賢者の石
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グリフィンドール生はみんな立ち上がってアイがやってくるのを迎えた。監督生パーシーはアイに握手を求めた。アイはパーシーの手を強く握った。他の生徒たちも拍手やハイタッチでアイを迎えた。赤毛の双子はピューッと口笛を吹き歓迎した。ハリーとロンも立ち上がり、満面の笑みと拍手で迎えた。アイはハリーとロンを見ると駆け出し2人に抱き着いた。ハリーは励ますように頭を撫でた。ロンは髪の毛と同じ色になるくらい顔を真っ赤にし固まっていた。
「おい、相棒、見たか?ロニィ坊やの顔」
「おう、これは面白い学校生活が始まりそうだ」
双子はニヤリとしながら3人を眺めた。
アイが席に着くと双子はロンに話しかけた。
「ロニィ坊や、良かったなあ。お姫様と同じ寮になれて」
「学校でロニィ坊やって呼ぶなよ!」
さらに顔を真っ赤に染めるロン。
「入学早々帰されちゃうのかと思ったわ」
近くに座っていたハーマイオニーが話に参加した。
「本当に、私もびっくりしちゃった」
「今年のグリフィンドールは面白くなりそうだ、有名なハリー・ポッターに、余りもののアイ・ブラウン、そしてお姫様に首ったけのロニィ坊や」
茶化すように双子のフレッドが言った。
「まあ!ロンのお兄さんは失礼な人ね!余りものなんて!でも、日本では余りものには福があるって言うんだからね!今年のグリフィンドールには幸福がもたらされるはずよ」
双子は顔を見合せて笑った。
「聞いたかい?相棒」
「ああ、聞いたさ」
「「ますます楽しみだ」」
息ぴったりの双子にアイとハリーは笑った。ロンはまだ顔を赤らめていた。
アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。腕を大きく広げ、みんなに会えるのがこの上もない喜びだというようにニッコリ笑った。
「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」
ダンブルドアは席につき、出席者全員が拍手し歓声をあげた。ハリーは笑っていいのか悪いのかわからなかった。
「あの人ちょっぴりおかしくない?」
ハリーはパーシーに聞いた。アイは横から聞き耳を立てていた。
「おかしいだって?」
パーシーはうきうきしていた。
「あの人は天才だ!世界一の魔法使いさ!でも少しおかしいかな、うん。君たちポテト食べるかい?」
ハリーは呆気にとられた。アイは目の前のご馳走に心を躍らせた。
「おいしそうですね」
アイがステーキを切り分け、ハリーとロンとハーマイオニーのお皿に配っているとひだ襟服のゴーストが悲しげに言った。
「食べられないの?」
とハリーがゴーストに聞いた。
「かれこれ、500年食べておりません。もちろん食べる必要はないのですが、でもなつかしくて。まだ自己紹介しておりませんでしたね。ニコラス・ド・ミムジー ポーピントン卿と言います。お見知り置きを。グリフィンドール塔に住むゴーストです」
「僕、君のこと知ってる!」
ロンが突然口を挟んだ。
「兄さんたちから君のこと聞いてるよ。『ほとんど首無しニック』だ!」
「むしろ、呼んでいただくのであれば、ニコラス・ド・ミムジー…」
とゴーストがあらたまった調子で言いかけたが、黄土色の髪のシェーマス・フィネガンが割り込んできた。
「ほとんど首無し?どうしてほとんど首無しになれるのん」
ニコラス卿は会話がどうも自分の思う方向には進んでいかないので、ひどく気に障ったようだった。
「ほら、このとおり」
ニコラス卿は腹立たしげに自分の左耳をつかみ引っ張った。頭が首からグラッとはずれ、蝶番で開くように肩の上に落ちた。誰かが首を切ろうとして、やりそこねたらしい。生徒たちが驚くので「ほとんど首無しニック」はうれしそうな顔をして頭をヒョイと元に戻し、咳払いをしてからこう言った。
「さて、グリフィンドール新入生諸君、今年こそ寮対抗優勝カップを獲得できるようがんばってくださるでしょうな?グリフィンドールがこんなに長い間負け続けたことはない。スリザリンが6年連続で寮杯を取っているのですぞ!『血みどろ男爵』はもう鼻持ちならない状態です…スリザリンのゴーストですがね」
アイがスリザリンのテーブルを見ると、身の毛もよだつようなゴーストがマルフォイのすぐ隣に座っていた。マルフォイがその席をお気に召さない様子なのでアイはマルフォイを気の毒に思った。ハリーがマルフォイの様子を見て少しうれしく思っていると、マルフォイがこちらへ目を向けた。
ハリーは慌てて目を逸らしたが、逸らす直前に見えたマルフォイの様子を見て自分を見ていたのではなかったと気付いた。マルフォイはハリーの横に座ったアイを見ていた。そして、目が合ったアイが笑顔でマルフォイに手を振り、マルフォイもまた優しい顔で手を振ったのだ。ハリーは心底驚いた。2人はハリーの気付かぬ間に仲良くなっていたようだ。
食事が無くなると次は大皿に様々なスイーツが並んだ。デザートを食べながら家族について話したり授業について話したりと楽しく過ごした。
突然何かが起こった。鉤鼻のスネイプ先生がクィレル先生のターバン越しにハリーと目を合わせたとたん、ハリーの額の傷に痛みが走った。
「イタッ」
ハリーはとっさに手でパシリと額を覆った。
「ハリー!どうしたの?傷が痛むの?」
アイがハリーの顔を心配そうに覗き込んだ。パーシーも「どうした?」と声をかけた。痛みは急に走り急に消えた。
「な、なんでもないよ」
あの目つきから受けた感触は簡単には振り払えなかった。あの目はハリーを大嫌いだと言っていた…。
とうとうデザートも消えてしまい、ダンブルドアがまた立ち上がった。広間中がシーンとなった。
「エヘンー全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。1年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒たちに特に注意しておきます」
ダンブルドアはキラキラッとした目で赤毛の双子のウィーズリー兄弟を見た。
「管理人のフィルチさんから授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました」
「今学期は2週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください」
「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい4階の右側の廊下に入ってはいけません」
ハリーは笑ってしまったが、笑った生徒はほんの少数だった。
「まじめに言ってるんじゃないよね?」
ハリーはパーシーに向かって呟いた。
「いや、まじめだよ」
パーシーがしかめ面でダンブルドアを見ながら言った。
「そこに何があるの?」
アイはパーシーに尋ねた。
「どこか立入禁止の場所がある時は必ず理由を説明してくれるのに…森には危険な動物がたくさんいるし、それは誰でも知っている。ただ、今回のことは理由を聞かされていないんだ。せめて僕たち監督生にはわけを言ってくれてもよかったのに」
「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」
ダンブルドアが声を張りあげた。アイには他の先生方の笑顔が急にこわばったように見えた。
「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」
学校中が大声で唸った。
みんなバラバラに歌い終えた。とびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟が最後まで残った。ダンブルドアはそれに合わせて最後の何小節かを魔法の杖で指揮し、2人が歌い終わった時には、誰にも負けないぐらい大きな拍手をした。
「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ」
感激の涙を拭いながらダンブルドアが言った。
「さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」
グリフィンドールの1年生はパーシーに続いてペチャクチャと騒がしい人込みの中を通り、大広間を出て大理石の階段を上がった。
隠しドアを通り抜け階段を上っていくと突然パーシーが立ち止まり、みんなその場に立ち止まった。前方に杖が1束、空中に浮いていた。パーシーが1歩前身すると杖がバラバラと飛びかかってきた。
「ピーブズだ」
とパーシーが1年生に囁いた。
「ピーブズ、姿を見せろ。『血みどろ男爵』を呼んできてもいいのか?」
ポンと音がして、意地悪そうな暗い目の、大きな口をした小男が現れた。
「おおぉぉぉぉ!かーわいい1年生ちゃん!なんて愉快なんだ!」
小男は意地悪なかん高い声を上げ、1年生めがけて急降下した。みんなはひょいと身を屈めた。
パーシーはピーブズに怒鳴った。ピーブズは舌をベーッと出し、杖をネビルの頭の上に落とすと消えてしまった。
「ピーブズには気をつけたほうがいい」
再び歩き出しながらパーシーが言った。
「さあ着いた」
廊下のつきあたりには、ピンクの絹のドレスを着たとても太った婦人(レディ)の肖像画がかかっていた。
「合言葉は?」
とその婦人が聞いた。
「カプート ドラコニス」
パーシーがそう唱えると、肖像画がパッと前に開き、その後ろの壁に丸い穴があるのが見えた。穴はグリフィンドールの談話室につながっていた。心地よい円形の部屋で、ふかふかした肘掛椅子がたくさん置いてあった。
パーシーの指示で、女子は女子寮に続くドアから、男子は男子寮に続くドアからそれぞれの部屋に入った。深紅のビロードのカーテンがかかった、4本柱の天蓋つきベッドが5つ置いてあった。トランクはもう届いていた。くたくたに疲れてしゃべる元気もなく、みんなパジャマに着替えてベッドに潜り込んだ。
「これからよろしくね、アイ」
ハーマイオニーがカーテン越しにアイに話しかけた。
「こちらこそ、よろしくね、ハーマイオニー」
一時は入学出来ないかと思ったが、無事ホグワーツの寮で眠れることをアイは嬉しく思った。今日1日でいろんな人に出会い、いろんなことがあったと思い返しているうちに、眠気が襲いかかった。アイはハーマイオニーの猫がニャーオと鳴くのを聞きながら意識を手放した。