1章
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「食わないんですか?姫様」
ハクは焼き魚をヨナに差し出すが、ヨナはそれを手に取ろうとしない。
『魚が嫌でしたら、鳥でも捌きましょうか?』
他の食事なら反応してくれるかと思ってカナはヨナに聞いてみるが、ヨナは目が虚ろで無反応のまま。
「…少しでも食べた方が良いですよ。ここから先山道がさらに険しくなる。食糧が確保できるかわからない、ここは魚があるだけマシだ」
『姫様、水浴びしましょう。汚れたままでは気分も良くなりませんし』
カナは泥などで汚れているヨナを見て、食事を取らないならせめて少しでも清潔に保とうとヨナを連れて川辺に行く。
濡れた服で過ごすわけにはいかないので、カナは羽織りだけ着てヨナと一緒に川に入る。時間が経つにつれてどんどん弱ってゆくヨナを見て、カナはどうしたらいいか考えならヨナの髪を洗っていく。
「あ…」
――バシャッ
『ハク!大丈夫だからこっち向くな!』
足についた
「何…これ…」
『蛭です。じっとしてください、これは池や沼に住み血を吸うんですよ』
カナはヨナの足から一匹ずつ蛭を取っていく。
「血…」
『大事には至りません、安心してください…。さぁ、あまり浴びすぎても風邪を引きますから、もうそろそろ服を着ましょう』
「満足か…?」
その頃ハクは、食事もせずにただ自分やカナに手を引かれて歩くだけのまるで人形のようなヨナを見て、共に過ごした日々も、大事にしていた姫さんも全てを壊して、お前はそれで満足なのか?とスウォンを思い浮かべ、奥歯を噛み締めていた。
――カラン
ハクが地面に落ちていた物を拾う。それは宴の時スウォンがヨナに渡した簪だったのだ。ハクは難しい顔をした後、
――ベシッ
しゃがんでいたハクにカナは頭を軽く叩く。
「…何すんだ」
『さっきこっちに来そうになった時、姫様の姿見えたでしょう?いつもの姫様なら殴ると思うから代わりに私が殴ったのよ』
「あー、なるほどな」
カナもハクの前でしゃがみ目線をハクに合わす。
『ハク、一人で抱え込まないで。私もいる』
カナは絶対一人にしないとハクを見る。ハクはそんなカナの赤い眼を見た後、フッと笑いカナの頭を撫でながら立ち上がる。
「…ありがとな」
ハクはヨナのもとへ行き、カナもハクの言葉に微笑んだ後、ハクに続いてヨナのもとへ行ったのだった。
「ヨナ姫、先を急ぎましょう。日が沈む前に距離を稼がなくては」
空を見上げていたヨナはハクの言葉に振り向き、三人でまた歩き出す。
――夜
「今日はここで休みましょう」
『ここの虫は害がないので大丈夫ですよ。蛭はさっきの池に落としましたし…』
虫を見ていたヨナにカナは声を掛ける。
胸元を触ってヨナは簪がなくなってることに気付き、少し絶望した目になる。
「どうしました?何か、落とし物でも…?」
ハクがそんなヨナに声を掛けるが、ヨナはスウォンからもらった簪を落としたなんて言えなくて首を横に振る。カナはヨナを見て心配した顔になる。
いらない、あんなもの絶対にいらない。ヨナはそう思っていたが、どうしてもスウォンからもらったあの簪を忘れることができず、探しに行こうと立ち上がる。
「どこへ?」
ハクはヨナの手を握って問う。
「あ…、あの…。私ちょっと…」
「早く帰って来て下さいよ」
戸惑って声を出すヨナに、ハクは便所だと思い手を放す。
『暗いので私も一緒に行きますか?』
「い…、いや…、大丈夫…」
『…わかりました、お気を付けて』
一人になりたいときもあるだろうとカナは思い、ヨナに付いて行くのをやめた。
ヨナは必死に探していた。スウォンの優しい笑顔や赤く血に染まった父親の姿、暗い森の中で色々思い出しながら。そんな時、ヨナの近くに蛇がいたのだった。
一方カナとハクは、
『……ハク、なんで姫様に簪を拾ったって言わなかったの?』
「なんとなく、返したくなかったんだよ」
『そっか…』
カナはなんて言えばいいか分からず、二人の間に沈黙が流れる。
「にしても、姫さんおせぇな」
『そうだね、私見に行ってくるよ』
「いや、俺も行く」
二人は立ち上がり最初は歩いてヨナを探したが、なかなか見当たらず、焦る気持ちが増し二人は走り出した。二手に分かれ、探し始めた。
「いや…あ…」
ハクがヨナの声を聞き、大刀を蛇に刺してヨナを守った。
「無事か!?なかなか戻らないと思ったら、どうしてこんな所まで!?この蛇は毒を持っている。暗闇では足を滑らせて転落するかもしれない、そんな場所を一人で…!死にたいのか!?」
ハクはヨナの肩に手を置いて怒る。そんなハクの迫力にヨナは少し怖がった。
『姫様!ハク!』
カナは声を聞きつけ、ハクたちのもとへ来た。
「『!!』」
カナ達の周りには大量の蛇が群がっていた。
「くそ…、巣窟かよここは」
『私が道を作る!』
ハクはヨナを姫抱っこにして抱え、カナは蛇を長剣で薙ぎ払いながら道を作ろうする。しかし、あまりの量に対応しきれず、ハクは左足をカナは右腕を噛まれた。
「つ…」
足を噛まれたことにより少しフラついたハクをヨナは心配した顔をする。
「ち…、上等だ。黙ってしがみついてな、お姫さん。俺達を道具だと思えばいい。陛下がいない今、俺達の主はあんただ」
『あなたが生きる為に私達を使ってください』
『「私達(俺達)はその為にここにいる」』
なんとか群れから逃げ出したカナ達。蛇の毒が辛くて汗をかきながら処置をしているカナとハクを見てヨナは心配した顔をする。
『大丈夫ですよ。毒蛇に噛まれた時の対処法くらい知ってますから』
そんな様子を見ていたカナは心配いらないと笑顔で話す。
ハクは懐から簪を出してヨナの前に出す。
「姫様のお探しの物はこれか?」
ヨナは震えた手で簪を受け取り、大事に持った。
「俺は、スウォンを許さない。だが、それ以上に俺はあんたに生きて欲しい」
『もちろん、私もハクと同じ気持ちです。どうか生きてください、姫様』
何でもいい、今はヨナを繋ぎとめられるのなら、たとえそれが未だ捨てきれない想いでも構わないとカナとハクは思ったのだった。
――次の日
ヨナは目を覚ました。横を向けばハクはまだ寝ており左足に触ろうとする。
「平気ですよ」
ハクもまた目を覚ましていたのだ。
「蛇に噛まれたくらいでどーにかなるハク将軍じゃありません。さて、起きたらすぐ行きますか」
「ハク…、まだカナは起きていないわ」
「…起きろカナ」
ヨナはハクとは反対の隣で寝ていたカナに目を向ける。ハクは思うところはあるがこのまま居ても意味がないと思い、カナを揺すって起こす。
『っん…』
カナはボーっとした顔で起きる。ハクはそんなカナの頭をグシャグシャ撫でる。
「起きろ、行くぞ」
『うん…。おはようございます、姫様』
カナは覚醒したようで、ヨナに挨拶する。
「おはよう、カナ。あ…あの、ハク」
「はい?」
「どうして…山を行くの…?どこかの里に下りて食べ物とか薬を…」
「人里は危険です。たとえ村人が俺らの顔を知らなくても、城の兵はどこにいるとも知れない」
『スウォンが人相書きなんぞ出してるかもしれませんしね』
ハクとカナは武器の準備をしながらヨナの質問に答える。
「じゃあ…、今どこへ向かってるの…?」
「恐らく、いま俺らにとって唯一頼れる場所…」
『風の部族、