1章
夢小説設定
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『姫様、どうか一口だけでも…』
「ほしくない」
「ヨナ、少しは食べないと」
「姫さん、ますます不細工になんぜ」
ヨナはご飯を全く食べようとせず、ハクの悪口にも反応しないヨナに三人は困った顔になる。
そんな時、部屋の外から声が聞こえた。
「陛下はお見えになってないのか?」
「ええ、姫様の事はお伝えしたのですが…」
「あの御方の事だ、病を怖れて我が娘にすら近づけないのではないか?」
ヨナは従者の言葉に泣きそうになるが、
「黙りなさい!!」
スウォンが大声で叱責する。
「王は王だからな。こんな時にちゃんと仕事してんだから俺は、あのおっちゃんの事見直してんぞ」
『陛下は姫様の事をとても大事に思っていますよ。ただ、今はタイミングが合わないだけです』
すかさずハクが言葉を紡ぐ。
スウォンは風邪を引いてることを忘れ大声を出したことにより、のどを痛め唸っていた。そんなスウォンにカナは飲み物を渡しながら、ヨナに声を掛ける。
「……うん」
三人の言葉に元気をもらったヨナは口元を緩ませたのだった。
「今日は四人くっついて寝ましょー」
「来んな、病がうつる」
『もう病人でしょ?それは私のセリフじゃない?』
「お前は風邪引いたことねぇだろ」
くっついて寝ることはしなかったが、四人で並んで寝たのだった。
――ぐううぅぅ
「あ、ヨナお腹空きました?」
『では、私が何か頼んで持ってきますね』
「でっかいぐぅだな」
カナは、ヨナがハクの言葉に腹が立ち頭を殴る姿を背に部屋を出て行った。
通りがかった女官に夜食を作ってほしいと頼み、一緒に調理場に行こうとした時、イルがこちらに向かって来ていた。
『陛下、姫様の様子を見に来られたのですね』
「そうなんだが、こんな時間まで会いに行けなかったから何かしたいと思うのだが…」
イルは眉を下げ、ヨナに何かしてあげたいとカナに言った。カナは少し考えた後、提案した。
『では、夜食を作ってみてはいかがですか?夜食を食べたいのは姫様ですので』
「そうだな…」
不安げな顔でイルはカナと調理場へと行ったのだった。
『姫様、持ってきましたよ』
カナは鶏粥を作ったのはイルだということを伏せてヨナの前に出した。
「…びっくりするほどまずい」
ヨナは大好きな鶏粥に目を輝かせたが、一口食べたヨナは目を大きく見開き、あまりのまずさに自分の舌が変なのかさえ疑い始めた。
「そうか、まずいか…」
「父上!?」
ヨナの言葉を聞いたイルは、申し訳なさそうに部屋に入ってきた。
「それ私が作ったんだよ」
「どうして父上が…」
「どうしても気になって、ヨナの様子を見に来たんだ。そしたら、カナからヨナが夜食を欲しがってると聞いて今まで会いに行かなかったおわびに、ヨナの好きなもの作ろうと思ってね。料理日誌にあった通りにカナからもアドバイスをもらいながら作ったんだがなぁ、ごめんね」
イルの言葉を聞いたヨナは、ぱくぱく粥を食べていく。
「あれ?まずいんじゃないのかい?」
「すっごくまずい」
自分の為に作ってくれたことが嬉しく思ったヨナは、涙を流しながら笑顔でそう答えた。
その様子を見ていたスウォン、ハク、カナは顔を合わせて微笑んでいたのだった。
――次の日
「あーあ、治っちゃった」
ヨナは残念そうに呟いた。
「残念そうだな、姫さん」
「別に」
『ハクはおとなしくなって良かったけどね』
「っこのやろ」
『ちょっ、髪崩れる!』
ハクの言葉が図星だったヨナはそっけない返答をする。カナはハクを揶揄ったが、髪を撫でまわされボサボサにされた。
「私は残念です」
スウォンは空を見上げながら言う。
「姫さんの隣で寝られないからか?」
「ヨナの隣はいつでも寝れますけど」
「『えっ』」
冗談のつもりで言ったハクの質問にあっさり答えたスウォンに、ヨナとカナは驚いて声を上げる。
「私はずっと、ずーっと、あのまま四人で風邪ひいて寝てたかったです」
「別に…、風邪ひいてなくても簡単だろ。一緒にいることくらい」
『大人になっても四人で変わらずこうやって一緒に過ごせますよ、きっと…』
「そうですね」
「スウォン、ハク、カナ、明日も遊びに来てね」
こういう日々がずっとこの先も続くのだろうと、四人は思っていたであろう。少なくともカナは思っていた。
これは、四人で空を見上げながら過ごしたある日の出来事だった。
夢の景色が変わり、ヨナは父親がスウォンに殺されるあの日の事を思い出していた。大好きだった優しいスウォンの目が、冷酷な目でヨナを見下ろす姿に目を覚ます。
目を覚ましたヨナは、必死に周りを見渡し、ガサッという草の音に反応し後ろを振り向くと、そこにはハクとカナがいた。
「起きてましたか。すみません飲み水を汲みに行ったんで…」
『どうしました?怖い夢でも見ました?』
ヨナは、もう四人で見上げたあの空はどこにもないのだと、涙を流しながらそう思ったのだった。カナは声を出して泣くヨナを抱きしめ、背中をさすることしかできなかった。自分が涙を流してることに気づかぬふりをして。
――緋龍城
スウォンもまた空を見上げていた。彼は何を思い、空を見上げていたのだろうか…