和谷夢短編集
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◇教科書◇
「頼むっ!」
両手を合わせて、私の目の前で懇願する隣のクラスの幼馴染み。
ワケを聞いたところ次の4限目が数学の授業で教科書忘れたから借りにきたとのこと。
「怪しい。」
「なんでだよ!」
いつもなら嫌いな教科だからって教科書忘れても開き直って借りにも来ない癖にどういう風の吹き回しだろう。
「いつからそんなに数学好きになったの?」
「……最後の授業ぐらい真面目に受けようと思って」
「ふーん。」
確かに彼は、4月からかなり特殊な道へ進むことが決まっていて数学に限らず一般的な学生の勉強とはおさらばになるわけで。
とりあえず断る理由は別になにもないので、一応ヤバそうな落書きが残ってないか一通り目を通してから教科書を手渡す。サンキュー。と教科書片手に自分の教室に戻っていくのを見て、勉強嫌いの彼をこうも動かすことができる“卒業”ってすごいな。なんて思ってしまった。
そして給食も終わって昼休み。
友達と話してるところにスっと入ってきて教科書を手渡される。
「お前、落書きはちゃんと消しとけよな。15ページのとことか」
「えっ」
嘘、確認したはずなのに。あのガチムチ系の腐りきった私の趣味全開の落書きをよりにもよってそういうのには無縁だろう義高に見られてしまうとは卒業前に痛恨のミス。
どうやってヤツの口止めをしようと魂が9割ぐらい抜けた状態で教科書を見ようとすると「和谷ってさー」と私のクラスの中心にいるタイプの女子の声。
「春から1人暮らしなんでしょ。みんなで遊びにいってあげるから住所教えてよ。」
冗談めいてそう聞く女子に対し義高は、はぁ。と一息。
「あのなぁ……何にも邪魔されずに碁の勉強するための部屋だってのに、お前らに部屋荒らされちゃたまんねーから誰にも教えないっての。」
「なんだよ和谷、つれねーな。」
「ホント、お前らの溜まり場と化すのが目に見える」
人柄も良く社交的なところからか私と違って顔の広い義高は、どこのクラスにも男女限らずそうやって冗談を言える友達がいる。
その仲のいい友達の誰にも教えないと言っているのに、返ってきた数学の教科書の15ページには
義高の4月からの新居の住所が書かれていた。
「頼むっ!」
両手を合わせて、私の目の前で懇願する隣のクラスの幼馴染み。
ワケを聞いたところ次の4限目が数学の授業で教科書忘れたから借りにきたとのこと。
「怪しい。」
「なんでだよ!」
いつもなら嫌いな教科だからって教科書忘れても開き直って借りにも来ない癖にどういう風の吹き回しだろう。
「いつからそんなに数学好きになったの?」
「……最後の授業ぐらい真面目に受けようと思って」
「ふーん。」
確かに彼は、4月からかなり特殊な道へ進むことが決まっていて数学に限らず一般的な学生の勉強とはおさらばになるわけで。
とりあえず断る理由は別になにもないので、一応ヤバそうな落書きが残ってないか一通り目を通してから教科書を手渡す。サンキュー。と教科書片手に自分の教室に戻っていくのを見て、勉強嫌いの彼をこうも動かすことができる“卒業”ってすごいな。なんて思ってしまった。
そして給食も終わって昼休み。
友達と話してるところにスっと入ってきて教科書を手渡される。
「お前、落書きはちゃんと消しとけよな。15ページのとことか」
「えっ」
嘘、確認したはずなのに。あのガチムチ系の腐りきった私の趣味全開の落書きをよりにもよってそういうのには無縁だろう義高に見られてしまうとは卒業前に痛恨のミス。
どうやってヤツの口止めをしようと魂が9割ぐらい抜けた状態で教科書を見ようとすると「和谷ってさー」と私のクラスの中心にいるタイプの女子の声。
「春から1人暮らしなんでしょ。みんなで遊びにいってあげるから住所教えてよ。」
冗談めいてそう聞く女子に対し義高は、はぁ。と一息。
「あのなぁ……何にも邪魔されずに碁の勉強するための部屋だってのに、お前らに部屋荒らされちゃたまんねーから誰にも教えないっての。」
「なんだよ和谷、つれねーな。」
「ホント、お前らの溜まり場と化すのが目に見える」
人柄も良く社交的なところからか私と違って顔の広い義高は、どこのクラスにも男女限らずそうやって冗談を言える友達がいる。
その仲のいい友達の誰にも教えないと言っているのに、返ってきた数学の教科書の15ページには
義高の4月からの新居の住所が書かれていた。