俺の言葉を遮った人物は食堂の入り口に仁王立ちをしている。
普段、あまり見ない表情の彼に俺達は少し驚く。
「……げっ、伊作」
バツの悪そうな文次郎にずんずんと近寄り、隣に座る伊作。
「……文次郎、どういう事なの？」
「いや、それは、その、本人の意思を尊重してだな――――」
「本人の！？意思！？」
伊作の大きな声に文次郎は黙る。突然の出来事に俺達はただ呆然とするしかない。沈黙に包まれる食堂。
「と、とりあえず落ち着けって伊作。ほら、まだ飯取ってきてないだろ、早くしないと冷めちまうぞ」
俺の言葉に伊作は黙って席を立ち、朝食を取りに行く。
「おい、文次郎。あそこまで伊作を怒らすとは何をしたんだ？」
すかさず仙蔵が口を開いた。そう、確かに温厚な伊作が怒る事はあまりない。それを怒らすとは何をしたのか俺達ですら気になる。
「いや、それがだなぁ……実は先ほど言った新しい会計委員会のメンバーが――――」
「もともとは保健委員会に入る予定だったんだよ」
途中から言葉を遮り伊作が席に着く。
「……すまん、伊作！！」
机に頭を下げる文次郎。珍しく素直な文次郎なだけに、伊作に対して悪いという気持ちがあったのだろう。
「別に本人が自分で決めて会計委員会に入ったんだからそれは怒ってないよ。僕が怒ってるのは別の事」