賢者の石
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いつまでも手を繋いでいる2人に痺れを切らしたように、ロンがクィディッチの話を始める。もちろんマグルの世界で過ごしてきたハリーはクィディッチというスポーツを知らなかった。
アイはある程度は知識として知っていたが、実際にクィディッチの試合を見たことは無かった。
ロンが目を輝かせながらクィディッチのやり方や今まで見た試合の話をして、いよいよこれからがおもしろいと、専門的な話に入ろうとしていた時、またコンパートメントの戸が開いた。今度は、「ヒキガエル探し」のネビルでもハーマイオニーでもなかった。
男の子が3人入ってきた。
「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」
3人のうちの真ん中青白い子がハリーを見て言った。
「そうだよ」
とハリーが答えた。
ハリーはあとの2人に目をやった。2人ともガッチリとして、この上なく意地悪そうだった。
アイには青白い男の子の両脇に立つガッチリした2人がボディーガードのように見えた。
「あぁ、こいつはグラッブで、こっちがゴイルさ」
3人の視線に気付いたの青白い子が、無造作に言った。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンはクスクス笑いをごまかすかのように軽く咳払いをした。ドラコ・マルフォイが目ざとくそれを見咎めた。
「僕の名前が変だとでも言うのかい?」
そう言ったマルフォイの前に女の子が立ち上がった。
「わあ!感激!あなたも1年生?」
「え、あ、そうだが」
急に声を掛けられ目を丸くする男の子。
「やったあ!同級生だね!私、アイ・ブラウン!アイって呼んでね!マルフォイ家は優秀な魔法族の家系だって父からいつも聞いてたの!そんな優秀な人と一緒に勉強できるなんて嬉しい!」
興奮気味に話をするアイは遂に興奮のあまり、マルフォイの手を自分の両手で握りしめた。
「君は良い父上の元で良い教育を受けてきたみたいだね」
照れたように頬を染めた男の子は勢いよくアイから手を離し、1歩後ろへと下がりながらアイに言った。アイは自分の父親が褒められたことに嬉しくなる。
そして、マルフォイは赤毛の男の子の方を向き直して小言を再開した。
「君が誰だか聞く必要も無いね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子どもがいるってね」
それからハリーとアイに向かって言った。
「ポッター君、アイ。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
男の子はハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。その代わりと言わんばかりに勢いよくアイがその手を握った。アイは父から聞いていたマルフォイ家と関わることが出来て心底喜んでいた。
ハリーとロンはアイの行動に目を見開き、勢い良く2人を引き離した。
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」
ハリーは冷たく言った。ドラコ・マルフォイは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。
「ポッター君、僕ならもう少し気をつけるがね」
からみつくような言い方だ。
「そこの彼女のようにもう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も、何が自分の身のためになるのかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
ハリーもロンも立ち上がった。ロンの顔は髪の毛と同じぐらい赤くなった。アイは少し悲しくなった。憧れていたマルフォイ家の男の子が自分の初めて出来た友達を悪く言ったのだから。
「もういっぺん言ってみろ」
ロンが叫んだ。
「へぇ、僕たちとやるつもりかい?」
マルフォイはせせら笑った。
「今すぐ出ていかないならね」
ハリーはきっぱり言った。
しかし、3人は出ていくどころかコンパートメントの中にグイッと入り込んできた。そして、ハリーが買ったお菓子に手を伸ばそうとしてきた。途端、ゴイルが悲鳴をあげた。ねずみのスキャバーズが指に食らいついている。ゴイルはスキャバーズをぐるぐる振り回し、わめき、クラッブとマルフォイは後ずさりした。やっと振り切って、スキャバーズは窓に叩きつけられ、3人とも足早に消え去った。
ハーマイオニー・グレンジャーがまもなく顔を出した。
「いったい何やってたの?」
床いっぱいに菓子は散らばっているし、ロンはスキャバーズのしっぽをつかんでぶら下げていた。
「こいつ、ノックアウトされちゃったみたい」
ロンはハリーとアイにそう言いながら、もう一度よくスキャバーズを見た。
「ちがう…驚いたなあ…また眠っちゃってるよ」
本当に眠っていた。
「マルフォイに会ったことあるの?」
ハリーはダイアゴン横丁で出会った時のことを話した。
「僕、あの家族のことを聞いたことがある」
ロンが暗い顔をした。
「『例のあの人』が消えた時、まっ先にこっち側に戻ってきた家族の1つなんだ。魔法をかけられてったって言ったんだって。パパは信じないって言ってた。マルフォイの父親なら、闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらなかっただろうって」
ロンはハーマイオニーの方を振り向いて、今さらながら尋ねた。
「何かご用?」
ハーマイオニーは早く着替えるようにと3人を急かした。そして、コンパートメントから出ていく時にロンに一言小言を言ってから出ていった。ロンはそんなハーマイオニーを睨みつけていた。アイはどうして皆仲良く出来ないのだろうと頭を抱えていた。
3人はホグワーツのローブに着替えた。ハリーとアイのは新品で黒く光っていたが、ロンのは少しくすんだ色をして、丈があっていなかった。
汽車は徐々に速度を緩め停車した。3人は慌ててぞろぞろと並んだ生徒たちの列に紛れ込んだ。
「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー、アイ元気か?」
ハグリッドの大きな髭面が、ずらりと揃った生徒の頭の向こうから笑いかけた。
それからは、暗い小道を黙々と歩いていった。