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アイナナ夢短編

◇2人ぼっちの冬ごもり【和泉三月】◇

甘い匂いに起こされて目が覚めると、窓のカーテンから漏れる陽の光が床を暖かく照らしている。そんな朝に思わず顔がほころぶ。

寝室から出て、リビングに向かうとすぐに甘い匂いの正体が分かった。それは、三月お手製のフレンチトーストだった。
「はよー。もう少し寝てて良かったのに。」
「おはよー、三月。食いしん坊なもんで、匂いに起こされたよ。」
彼につられて、私も間伸びした声で挨拶をする。
加えて私が起きた理由を話すと三月は、ははっ!と弾ける声と共に小さく笑った。
この声と、無邪気な笑顔に、何度心奪われたことか数知れず。
「んじゃ、食いしん坊に特別にバニラアイスのっけてやろ!」
「やった〜!」
年甲斐もなく、子供のように喜んでしまった。
洗顔や歯磨きを済ませて、フレンチトーストを食べ終わって。食後にホットミルクティーも飲んで優雅な朝は過ぎていった。

その後は、皿洗いや掃除洗濯を分担して終わらせて、お昼まで横並びにソファに座ってテレビを見ていた。
この2人だけの空間がとても好き。
家を出てしまうと、三月のアイドルという職業柄、外で2人だけで過ごすのは難しい。
だからせめて、お互い休みである今日はこの空間から一歩も出たくない。
「昼どうする?久しぶりに外にでも───」
そう思っていた矢先に三月からそう言われ、一気に気持ちが押し寄せてきた。声を遮ぎってまで私は三月と指を絡ませて手を繋ぐ。この空間に繋ぎ止めるかのように。
突然の行動に訳がわからないだろうに、三月もまたすぐに私の手を握り返してくれた。
彼の手の体温を感じて、気持ちが落ち着いてくる。
「家がいい。」
俯きながらそう呟くと、分かった。と優しい声音が聞こえた。私が顔を上げたその直後、三月の顔が近づき、額に柔らかいものが軽く触れた。
「……家じゃなきゃ、こういうこともできないもんな。」
手は握られたままだけど、頬を紅潮させた三月の顔は明後日の方向を向いていた。
「そうだね。」
恥じらう彼を心から愛おしく思った。
今日もまたこの空間はたくさんの好きで満ちていく。

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ワードパレット企画
#きらめく冬をキミと 
01/「手をつなぐ」「ほころぶ」「二人だけ」より
お題お借りしました!


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