賢者の石
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遂にホグワーツへ向かう日がやってきた。アイは不安と期待で胸を一杯にしながら、キングズ・クロス駅に到着した。駅の中は多くのマグルと魔法使いでごった返していた。と言っても、9割はマグルのようだったが、チラホラアイと同じような大荷物を持った家族が歩いていた。アイは父と母と暫しの別れを悲しんだ。今まで、ずっと一緒に過ごしてきたから、こんなに会わないのは初めてのことだ。今のところ、ホグワーツには知り合いがいない。そこまで考えて、アイは首を振った。忘れるところだった。この間ダイアゴン横丁で出会った大男、ハグリッドという知り合いがいるではないか、少し気が楽になった。それに、父の言うには古くからの友人であり後輩の魔法薬学の先生がいるらしい。何かあればその先生を頼りなさい、私の名前を出せばきっと助けになってくれるだろうと父はアイに助言をしてくれていた。
アイは深呼吸をする。これから、目では見ることのできないプラットホームへ向かわなくてはならない。9と3/4番線だ。そこから、ホグワーツ行の汽車が出るらしい。父は9番線と10番線の柱に向かって走るようにと話した。アイは半ば信じられなかったが、目の前で赤毛の少年が柱に向かって走り、消えたのを見て、信じざるを得なくなった。
アイはもう一度深呼吸をし、柱に向かって走った。柱が近付くにつれ、怖くなり目を閉じた。そのまま、進むと柱にぶつかる衝撃には迎えられず、代わりににぎやかな声に包まれた。目を開けると、先程はなかった大きな蒸気機関車が停まっている。後ろを振り返ると父と母が立っており、その後ろには9・3/4と書かれたアーチが見えた。
家族と別れを惜しむ生徒らしき人がたくさんいた。アイも一通り、両親と言葉を交わし汽車に乗り込んだ。空いているコンパートメントを探したが、なかなか見つからず、後ろの方までやってきた。最後の方のコンパートメントに男の子が一人で乗っているコンパートメントを見つけ、ここにお邪魔させてもらおうとアイは外を眺めている男の子に声をかけた。
「あのーすみません。ここ、一緒に座ってもいいですか?」
窓の外からアイの方へと視線を動かした眼鏡をかけた男の子は静かに頷いた。あーよかった。内心断られるのではないかとびくびくしていたアイは安堵し、彼の前に座り、彼と同じように窓の外を眺めた。
暫くしてコンパートメントの戸が開いて、赤毛のひょろっと背の高い男の子が入ってきた。
「ここ空いてる?」
どちらに声をかけているのかはわからなかったが、アイは静かに頷いた。
「他はどこもいっぱいなんだ」
そう呟くと、眼鏡の男の子も頷いたのを確認して、赤毛の男の子は眼鏡の男の子の横に腰掛けた。
暫くしてまたコンパートメントの戸が開いた。
「おい、ロン」
アイが声の方に視線を向けると、なんと、瓜二つの顔の男の子が2人立っていた。恐らく双子なのだろう2人は、先程入ってきた赤毛の男の子と同じ赤毛をしていた。兄弟かな?ロンというのはこの赤毛君の名前だろうか、などと考えていると、赤毛の男の子が双子に何やら「わかった」と返事をしていた。
やはり、この赤毛の彼がロンと言うらしい。
「ハリー」
双子の1人がアイの前に座っている少年に声をかけた。今、ハリーと言ったのだろうか。もしかして、あのハリーだろうか、と思いを巡らせているアイに双子の1人が声をかけた。
「可愛いお嬢さん、見慣れない顔だね。新入生だね。」
「ハリーにも自己紹介はまだだったっけ?僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。君の名前は?」
双子が立て続けに話す。本当に全く同じようにしか見えない。弟だというロンは見分けがつくのだろうか。
「私、アイ・ブラウンと言います。今年から1年生です。よろしくお願いします。」
「よし!アイにハリー!じゃあまたあとでな!」
アイが自己紹介をすると双子は太陽のような笑顔を見せた。
「バイバイ」
3人が答えると、双子はコンパートメントの戸を閉めて出ていった。
「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」
沈黙を崩すようにロンがポロリと言った。アイは1番聞きたかったことをロンが聞いてくれたことに、心の中で感謝した。
ハリーはこっくりした。
「ふーん・・・・そう。僕、フレッドとジョージがまたふざけてるんだと思った。じゃ、君、本当にあるの・・・ほら・・・」
ロンはハリーの額を指さした。ハリーは前髪を掻き上げて稲妻のような傷跡を見せた。本当に彼の額には傷跡があった。彼が紛れもない、ハリー・ポッターである証拠だ。
「痛む?」
アイがハリーに尋ねると、ハリーは首を振って笑った。
「今は痛むことはないよ」
ロンは少し言いにくそうに小さい声で
「それじゃ、これが『例のあの人』の?」
と尋ねた。
「うん、でもなんにも覚えてないんだ」
「なんにも?」
ロンとアイは熱っぽくハリーに聞いた。
「そうだな・・・緑色の光がいっぱいだったのを覚えてるけど、それだけ」
そうハリーが苦笑した。アイはハリーが何も覚えていないことを気にしているようにも見えた。
「それってハリーがまだ赤ちゃんだったくらい小さい時のことでしょう?覚えていなくて当然だわ。」
アイがそう伝えると、ハリーはそうだよねと笑った。