◇回転寿司【ヒカアキ】◇

「だぁああ！バカバカ馬鹿！」
「馬鹿とはなんだ！しかも3回も！」

塔矢のヤツを回転寿司に連れて行ったところまでは良かった。
が、真顔で何の疑問も持たずに席についているお茶作る用の熱湯が出てくるボタンを押して、手を洗おうとするもんだから必死に止めた。
席について5秒で先が思いやられる。

「……お前、日本に初めて来た外国人かよ」
「僕を非国民だと言っているのか、進藤！」
「ちげーよ、あまりにも知らなさ過ぎて冗談で言っただけだって。すぐそういう言い方すんのやめろよな」
「君の言い方はいつも癇に触る。」

まぁ、肩慣らしはこのくらいで。
しばらくは黙々と食べていたが
また事件が起こる。途中俺がタッチパネルで自分の食べたいネタを頼んで、ご注文品と書かれた器の上に頼んだ寿司が運ばれてくる。

けど、ちょうど両手が塞がってて塔矢が取ってくれるだろうと思っていたら

「……」
「！？」

スルーしやがった。

いやさっき確かにタッチパネルからも注文品が来るって機械音でアナウンスがあったよな？

そう聞こうとするも、もう遅い。
流れていく俺の大トロ。

「……どうした、進藤？」
「いや、なんでもねぇや」

コイツが、口に米粒つけてそれに気づかないほど必死に美味そうに寿司食ってるのを見てたら、流れた大トロなんかもうどうでもよくなる。
さすがに口の米粒は、食い終わった後におしぼりで吹いてたから取れたけど。


でも、やっぱ食べ物の怨みってのは怖いもんで、
服についてる米粒のことは黙って、
そのままカピカピになって米粒取れにくくなって苦しめ。と、せめてもの仕返しをしてやった。