後輩の面倒見も良い。その人の良さが災いして、巻き込まれ型の不運。そんな相手と戦っている俺。
「おいおい、竹谷。もうお終いか？」
けれど俺の目の前に立つ人物は、ボロボロの俺を見て涼しげに笑っていた。なまじ端正な顔立ちのせいで、その笑顔は随分と鬼畜そうに見えてしまう。
―――何が後輩に優しいんだよ、低学年限定じゃねぇか。
心の中で悪態をつく。俺は地面に着いてしまった片足に力を入れ、立ち上がった。
「……いや、まだまだですよ、食満先輩」
「そうか、安心したぜっ！」
言葉と同時に強い衝撃。さらに浮いた身体は壁に叩きつけられた。
「ふむ、綺麗に蹴りが入ったな。」
「……チッ、竹谷！もっとヤル気を見せろっ！」
一瞬飛び掛けた意識が、六年い組の二人の声で何とか思い止まる。けれど頭はクラクラとするし、身体に力が入らない。潮江先輩の言葉に食満先輩は何やら言い返しているようだが、頭の中に入ってこない。今回の戦いで得たものは、絵巻物を持っているのが食満先輩だったと分かった事ぐらいだ。有益な情報を手に入れたが、失った体力が大き過ぎる。残念な事に後は任せるしかないみたいだな。
「―――標的はこっちだ、千代」
俺の視界に千代の姿が映った瞬間、意識が暗転した。