賢者の石
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ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。小屋をノックすると、中からメチャメチャに戸を引っ掻く音と、ブーンと唸るような吠え声が数回聞こえてきた。
「退がれ、ファング、退がれ」
ハグリッドの大声が響いた。戸が少し開いて、隙間からハグリッドの大きな髯モジャの顔が現れた。
「待て、待て、退がれ、ファング」
とハグリッドが言った。ハグリッドは巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、アイたちを招き入れた。中は一部屋だけだった。
「くつろいでくれや」
ハグリッドがファングを離すと、ファングは一直線にロンに飛びかかり、ロンの耳をなめはじめた。ハグリッドと同じように、ファングも見た目と違って、まったく恐くなかった。
ファングは、次に、アイの膝の上に、嬉しそうに乗った。ずっしりとしたファングの重さに、アイは少し顔をしかめた。
「彼はロンです」
とハリーが紹介した。ハグリッドは大きなティーポットに熱いお湯を注ぎ、ロックケーキを皿に乗せた。
「ウィーズリー家の子かい。え?」
ロンのそばかすをチラッと見ながらハグリッドが言った。
「おまえさんの双子の兄貴たちを森から追っ払うのに、俺は人生の半分を費やしてるようなもんだ」
「まあ!フレッドとジョージは禁じられた森にも足を踏み入れているのね」
アイが呆れたように笑った。
「ダメだと言われることは大抵やってるさ」
ロンが呆れたように言った。
ロックケーキは歯が折れるくらい固かったけれど、三人ともおいしそうなふりをして、食べた。
ハリーはスネイプの授業のことを話した。ハグリッドはアイやロンと同じように、気にするな、スネイプは生徒という生徒はみんな嫌いなんだから、と言った。
「でも僕のこと本当に憎んでるみたい」
「ばかな。なんで憎まなきゃならん?」
そう言いながら、ハグリッドはまともにハリーの目を見なかった、と、ハリーにはそう思えてならなかった。
「チャーリー兄貴はどうしてる?」
とハグリッドがロンに尋ねた。
「俺は奴さんが気に入っとった――動物にかけてはすごかった」
アイはハグリッドがわざと話題を変えたような印象を受けた。
ロンがハグリッドに、チャーリーのドラゴンの仕事のことをいろいろ話している間、アイはテーブルの上のティーポット・カバーの下から、一枚の紙切れを見つけた。「日刊予言者新聞」の切り抜きだった。
汽車の中でハリーとロンが話していたことを思い出した。物憂げな表情のハリーの肘のあたりをつついた。
「どうしたの?アイ」
とハリーが尋ねた。
アイは静かに、日刊予言者新聞を指さした。
グリンゴッツ侵入さる 七月三十一日に起きたグリンゴッツ侵入事件については、知られざる闇の魔法使い、または魔女の仕業とされているが、捜査は依然として続いている。 グリンゴッツの小鬼たちは、今日になって、何も盗られたものはなかったと主張した。荒された金庫は、実は侵入されたその日に、すでに空になっていた。「そこに何が入っていたかについては申し上げられません。詮索しない方が皆さんの身のためです」と、今日午後、グリンゴッツの報道官は述べた。
「ハグリッド!グリンゴッツ侵入があったのは僕の誕生日だ!僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!」
とハリーが言った。
今度はハグリッドがハリーからはっきり目をそらした。
「そういや、組分けでアイの名前が無かった時は驚いた」
とハグリッドはアイに話を振った。アイは組分けの儀式を思い出した。なぜ、自分の名前は呼ばれなかったのか、あんなにもホグワーツに入学させることを、夢に見ていた父が入学を取り消すなど有り得ないはずだった。いくら考えても、答えは出そうになかった。怖くて今まで聞かなかったが、今度手紙で聞いてみようとアイは思った。
夕食に遅れないよう、ハリーとロン、アイの三人は城に向かって歩きだした。ハグリッドからもらった、ロックケーキでポケットが重かった。これまでのどんな授業よりもハグリッドとのお茶会が、一番ハリーを悩ませた。城に帰る間、ハリーは一言も話さなかった。そんなハリーをアイは心配そうに見つめた。