和谷夢短編集
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◇意地悪な和谷◇
『伊角君、来週空いてますか。もしよければ映画のチケットが2枚あるんだけど』
「……なんかなぁー。」
打ってみて一度、黙読して消す。ある日の大手合いの昼休み。目の前の元院生仲間のそいつは3分経ってもそれをずっと繰り返していて結局デートのお誘いの文章は一文も作れていない。
「頑張ってんな。」
しかも俺に後ろから携帯画面を見られてるのにも気づいてないからいい加減声かけた。
「あっ、まさかあんたずっと後ろに?」
「イスミクン、ライシュウアイテ」
「これ以上言ったら、こうするわよ」
俺の額を片手で覆いこめかみには左右それぞれ親指と小指が添えられる。伊角さんの前では猫かぶって絶対見せない姿。
こいつ曰く、俺と同い年の弟が居て、話してると弟と接しているみたいだと何回言われたことか。
「お前家でもまだそうやって弟いじめてんのかよ」
「人聞きの悪い。大体向こうから今みたいにからかってくんのよ。」
「そんで勝つのは?」
「私」
コイツの弟はからかって姉にやられるけどきっと力勝負で対抗しない、いいヤツなんだろうと改めて悟った。問題はその姉。院生からの付き合いで見る限りコイツが仮に伊角さんと付き合ってずっと今の猫かぶりを通せるとは思えない。
「……正直言っていい?」
「なに?」
「お前の今の姿を知ってる上で付き合ってくれるヤツじゃないと、合わないと思う。多分お前疲れるぜ。」
「遠回しに伊角君を諦めろって言ってんでしょ。大丈夫、徐々におしとかやになっていく予定」
俺も本音を遠回しに言ってみたけど案の定、伊角さん一直線のコイツに届くわけもなく。どこからそんな自身が沸き起こるのだろうか。それを言ったら今度こそこめかみを締め付けられるから黙っておく。
「人間、根っこから治すのってなかなか難しいぜ。お前のその頑固かつ強気な性格なら尚更無理だって。だから、そーいう相手にしとけって話」
「和谷、あんたって前々から思ってたけど、私にだけは口が達者なようね」
こめかみを締め付けようとするその手首を掴み
「悪い悪い、言い過ぎたって。お詫びに伊角さんの好みのタイプ教えてやるよ」
「えっ、ほんとに?」
交渉成立。
伊角さんの名前を出した途端、声色と表情変えやがって気に食わない。
「ほんとに。えーっと、確か髪は今のお前くらいの長さで、強気な性格、よく喋る、裏表のない人……だったな。伊角さんには言うなよ。」
「な、なるほど。裏表のない……ね。よーし、頑張ろ!教えてくれてありがとね!」
俺のこと疑うこともなく、嬉しそうな顔して行くアイツに聞こえないように一言。
「全部俺の好みのタイプなんだけどな」
わざとギリギリのところまで言ったけど、アイツのことだから気づくこともなく、きっとまだしばらく俺のことは弟扱いなんだろう。
『伊角君、来週空いてますか。もしよければ映画のチケットが2枚あるんだけど』
「……なんかなぁー。」
打ってみて一度、黙読して消す。ある日の大手合いの昼休み。目の前の元院生仲間のそいつは3分経ってもそれをずっと繰り返していて結局デートのお誘いの文章は一文も作れていない。
「頑張ってんな。」
しかも俺に後ろから携帯画面を見られてるのにも気づいてないからいい加減声かけた。
「あっ、まさかあんたずっと後ろに?」
「イスミクン、ライシュウアイテ」
「これ以上言ったら、こうするわよ」
俺の額を片手で覆いこめかみには左右それぞれ親指と小指が添えられる。伊角さんの前では猫かぶって絶対見せない姿。
こいつ曰く、俺と同い年の弟が居て、話してると弟と接しているみたいだと何回言われたことか。
「お前家でもまだそうやって弟いじめてんのかよ」
「人聞きの悪い。大体向こうから今みたいにからかってくんのよ。」
「そんで勝つのは?」
「私」
コイツの弟はからかって姉にやられるけどきっと力勝負で対抗しない、いいヤツなんだろうと改めて悟った。問題はその姉。院生からの付き合いで見る限りコイツが仮に伊角さんと付き合ってずっと今の猫かぶりを通せるとは思えない。
「……正直言っていい?」
「なに?」
「お前の今の姿を知ってる上で付き合ってくれるヤツじゃないと、合わないと思う。多分お前疲れるぜ。」
「遠回しに伊角君を諦めろって言ってんでしょ。大丈夫、徐々におしとかやになっていく予定」
俺も本音を遠回しに言ってみたけど案の定、伊角さん一直線のコイツに届くわけもなく。どこからそんな自身が沸き起こるのだろうか。それを言ったら今度こそこめかみを締め付けられるから黙っておく。
「人間、根っこから治すのってなかなか難しいぜ。お前のその頑固かつ強気な性格なら尚更無理だって。だから、そーいう相手にしとけって話」
「和谷、あんたって前々から思ってたけど、私にだけは口が達者なようね」
こめかみを締め付けようとするその手首を掴み
「悪い悪い、言い過ぎたって。お詫びに伊角さんの好みのタイプ教えてやるよ」
「えっ、ほんとに?」
交渉成立。
伊角さんの名前を出した途端、声色と表情変えやがって気に食わない。
「ほんとに。えーっと、確か髪は今のお前くらいの長さで、強気な性格、よく喋る、裏表のない人……だったな。伊角さんには言うなよ。」
「な、なるほど。裏表のない……ね。よーし、頑張ろ!教えてくれてありがとね!」
俺のこと疑うこともなく、嬉しそうな顔して行くアイツに聞こえないように一言。
「全部俺の好みのタイプなんだけどな」
わざとギリギリのところまで言ったけど、アイツのことだから気づくこともなく、きっとまだしばらく俺のことは弟扱いなんだろう。