賢者の石
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ホグワーツ魔法魔術学校への入学の日が近付く中、アイはイギリスに来ていた。もちろん、父と母も一緒に来ている。今年の夏休みはアイのために、長く休暇を取った父と母と旅行を楽しみ、いよいよ入学準備を始めたのだ。
ロンドンには魔法を使わず、飛行機に乗りマグルさながらやってきた。もっとも、アイは魔法を使って移動をしたことはない。ましてや、呪文を使うことや箒に乗ることもしたことがない。父と母から固く禁じられていたのだ。早く入学したかった理由は、そこにもあった。魔法を使ってみたかったのだ。入学したらすぐに使えるように、両親の書斎の本を読み漁り、知識だけは大量に仕入れた。
アイはホグワーツから届いた手紙を開いた。そこには、入学に必要な物品が書かれている。制服や教科書、その他の学用品の名前がずらりと書かれている。これを全部揃えるとなるとくたびれそうだ。そんなことを思っていると、父がアイの肩を叩いた。
「さあ着いたぞ。ダイアゴン横丁だ。」
そこには魔法使いのローブを着た人達が行き交っていた。アイは今にも走り出したい解放感を覚えた。店が所狭しと並ぶ中、アイはイーロップのふくろう百貨店に目が行った。そこには、白ふくろうを購入する、大男がいたのだ。2mは優に超えた身長の男に呆気にとられていると、隣にいたはずの両親がその男性に近付いていくのが見えた。
「やあ、ハグリッド!」
父にハグリッドと呼ばれた大男は振り返り、アイの父とハグをした。
「やあ、久しぶりじゃねえか。お前さんとこの娘も今年ホグワーツに入学だそうだな。」
「あぁ、そうなんだよ。おいで!アイ」
その場から動けず、離れたところから見守っていたアイを父は呼び寄せた。
「ハグリッド。うちの娘のアイだ。」
「君がアイ・ブラウンか。俺はホグワーツの森の番人をしておるハグリッドじゃ。」
「は、初めまして。アイ・ブラウンです。父がお世話になっております。」
そう挨拶すると、ハグリッドは笑い始めた。
「さすが、お前さんの娘じゃ。礼儀がしっかりしておる。きっとお前さんのように立派な魔女になるじゃろう。」
アイはハグリッドに褒められ、顔が熱くなるのを感じた。そして、その言葉通り、立派な魔女になろうと意気込んだ。
しばらく、父と談笑をしていたハグリッドは何かを思い出したように声を上げた。
「おおっといっけねえ!ハリーを待たせておるんじゃった!」
今、ハグリッドはハリーと言っただろうか。ハリーとはあのハリー・ポッターのことだろうか。父もアイと同じように考えていたようで、今にも走り出しそうなハグリッドを引き留める。
「ハリー・ポッターが来ているのかい?ハグリッド!」
「そうさ、ハリーはマグルの家に預けられておったことはお前さんも知っておろう。そんなハリーも今年ついにホグワーツに入学することになってな。それじゃあ。アイもまた学校で。」
そう言ってハグリッドは人を掻き分け人混みへと去って行った。
「ハリー・ポッター会いたかったなあ。」
アイは無意識に呟いていた。父はアイの頭に手を置き、笑った。
「またすぐに会えるさ。」
父もハリー・ポッターに会いたかったに違いない。父は何て言ったってハリー・ポッターを崇拝していた。よくアイにハリーの父と母は優秀だったのだと話して聞かせた。2人とは友人であり、悪に立ち向かう仲間だったのだと。そして、毎年、あの恐ろしい日、ハリーの父と母が亡くなった日、つまり、例のあの人にハリーが勝った日には、家族で追悼の祈りを捧げてきた。
その当時、父と母がどのようにポッター家と関わり、例のあの人と関わっていたのかは詳しくは教えてもらえなかった。いずれ、時が来たら話すと。アイも深くは聞かなかった。
ことあるごとに名前の聞くハリー・ポッターへの憧れは募る一方で、どんな魔法使いなのだろうと何度も思案を重ねたものだ。そして、いつしか彼はアイの目標となっていた。
ハグリッドの話によるとそんな彼も今年ホグワーツに入学するらしい。是非とも、お近付きになりたい。アイはより一層、ホグワーツへの期待を膨らませるのだった。