あれ?これってナンパ?(2話完結)
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◇あれ?これってナンパ?(前編)◇
年の暮れ、なかなか行けてなかった昔からの行きつけの碁会所に久しぶりに行くと見覚えのない顔。マスターにあの子は?と聞こうとする前に、
和谷君が来てない間に今やこの碁会所では彼女が一番になってしまったよ。もちろんプロじゃ無いよ。と、男性のマスターが言うもんだからそんな強いヤツを放って置けるわけもなく、声をかけられずにはいられなかった。
「───なぁ、ここ空いてる?」
「あ、どうぞどうぞ!」
棋譜並べか詰碁解いてたのか分からないけど碁石を持っていた手を止めて特に緊張する様子もなくむしろ、笑顔でフレンドリーに接してくれた。
「あのさ、マスターからここで一番強いって聞いたんだけど」
「ちょっマスター、私のことヨイショしすぎでしょ!」
「私は事実を言ったまでだよ。」
カウンターにいるマスターにまで声を張りあげるも、マスターは口角を上げて自分のペースを乱すことなく碁石を磨きながら冷静に返す。
「いつから来てんの?」
「2週間前からです。」
「へぇ…。そんな日が浅いのにここのトップに君臨するってことは相当強いってことか。俺と一局打たない?」
「マスターとグルですか?あんまりプレッシャーかけないでくださいよ」
ニコニコしながらそう口で言いつつも、手は碁石を片付けていて対局の準備をしていた。そしてマスターのその言葉に間違いはなく、彼女の打つ一手一手にはかなり頭を捻られた。結果は俺が勝ったけど、彼女の打ってきた一手一手の考えを聞きたい。また打ちたい。そんな余韻が収まらない一局で。
「あーあ、流石にプロは強いか。でも凄く楽しかったです。お手合わせありがとうございました。いくらですか?」
「いやいいよ!俺から頼んだんだし。」
鞄から財布を取り出そうとするのを止めるも
「そういうのダメです。プロなんですからこういうとこはしっかりしておかなきゃ。そうやって人情だとかで前科作っちゃうと、前はタダでやってくれたでしょってなりますよ。何も包むもの持ってなくて申し訳ないですけど受け取ってください」
笑いながら上手いこと俺のこと言い負かして、指導碁の相場の金額を渡された。
「悪いな、ありがとう。年の瀬にいい一局が打てて……こっちこそ楽しかった。」
義理堅い。それが彼女と一時を過ごして思った感想。
「時間平気?友達と約束があるとか言ってなかったけ」
そこでマスターのこの一言。ヤバイ、この流れだと何にも聞けずにまたいつ会えるかも分からずに終わってしまう。なんか、なんか足止め出来る方法は…。
「あ、そろそろ行かなきゃだ!和谷義高四段、ありがとうございました!」
あれこれ考えている内に彼女は碁石を片付け終わっていて碁会所をそそくさと出て行ってしまった。
彼女とまた会うために今の俺に思いつく方法はたった1つ。もう、これしかない。
「あ、あのさっ!」
碁会所を出て後を追いかけ声を張って足を止めた。
高鳴る鼓動を落ち着かせ、振り向いた彼女に一か八かで────────
「───で、年の暮れにアマなのにめちゃくちゃ強くて面白い碁を打つヤツと会ったんだよ。」
「へー。女?男?」
「女。多分、俺やお前と歳近い」
初詣と称して、毎年打ち始めは森下門下での集まり。
参拝に並ぶ最中に進藤と冴木さんに昨日の話をした。
「んで、その女の子と?」
ニヤニヤしながら冴木さんに聞かれる。
「残念ながらそんな期待されるような浮いた話じゃねーよ。ただ、また打ちたいから俺の携帯番号渡しただけ。」
「それってナンパじゃん」
「え?」
進藤が言って、冴木さんが確かに。と話に乗って話し出す。
「よく考えれば碁のことで会いたいならわざわざ追いかけなくてもその碁会所のマスターに聞けばいつ来るかとか大体の情報は分かんじゃねーの?番号渡すってことは確実に会いたいの裏に自分のことを覚えていておいて欲しいってのが潜んでんだよ。タイプの女だったってことじゃん。認めろ」
冴木さんに心を見透かされ何も切り返す言葉が見つからない。やっとあれって、ナンパだったのか。と意識が芽生える。相手の有無も聞かずに碁会所に戻ったし。
あぁ、やってしまった。今頃軽い男だったと酒のつまみのネタにされてるかも。
とは言えもう事実は変えられないわけで。
彼女との関係はこれで途絶えたとばかりに思ってた俺の携帯電話に電話帳には登録してない番号から1件の不在着信があったのに気づいたのはあと、数時間後のことだった。
年の暮れ、なかなか行けてなかった昔からの行きつけの碁会所に久しぶりに行くと見覚えのない顔。マスターにあの子は?と聞こうとする前に、
和谷君が来てない間に今やこの碁会所では彼女が一番になってしまったよ。もちろんプロじゃ無いよ。と、男性のマスターが言うもんだからそんな強いヤツを放って置けるわけもなく、声をかけられずにはいられなかった。
「───なぁ、ここ空いてる?」
「あ、どうぞどうぞ!」
棋譜並べか詰碁解いてたのか分からないけど碁石を持っていた手を止めて特に緊張する様子もなくむしろ、笑顔でフレンドリーに接してくれた。
「あのさ、マスターからここで一番強いって聞いたんだけど」
「ちょっマスター、私のことヨイショしすぎでしょ!」
「私は事実を言ったまでだよ。」
カウンターにいるマスターにまで声を張りあげるも、マスターは口角を上げて自分のペースを乱すことなく碁石を磨きながら冷静に返す。
「いつから来てんの?」
「2週間前からです。」
「へぇ…。そんな日が浅いのにここのトップに君臨するってことは相当強いってことか。俺と一局打たない?」
「マスターとグルですか?あんまりプレッシャーかけないでくださいよ」
ニコニコしながらそう口で言いつつも、手は碁石を片付けていて対局の準備をしていた。そしてマスターのその言葉に間違いはなく、彼女の打つ一手一手にはかなり頭を捻られた。結果は俺が勝ったけど、彼女の打ってきた一手一手の考えを聞きたい。また打ちたい。そんな余韻が収まらない一局で。
「あーあ、流石にプロは強いか。でも凄く楽しかったです。お手合わせありがとうございました。いくらですか?」
「いやいいよ!俺から頼んだんだし。」
鞄から財布を取り出そうとするのを止めるも
「そういうのダメです。プロなんですからこういうとこはしっかりしておかなきゃ。そうやって人情だとかで前科作っちゃうと、前はタダでやってくれたでしょってなりますよ。何も包むもの持ってなくて申し訳ないですけど受け取ってください」
笑いながら上手いこと俺のこと言い負かして、指導碁の相場の金額を渡された。
「悪いな、ありがとう。年の瀬にいい一局が打てて……こっちこそ楽しかった。」
義理堅い。それが彼女と一時を過ごして思った感想。
「時間平気?友達と約束があるとか言ってなかったけ」
そこでマスターのこの一言。ヤバイ、この流れだと何にも聞けずにまたいつ会えるかも分からずに終わってしまう。なんか、なんか足止め出来る方法は…。
「あ、そろそろ行かなきゃだ!和谷義高四段、ありがとうございました!」
あれこれ考えている内に彼女は碁石を片付け終わっていて碁会所をそそくさと出て行ってしまった。
彼女とまた会うために今の俺に思いつく方法はたった1つ。もう、これしかない。
「あ、あのさっ!」
碁会所を出て後を追いかけ声を張って足を止めた。
高鳴る鼓動を落ち着かせ、振り向いた彼女に一か八かで────────
「───で、年の暮れにアマなのにめちゃくちゃ強くて面白い碁を打つヤツと会ったんだよ。」
「へー。女?男?」
「女。多分、俺やお前と歳近い」
初詣と称して、毎年打ち始めは森下門下での集まり。
参拝に並ぶ最中に進藤と冴木さんに昨日の話をした。
「んで、その女の子と?」
ニヤニヤしながら冴木さんに聞かれる。
「残念ながらそんな期待されるような浮いた話じゃねーよ。ただ、また打ちたいから俺の携帯番号渡しただけ。」
「それってナンパじゃん」
「え?」
進藤が言って、冴木さんが確かに。と話に乗って話し出す。
「よく考えれば碁のことで会いたいならわざわざ追いかけなくてもその碁会所のマスターに聞けばいつ来るかとか大体の情報は分かんじゃねーの?番号渡すってことは確実に会いたいの裏に自分のことを覚えていておいて欲しいってのが潜んでんだよ。タイプの女だったってことじゃん。認めろ」
冴木さんに心を見透かされ何も切り返す言葉が見つからない。やっとあれって、ナンパだったのか。と意識が芽生える。相手の有無も聞かずに碁会所に戻ったし。
あぁ、やってしまった。今頃軽い男だったと酒のつまみのネタにされてるかも。
とは言えもう事実は変えられないわけで。
彼女との関係はこれで途絶えたとばかりに思ってた俺の携帯電話に電話帳には登録してない番号から1件の不在着信があったのに気づいたのはあと、数時間後のことだった。