その他ヒカ碁キャラ夢短編
◇恋加速する一夜 【進藤ヒカル】◇
「2次会参加するヤツちゃんと着いてこいよ~!」
俺の誕生日会をわざわざ和谷が幹事で開いてくれて院生時代のヤツから知り合いのプロ棋士仲間まで引き連れて2次会が始まろうとしていた。
俺は、そんな中アイツの姿を探す。
塔矢門下の紅一点、俺と同期の女流プロ棋士仲間。
2次会に行くメンバーが次々動き出す中抜けたそうな顔してるアイツを発見して
「───!」
腕をぐいっと後ろに引っ張り、小道へ誘導。
背中に回した右手でソイツの右肩を掴み、声を出されないように
口元をもう片方の手で覆う。
「あれ、今日の主役どこ行ったんだよ?」
「まさか帰った?」
俺を気にしつつみんながその場から居なくなるのを確認して口元から手を離す。
「ぷはぁっ!ちょ、びっくりしたでしょーが、進藤!」
「悪い悪い。俺も抜けたくて」
「今日の主役が居なくちゃ意味ないでしょ。」
院生の頃からの知り合いだったけど
本格的に喋るようになったのは第1回目の北斗杯辺りからで。
今じゃ、プロ棋士の中でも
結構仲いい方だと思う。
「ま、どーにかなんだろ。
それより、お前今日車だよな?」
「なんで分かったの?」
「酒飲んで無かったから。」
「よく見てんじゃん。送ってくよ。」
囲碁界屈指の運転好きという
異名を持つコイツは
どういうわけかファンの定着率が高い。
「いや、夜風にあたりたい。
今日、俺帰りたくねーや。」
「え、まさかの朝まで?
まぁ、大したプレゼントもあげてないし、付き合うよ。
でも朝まで走りっぱなしはさすがになぁー。」
「…んじゃあ、海。」
「そう来たか。
進藤にしてはいいチョイス。」
「俺にしてはってなんだよ」
ふざけつつも、
先にコンビニで飲み物買って
車に乗り、心地よい運転で
向かった先はお台場海浜公園。
平日の夜だからか人は全然居なくて俺ら2人きりだった。
レインボーブリッジの綺麗なライトアップと都会の夜景を眺めながら
9月の生暖かさが残る夜風にあたって
砂浜に足跡を残しながら歩く。
俺が座ろうとすると
「そのまま座ったらジーパン汚れちゃうよ。ほらレジャーシート。」
「サンキュー。」
小さいシートを差し出してくれて
お互いの手の小指がぶつかりそうなぐらい近い距離感で座った。
「なぁ、お前の好きなタイプ教えてくれよ」
「え、なに唐突に。話すネタ無いからってそーいうこと聞く?」
「いいから」
すると指折り数えながら1つひとつ言う。
「まずは、そうだな。
囲碁が強い、運転上手い、頼りになる、ミステリアスだけど熱帯魚好きなギャップ、タイトル保持者ぐらいかな、思いつくのは。」
「…それ、緒方さんだろ」
俺が言うと顔を赤くすることもなく
そうですよ。と開きなおっていた。
「そりゃあ、惚れるよ…。
1回目の北斗杯の時に
あの理不尽な性別制限のことを
主催に1番に掛け合ってくれたの緒方さんなんだから。」
「……」
コイツにとっては苦い思い出の
1回目の北斗杯がまだ記憶に新しい。
「最初は男性も女性枠で分けようと思っていたが
イベントの盛り上がり具合で来年も継続できるか分からない試験的なイベントだから予算や人出の関係で
今回の北斗杯、急に変更になってしまい大変、申し訳ないが男性棋士のみで制限をさせてもらうことにした。」
たまたま、棋院の一室を通り過ぎた時に耳に入ってしまった会話。
「そう、ですか…。分かりました。」
「決して、君の棋力の問題ではない
女流ながら兄弟子の塔矢アキラ君に匹敵するほどの実力があることを世間一般が知っている。
これからも君の活躍には期待しているよ。今回は大変申し訳なかった。」
そう、肩を叩かれながら部屋を出てきたのがアイツで。
「いえ」
と、笑顔を保ちながら一言。
声をかけていいのか迷ったけど
隠れられるところもなく
「よ、よぉ。」
声をかけてしまった。
たった今、実力がありながら女ってだけで北斗杯の出場権を失ったアイツに。
当然、笑顔は崩れ
「ごめん、進藤。今は無理。」
「───!」
拒絶反応。
普通だったらそっとしておくだろう場面を俺は、打ちたいのに打てない佐為と重ねてしまい追いかける。
棋院の入り口でやっと捕える。
「───っ。…はい、そうですか。なんて
素直に受け取れるわけないじゃない。」
涙と共に本音も出てくるコイツに
気の利いた言葉なんかかけられやしない。
自然と身体が動き自分のとこに引き寄せた。
「───俺、絶対優勝するから。
まだ予選すら通過してねーけど、
来年、北斗杯が継続できるように
お前が出れるようにしてやる。」
そう、言ったからといってすぐに泣き止んだわけでもなかったが最後は笑顔になった。
結局、優勝って約束は果たせなかったけど
翌年の北斗杯では
あの日の悔しさをバネしたコイツが
1年の間に実績を積み上げ、シード権確保。
女流枠の大将はって個人の勝敗としては全勝という好成績を残し、
さらに盛り上がった。
不貞腐れずに頑張る姿を見て
「ちェっ。俺、一個も当てはまんねーじゃん。」
「は?」
自然と意識していた。
「緒方さんに言ったのか?」
「言わないよ。これから先もずっと
この気持ちは言わない。憧れとしてしまっとく。
…さっ、次は進藤の番!どーなのよ、最近幼馴染のあの子と。」
隙を与えず切り返され
俺の話になってしまった。
あかりのことは俺の大盤解説を良く見にくるからみんなに覚えられていた。
「告白された。」
「でえええ!だったらなんで2次会抜ける時あんなことしたのよ!
それに私と一緒にいちゃダメでしょ、帰ろう!」
「いや、気になるヤツがいるって言って振った。」
「そっか…。
進藤の気になる人ってどんな人?」
コイツ…まだ分かってねェ。
「碁が強くて、負けず嫌いで───」
「分かった、アキラだ!」
「んなわけねーだろ!」
「じょーだん。それで?」
「囲碁界屈指の運転好きで」
「進藤も緒方さん狙ってたの!?
男女問わず後輩に好かれる緒方さん、さすが…。南無三。」
目をつぶって両手を合掌する。
この緒方信者め。
なかなか話が進まず、
「お前、自分のことだって
1ミリも思わねーの?」
ここまで言ったらさすがに分かるだろうと冷静に言うと
「……」
うんともすんとも言わず
固まった。
「おい、戻ってこい」
「…ずるいよ進藤。
私、まだ緒方さんのこと吹っ切れてないのに。」
「知ってる。
でもお前、言う気ないんだろ?
それって大いに俺にもチャンスあるってことじゃん。」
「なに、お気楽言って────」
まだ本気だと信じないコイツの
手を取り、真っ直ぐ目を見て言う。
「余所見なんかさせないぜ。
塔矢よりも緒方さんよりもかなり差をつけて強くなって
俺だけしか見えないようにしてやる。」
すると、
「わ、分かった。…期待してる。」
恥ずかしがって俺から視線を外しつつも最後は俺にもチャンスはあると確信を持たせてくれた。
おかげでお互い気持ちが高ぶっていたからか全く眠くならず
朝までの時間を色んな話をして過ごした。
「日が昇ってきたことだし、
さすがにそろそろ帰ろっか。」
「…そうだな。」
そして通快に
車を走らせてる最中、行きよりも口数が少なくなったから聞いた。
「なぁ、お前行きよりも口数少なくねーか?」
「…手元狂わせるような聞き方して死にたい?」
「すんません」
そう言いつつも、少なくとも行きよりかは俺のことを意識してくれてるのが伝わり、
もう別れの時間かと思うと
今の今までコイツを独占しているというのに
更なる欲が出る。
このまま、誰にも邪魔されないところに行ければいいのに。と。
「2次会参加するヤツちゃんと着いてこいよ~!」
俺の誕生日会をわざわざ和谷が幹事で開いてくれて院生時代のヤツから知り合いのプロ棋士仲間まで引き連れて2次会が始まろうとしていた。
俺は、そんな中アイツの姿を探す。
塔矢門下の紅一点、俺と同期の女流プロ棋士仲間。
2次会に行くメンバーが次々動き出す中抜けたそうな顔してるアイツを発見して
「───!」
腕をぐいっと後ろに引っ張り、小道へ誘導。
背中に回した右手でソイツの右肩を掴み、声を出されないように
口元をもう片方の手で覆う。
「あれ、今日の主役どこ行ったんだよ?」
「まさか帰った?」
俺を気にしつつみんながその場から居なくなるのを確認して口元から手を離す。
「ぷはぁっ!ちょ、びっくりしたでしょーが、進藤!」
「悪い悪い。俺も抜けたくて」
「今日の主役が居なくちゃ意味ないでしょ。」
院生の頃からの知り合いだったけど
本格的に喋るようになったのは第1回目の北斗杯辺りからで。
今じゃ、プロ棋士の中でも
結構仲いい方だと思う。
「ま、どーにかなんだろ。
それより、お前今日車だよな?」
「なんで分かったの?」
「酒飲んで無かったから。」
「よく見てんじゃん。送ってくよ。」
囲碁界屈指の運転好きという
異名を持つコイツは
どういうわけかファンの定着率が高い。
「いや、夜風にあたりたい。
今日、俺帰りたくねーや。」
「え、まさかの朝まで?
まぁ、大したプレゼントもあげてないし、付き合うよ。
でも朝まで走りっぱなしはさすがになぁー。」
「…んじゃあ、海。」
「そう来たか。
進藤にしてはいいチョイス。」
「俺にしてはってなんだよ」
ふざけつつも、
先にコンビニで飲み物買って
車に乗り、心地よい運転で
向かった先はお台場海浜公園。
平日の夜だからか人は全然居なくて俺ら2人きりだった。
レインボーブリッジの綺麗なライトアップと都会の夜景を眺めながら
9月の生暖かさが残る夜風にあたって
砂浜に足跡を残しながら歩く。
俺が座ろうとすると
「そのまま座ったらジーパン汚れちゃうよ。ほらレジャーシート。」
「サンキュー。」
小さいシートを差し出してくれて
お互いの手の小指がぶつかりそうなぐらい近い距離感で座った。
「なぁ、お前の好きなタイプ教えてくれよ」
「え、なに唐突に。話すネタ無いからってそーいうこと聞く?」
「いいから」
すると指折り数えながら1つひとつ言う。
「まずは、そうだな。
囲碁が強い、運転上手い、頼りになる、ミステリアスだけど熱帯魚好きなギャップ、タイトル保持者ぐらいかな、思いつくのは。」
「…それ、緒方さんだろ」
俺が言うと顔を赤くすることもなく
そうですよ。と開きなおっていた。
「そりゃあ、惚れるよ…。
1回目の北斗杯の時に
あの理不尽な性別制限のことを
主催に1番に掛け合ってくれたの緒方さんなんだから。」
「……」
コイツにとっては苦い思い出の
1回目の北斗杯がまだ記憶に新しい。
「最初は男性も女性枠で分けようと思っていたが
イベントの盛り上がり具合で来年も継続できるか分からない試験的なイベントだから予算や人出の関係で
今回の北斗杯、急に変更になってしまい大変、申し訳ないが男性棋士のみで制限をさせてもらうことにした。」
たまたま、棋院の一室を通り過ぎた時に耳に入ってしまった会話。
「そう、ですか…。分かりました。」
「決して、君の棋力の問題ではない
女流ながら兄弟子の塔矢アキラ君に匹敵するほどの実力があることを世間一般が知っている。
これからも君の活躍には期待しているよ。今回は大変申し訳なかった。」
そう、肩を叩かれながら部屋を出てきたのがアイツで。
「いえ」
と、笑顔を保ちながら一言。
声をかけていいのか迷ったけど
隠れられるところもなく
「よ、よぉ。」
声をかけてしまった。
たった今、実力がありながら女ってだけで北斗杯の出場権を失ったアイツに。
当然、笑顔は崩れ
「ごめん、進藤。今は無理。」
「───!」
拒絶反応。
普通だったらそっとしておくだろう場面を俺は、打ちたいのに打てない佐為と重ねてしまい追いかける。
棋院の入り口でやっと捕える。
「───っ。…はい、そうですか。なんて
素直に受け取れるわけないじゃない。」
涙と共に本音も出てくるコイツに
気の利いた言葉なんかかけられやしない。
自然と身体が動き自分のとこに引き寄せた。
「───俺、絶対優勝するから。
まだ予選すら通過してねーけど、
来年、北斗杯が継続できるように
お前が出れるようにしてやる。」
そう、言ったからといってすぐに泣き止んだわけでもなかったが最後は笑顔になった。
結局、優勝って約束は果たせなかったけど
翌年の北斗杯では
あの日の悔しさをバネしたコイツが
1年の間に実績を積み上げ、シード権確保。
女流枠の大将はって個人の勝敗としては全勝という好成績を残し、
さらに盛り上がった。
不貞腐れずに頑張る姿を見て
「ちェっ。俺、一個も当てはまんねーじゃん。」
「は?」
自然と意識していた。
「緒方さんに言ったのか?」
「言わないよ。これから先もずっと
この気持ちは言わない。憧れとしてしまっとく。
…さっ、次は進藤の番!どーなのよ、最近幼馴染のあの子と。」
隙を与えず切り返され
俺の話になってしまった。
あかりのことは俺の大盤解説を良く見にくるからみんなに覚えられていた。
「告白された。」
「でえええ!だったらなんで2次会抜ける時あんなことしたのよ!
それに私と一緒にいちゃダメでしょ、帰ろう!」
「いや、気になるヤツがいるって言って振った。」
「そっか…。
進藤の気になる人ってどんな人?」
コイツ…まだ分かってねェ。
「碁が強くて、負けず嫌いで───」
「分かった、アキラだ!」
「んなわけねーだろ!」
「じょーだん。それで?」
「囲碁界屈指の運転好きで」
「進藤も緒方さん狙ってたの!?
男女問わず後輩に好かれる緒方さん、さすが…。南無三。」
目をつぶって両手を合掌する。
この緒方信者め。
なかなか話が進まず、
「お前、自分のことだって
1ミリも思わねーの?」
ここまで言ったらさすがに分かるだろうと冷静に言うと
「……」
うんともすんとも言わず
固まった。
「おい、戻ってこい」
「…ずるいよ進藤。
私、まだ緒方さんのこと吹っ切れてないのに。」
「知ってる。
でもお前、言う気ないんだろ?
それって大いに俺にもチャンスあるってことじゃん。」
「なに、お気楽言って────」
まだ本気だと信じないコイツの
手を取り、真っ直ぐ目を見て言う。
「余所見なんかさせないぜ。
塔矢よりも緒方さんよりもかなり差をつけて強くなって
俺だけしか見えないようにしてやる。」
すると、
「わ、分かった。…期待してる。」
恥ずかしがって俺から視線を外しつつも最後は俺にもチャンスはあると確信を持たせてくれた。
おかげでお互い気持ちが高ぶっていたからか全く眠くならず
朝までの時間を色んな話をして過ごした。
「日が昇ってきたことだし、
さすがにそろそろ帰ろっか。」
「…そうだな。」
そして通快に
車を走らせてる最中、行きよりも口数が少なくなったから聞いた。
「なぁ、お前行きよりも口数少なくねーか?」
「…手元狂わせるような聞き方して死にたい?」
「すんません」
そう言いつつも、少なくとも行きよりかは俺のことを意識してくれてるのが伝わり、
もう別れの時間かと思うと
今の今までコイツを独占しているというのに
更なる欲が出る。
このまま、誰にも邪魔されないところに行ければいいのに。と。
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