのか私と続けて対局せずに出て行ってしまった。
「あ、もう19:00前じゃん。さすがにそろそろ帰んなきゃだよな。」
「うん、そうだね。」
結局、私は一局も打てず碁会所を出ようとしたら受付のお姉さんに
あなたは一局も打たなかったし、彼女を守る姿がカッコ良かったから。という理由で和谷の分まで席料タダでいいよって言われた。
「和谷、なんで私の方が強いなんて嘘ついたのよ」
「もしものことがあったら遅いだろ。お前ももう少し女だって自覚持てよな。絶対あのおじさん負かしてやろうとか思ってただろ。」
図星過ぎて何も言えない。
「……ありがとう、守ってくれて。」
「素直で良し。……なぁ、今更なんだけどさ」
「ん?」
和谷が立ち止まるから、少し前を歩いていた私は振り向いて彼を見る。
夕焼けのせいか分からないけど
赤く染まった鼻と頬。
口元を右手で覆い、恥ずかしいのか視線と顔を弱冠、斜め上に逸らし
「俺、今日……カッコつけ過ぎたかな。」
かなり照れた様子でそう言われてしまったら
「カッコ良かったよ」
「……マジ?」
「────和谷にしては。」
「なんだよそれ!」
と、ムードに乗らずにいじめたくなってしまうのが、いつもの私。
和谷が夕方の数時間だけかけてくれた『女の子扱い』という名の魔法が今、解けたみたいだ。
水曜日、15:30。
「……本当に来てた。」
「約束すっぽかすようなヤツに見えるか、俺?」
制服で和谷と待ち合わせしなくちゃいけなくなった事の発端は遡ること3日前の日曜日。
息抜きに院生1組の男女で合コンみたいに数合わせてカラオケに行った。
その時に、小宮が急にロシアンたこ焼きを頼んで男女グループに別れて、当たった2人は罰ゲームとか言い出すからこんなことになった。
まぁ、せっかく大人数ならカラオケだけじゃなんかもの足りないよね。と、お気楽に考えてた。私自信が当たるまでは。
それでだ、当たってからは手のひら返したようにそもそも、ロシアンたこ焼きの時点で罰ゲームだというのにさらに罰ゲームってどんな合わせ技だよ、新手のイジメか?と思った。
お相手は和谷で同い年カップルだとか、囃し立てられた挙句、決まったのが制服デートで、冒頭に戻る。
お互い水曜日が4時間目で早く終わるからその日にということで待ち合わせ。
「和谷のとこ学ランなんだ。」
「そういうお前こそセーラー服じゃん」
なんて、当たり障りの無い会話をしながら2人して並んでテキトーに歩く。
「……俺さ、お前と一回遊んでみたかったんだよな」
「えー、意外。」
「ほら、結構ゲームやってんだろ」
「そうだね。」
上に兄が3人も居る環境のせいか格闘ゲームとかアクションゲームやり込んでて確かに和谷とは碁以外でもよく話が合う。
「ゲーセンでお前とやってみたいゲームがあるんだよ。ちょっと付き合ってくんねぇかな」
「よし、望むところだ」
そのゲームは銃を持って、ゾンビをひたすら倒してラスボス倒して脱出するゲーム。
つい、腕をまくって本腰入れた。
金銭的にラストまでは出来なかったけど、今度は絶対クリアしようって2人で誓った。
ゲーセンから出ようとすると、今流行りのプリクラを撮ろうと順番待ちしてる私と同じくらいの年の女子中学生達に目が入って、立ち止まる。
もしも、今碁をしてなければ放課後あんな感じで友達と帰りに遊んでたのかな。と、1人浸っている私を見るに見兼ねて和谷が腕を引っ張って最後尾に並ぼうとしてハッとした。
「い、いいよ!無理してそこまで付き合わなくても!さすがに恥ずかしいでしょ!」
「いや、付き合うよ。滅多にこんな時間取れねーし、今日はお互いしたいことしようぜ。」
「和谷……。ありがとう。」
本当にいいヤツ。和谷がロシアンたこ焼き当たってくれてよかったと思った瞬間だった。
案の定、お互いプリクラなんて始めてで、ふざけてカップルモードなんか選ぶからハグとかほっぺにチューとかお手本ポーズで出てきて、とてもじゃないけどそんなこと出来るわけがなく、ピースや変顔でなんとか誤魔化す。
落書きの時間なんかどうすればいいのか分からなくて、とりあえずお互いの頭にツノはやしたり、眉毛を繋げたり幼稚なことをして遊んでいた。
そして、プリクラ機から出るとあのなんとも言えないテンションから解放されて、普段囲碁をしてる私達にとってはプリクラなんてものは若過ぎたんだと思い知った。
気を取り直して、和谷にはワガママを言わせてもらった。と言ってもクレープ食べたいってだけだったんだけど。
甘々だからどうかな。と気を使って遠慮しようと思った。でも意外と平気だったみたい。
最後に行くところは決まっていた。
「シメはやっぱり」
「ここだよな。」
考えが一致して、普段行かないところほど碁会所探してしまうのはもう、碁打ちとしての性みたいなもん。
カラン。と鈴の上品な音を響かせながら和谷がドアを開けた。
「あら、学生カップルが来るなんて珍しい」
受付のお姉さんに言われて
え、はたから見てそう見えてたの?
今の今まで何も考えずに和谷と歩いてたばかりに今更緊張。
席料1人五百円と言われ、それぞれお金を出し席に着く。
ニギリで黒番、白番決めてよし、打つぞって時に
「悪い、ちょっとトイレ」
「はいはい」
そう言われて、力を抜いて1人で待ってると
「へぇー姉ちゃん、碁打てるのかァ。
おじさんと一局打ってみない?
そうだな、可愛いから買ったらお小遣いあげちゃうし、負けたら───────」
夕方なのに酒が入ってデキあがっちゃってるおじさんに声をかけられてしまった。
最初わざと打てないフリして酔い覚ましに本気で打って捻ってやろうかと思ったら
「おじさん、それなら先に俺と打とうぜ。コイツ俺よりも強いから、小手調べにさ。」
ニコニコ笑顔で和谷が戻ってきて私とおじさんの間に割って来た。
本当は私の方が和谷よりも順位低いのに……なんでだろう。
そう思いつつも対局を見ることにした。
そして
「───っ、ありません」
30分もしない内に頭を下げたのはおじさんで、見た限りだと私でも勝てそうな感じだった。
おじさんは和谷で懲りたのか私と続けて対局せずに出て行ってしまった。
「あ、もう19:00前じゃん。さすがにそろそろ帰んなきゃだよな。」
「うん、そうだね。」
結局、私は一局も打てず碁会所を出ようとしたら受付のお姉さんに
あなたは一局も打たなかったし、彼女を守る姿がカッコ良かったから。という理由で和谷の分まで席料タダでいいよって言われた。
「和谷、なんで私の方が強いなんて嘘ついたのよ」
「もしものことがあったら遅いだろ。お前ももう少し女だって自覚持てよな。絶対あのおじさん負かしてやろうとか思ってただろ。」
図星過ぎて何も言えない。
「……ありがとう、守ってくれて。」
「素直で良し。……なぁ、今更なんだけどさ」
「ん?」
和谷が立ち止まるから、少し前を歩いていた私は振り向いて彼を見る。
夕焼けのせいか分からないけど
赤く染まった鼻と頬。
口元を右手で覆い、恥ずかしいのか視線と顔を弱冠、斜め上に逸らし
「俺、今日……カッコつけ過ぎたかな。」
かなり照れた様子でそう言われてしまったら
「カッコ良かったよ」
「……マジ?」
「────和谷にしては。」
「なんだよそれ!」
と、ムードに乗らずにいじめたくなってしまうのが、いつもの私。
和谷が夕方の数時間だけかけてくれた『女の子扱い』という名の魔法が今、解けたみたいだ。