その他ヒカ碁キャラ夢短編
◇放課後スケルツォ【加賀鉄男】◇
持ち込み禁止のティーン雑誌の回し読みをしていて、ついに私の番がやってきたのは放課後だった。
帰りのHRが終わると、塾や引退前の部活、それぞれ受験生なりに色々と抱えるクラスメイト達で埋まっていた教室は、すぐに受験生の自覚もない呑気な私1人となった。
雑誌の持ち主である友達は、塾があるからと帰ってしまい、今日この雑誌はウチで1泊することが決定した。
だから学校でなくても、家で読める。読めるんだけど、母親がいい顔をしないのだ。勉強を蔑ろにして雑誌を読み耽ってる受験生だと、母親の目に写ってしまい怒声を飛ばされるのが想像に容易い。
ひと時の逃避行ができるのは、今この瞬間しかない。
そう思いながら雑誌を開く。校則を破らない程度のおしゃれな制服の着こなし方、メイク、放課後のおすすめデートスポット。それらを飛ばして私が見たかったのは、今月号から新企画として登場した生年月日占いのページだ。よく当たると名を馳せている占い師がその企画に関わっているらしい。それだけで自分の中の信憑性度合いが高くなる私は単純だ。
そして、自分の生年月日を見つけて読もうとしたら、頭上から聞き覚えのある声がした。
「占いだァ?んなもん、信じてんのかお前。」
この加賀というのは、親同士の仲が良く、昔からの付き合いが長く続いているせいか、クラスが離れててもなにかと私に絡んでくるのだ。
「……加賀には関係ないでしょ。」
彼の見かけが奇抜なのはもう慣れっこで、私は軽く加賀を睨みつけながら言った。
でも、加賀にとって、私のこの睨みつけるという行為は、ささやかな威嚇くらいの効果しか成さないようで、特に構うことなく、加賀は私の手から雑誌を奪った。
私は加賀から雑誌を取り返そうとは考えず、無駄にエネルギーを使うのをよした。むしろ、くだらないと言って投げるであろう雑誌を受け止めるのに、注力する。
そこまで心の準備をしていたのに意外にも、雑誌は普通に閉じられ、私の机に置かれた。加賀にしては丁寧に扱うから拍子抜けする。
そんな彼の様子を観察していると、急に真剣な面持ちで加賀が言った。
「前からお前が好きだった。付き合ってくれ。」
「――は?」
今まさに、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてる自分が、加賀の双眸に映っていることだろう。私が二の句を継げずにいると、加賀はしたり顔で口を開いた。
「お前の生年月日の欄に書いてあった、『来年から数えて3年間のどこかで彼氏ができる。』って文章。これ、今ので未来変わっただろ?」
加賀の言ってることが信じられなくて、加賀が言うから信憑性がなくて、雑誌に目を走らせる。が、書いてある文章だけは事実だった。
私は平常心を取り戻して言い放った。
「冗談の告白に返事もしてないのに、未来変わったとか、自信満々に冗談言わないで。」
私を揶揄いたくて嘘の告白をした加賀の本心は見え見えだ。この占いを巡る話はこれでもう終わるはず。
「冗談にしたのはてめーだろ。」
やっと雑誌をゆっくり読めると思った矢先、したり顔からすぐに真剣な面持ちに戻して加賀はそう言ったのだ。
彼の射る様な熱い視線に、まるで金縛りにあったかのように指一本ですら身体が動かせない。それに、なんて反応したらいいのか分からず、声が出ずに視線だけが彷徨う。
すると鞄を肩にかけた加賀は、教室の出口に向かって歩いて行った。
「占いなんざにハマってる暇があんなら、勉強しろ。そんなんじゃ、お前が第一志望で狙ってるとこ、俺とおんなじ高校に行けねーだろうが。」
と、思いきや教室の出入り口の敷居で一旦、足を止めた加賀は私の方を振り向くことなく、そう言って去っていった。
そこで、喝を入れるために加賀が、恥を偲んでわざと私に告白をしてくれたのかと気づく。にしても、親のネットワークとやらで私の第一志望の高校が加賀にも知られたんだろうか。
なんにせよ、冗談混じりだったけど加賀が珍しく私に喝を入れてくれたんだ。
勉強頑張って、加賀と同じ第一志望の高校に行こう。加賀との今みたいな付き合いが高校に入っても続くの、悪くないな。
そう思いながら私は雑誌を閉じて、バックに詰め込み教室を後にした。
持ち込み禁止のティーン雑誌の回し読みをしていて、ついに私の番がやってきたのは放課後だった。
帰りのHRが終わると、塾や引退前の部活、それぞれ受験生なりに色々と抱えるクラスメイト達で埋まっていた教室は、すぐに受験生の自覚もない呑気な私1人となった。
雑誌の持ち主である友達は、塾があるからと帰ってしまい、今日この雑誌はウチで1泊することが決定した。
だから学校でなくても、家で読める。読めるんだけど、母親がいい顔をしないのだ。勉強を蔑ろにして雑誌を読み耽ってる受験生だと、母親の目に写ってしまい怒声を飛ばされるのが想像に容易い。
ひと時の逃避行ができるのは、今この瞬間しかない。
そう思いながら雑誌を開く。校則を破らない程度のおしゃれな制服の着こなし方、メイク、放課後のおすすめデートスポット。それらを飛ばして私が見たかったのは、今月号から新企画として登場した生年月日占いのページだ。よく当たると名を馳せている占い師がその企画に関わっているらしい。それだけで自分の中の信憑性度合いが高くなる私は単純だ。
そして、自分の生年月日を見つけて読もうとしたら、頭上から聞き覚えのある声がした。
「占いだァ?んなもん、信じてんのかお前。」
この加賀というのは、親同士の仲が良く、昔からの付き合いが長く続いているせいか、クラスが離れててもなにかと私に絡んでくるのだ。
「……加賀には関係ないでしょ。」
彼の見かけが奇抜なのはもう慣れっこで、私は軽く加賀を睨みつけながら言った。
でも、加賀にとって、私のこの睨みつけるという行為は、ささやかな威嚇くらいの効果しか成さないようで、特に構うことなく、加賀は私の手から雑誌を奪った。
私は加賀から雑誌を取り返そうとは考えず、無駄にエネルギーを使うのをよした。むしろ、くだらないと言って投げるであろう雑誌を受け止めるのに、注力する。
そこまで心の準備をしていたのに意外にも、雑誌は普通に閉じられ、私の机に置かれた。加賀にしては丁寧に扱うから拍子抜けする。
そんな彼の様子を観察していると、急に真剣な面持ちで加賀が言った。
「前からお前が好きだった。付き合ってくれ。」
「――は?」
今まさに、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてる自分が、加賀の双眸に映っていることだろう。私が二の句を継げずにいると、加賀はしたり顔で口を開いた。
「お前の生年月日の欄に書いてあった、『来年から数えて3年間のどこかで彼氏ができる。』って文章。これ、今ので未来変わっただろ?」
加賀の言ってることが信じられなくて、加賀が言うから信憑性がなくて、雑誌に目を走らせる。が、書いてある文章だけは事実だった。
私は平常心を取り戻して言い放った。
「冗談の告白に返事もしてないのに、未来変わったとか、自信満々に冗談言わないで。」
私を揶揄いたくて嘘の告白をした加賀の本心は見え見えだ。この占いを巡る話はこれでもう終わるはず。
「冗談にしたのはてめーだろ。」
やっと雑誌をゆっくり読めると思った矢先、したり顔からすぐに真剣な面持ちに戻して加賀はそう言ったのだ。
彼の射る様な熱い視線に、まるで金縛りにあったかのように指一本ですら身体が動かせない。それに、なんて反応したらいいのか分からず、声が出ずに視線だけが彷徨う。
すると鞄を肩にかけた加賀は、教室の出口に向かって歩いて行った。
「占いなんざにハマってる暇があんなら、勉強しろ。そんなんじゃ、お前が第一志望で狙ってるとこ、俺とおんなじ高校に行けねーだろうが。」
と、思いきや教室の出入り口の敷居で一旦、足を止めた加賀は私の方を振り向くことなく、そう言って去っていった。
そこで、喝を入れるために加賀が、恥を偲んでわざと私に告白をしてくれたのかと気づく。にしても、親のネットワークとやらで私の第一志望の高校が加賀にも知られたんだろうか。
なんにせよ、冗談混じりだったけど加賀が珍しく私に喝を入れてくれたんだ。
勉強頑張って、加賀と同じ第一志望の高校に行こう。加賀との今みたいな付き合いが高校に入っても続くの、悪くないな。
そう思いながら私は雑誌を閉じて、バックに詰め込み教室を後にした。