食満留三郎
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あたしは八の言葉に歩みを止めた。
「標的が分かった所で、どうするんだ?」
あたしの十丈程離れた場所に立つ食満先輩が、振り返りながら問い掛けてくる。食満先輩の後ろには塀。その塀にはもたれ掛った状態で座り込んでいる八。既に意識は無いようだ。
「まぁ、奪い取るしかないですよね」
あたしの言葉に食満先輩は顔をしかめる。
「女相手にあんまり荒っぽい事はしたくねぇんだが」
「八の現状を見て、あたしはくのたまで本当に良かったと思いますよ」
八が随分と死力を尽くしてくれたみたいだけれど、残念ながらその労力のほとんど無駄だったようだ。けれどそんな事を考えている場合では無い。あたしは頭の中を精一杯回転させる。まずこの課題は相手を倒す事が目的では無い。標的から絵巻物を奪う、それが目的だ。従って絵巻物を奪ったその時点で勝敗は決まる。奪った後の事や逃げる事等は、考える必要は無いという事だ。つまり、後先を考えず捨て身の覚悟で一瞬の隙さえ作ってしまえば勝てるという話だ。しかし、六年生相手に一瞬の隙を作る事がどんなに難易度の高い事やら。
「おーい、千代。諦めた方がいいぞ」
軽い調子で掛けられた声。その声の主は遠くから見物をしている三郎だ。
「この状況じゃ、お前は食満先輩から絵巻物は奪えない」
「今、一生懸命に考えてる所なんだけど」
「なら、良い案でも浮かびそうなのか?」
三郎の言葉にあたしは答えられない。ここにいる全ての人間が三郎の意見に同意していた。もちろん、その中にあたし自身も含まれる。
「標的が分かった所で、どうするんだ?」
あたしの十丈程離れた場所に立つ食満先輩が、振り返りながら問い掛けてくる。食満先輩の後ろには塀。その塀にはもたれ掛った状態で座り込んでいる八。既に意識は無いようだ。
「まぁ、奪い取るしかないですよね」
あたしの言葉に食満先輩は顔をしかめる。
「女相手にあんまり荒っぽい事はしたくねぇんだが」
「八の現状を見て、あたしはくのたまで本当に良かったと思いますよ」
八が随分と死力を尽くしてくれたみたいだけれど、残念ながらその労力のほとんど無駄だったようだ。けれどそんな事を考えている場合では無い。あたしは頭の中を精一杯回転させる。まずこの課題は相手を倒す事が目的では無い。標的から絵巻物を奪う、それが目的だ。従って絵巻物を奪ったその時点で勝敗は決まる。奪った後の事や逃げる事等は、考える必要は無いという事だ。つまり、後先を考えず捨て身の覚悟で一瞬の隙さえ作ってしまえば勝てるという話だ。しかし、六年生相手に一瞬の隙を作る事がどんなに難易度の高い事やら。
「おーい、千代。諦めた方がいいぞ」
軽い調子で掛けられた声。その声の主は遠くから見物をしている三郎だ。
「この状況じゃ、お前は食満先輩から絵巻物は奪えない」
「今、一生懸命に考えてる所なんだけど」
「なら、良い案でも浮かびそうなのか?」
三郎の言葉にあたしは答えられない。ここにいる全ての人間が三郎の意見に同意していた。もちろん、その中にあたし自身も含まれる。