1章
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ヨナは夢を見ていた。
母を亡くして間もない冬の頃の夢を。
「ヨナ、ほら見て雪ですよー」
「うん…」
ヨナは緋龍城へ遊びに来ていたスウォンと共に外に出ていた。
「お団子出来ましたっ!」「何だか奇怪なもの出来ましたっ!…ヨナ」
「あっ、元気だよ」
スウォンは元気がないヨナに、次々と雪で作ったものを見せるが、どれも反応が薄い。
ヨナはそんなスウォンに気づき、自分は元気だと伝えようとする。
「父上が泣かないようにヨナが元気になるんだもんね」
ーームギュ
「ぐえっ」
「「ぐえ?」」
ヨナとスウォンが下を向くと、ハクが踏まれていた。ヨナが一歩踏み出した時に、雪の上で寝そべっていたハクを踏んでしまっていたのだ。
「重い」
『フフっ』
ハクと一緒に寝そべっていたカナは思わず笑ってしまった。
「ハク、カナ!?」
「わーい、ハクとカナだ♡」
ヨナは驚き、スウォンは嬉しそうに笑った。
「寄るんじゃねぇーーっ。姫さん、足元に気ィつけろよ。せっかくいい気分だったのに」
『そうですね、足元にハクみたいな大きな物があるかもしれません。危ないので足元に注意してください』
「俺は物かよ」
ハクは寝そべったまま、カナは体を起こしながら、それぞれヨナに言う。
「なんでそんなとこでねてるのよ」
「俺は俺の生きた証をこの大地に刻んでたんだよ。降りつもった白い雪があったらまず大の字になって寝てみたくなるのが人情ってもんだぜ」
『カッコつけた言い方して…』
ドヤ顔で言うハクにカナは呆れ、スウォンはそんなハクの言葉に「ハク、かっこいー」と両手を頬にあて、感激していた。
――ボスッ
いきなりヨナがハクの頭に雪玉をぶつけた。
「雪だんごの的にちょうどいいわ」
「ほーう」
雪玉を片手に笑顔でいたヨナに対し、ムカッとしたハクは応戦し、二人で雪合戦が始まった。
「さすがハク、ヨナが元気になりました!」
『ハク!姫様に強く投げるのはダメよ!』
二人を見ていたスウォンとカナも雪合戦に参加したのだった。
――次の日
「ケホケホ」
ヨナは風邪を引いてしまった。
「ヨナの元気がなくなりました……」
「雪の中での遊びは姫さんにはキツかったか」
「ごめんね、ヨナ」
『姫様、申し訳ありません……』
スウォンは涙を流しながら謝り、カナは申し訳なさそうに下を向いていた。
「お薬を飲んで安静になされたらよくなりますよ」
女性の医務官が笑顔で答えた。
「…ねぇ、父上は?」
「陛下は今お忙しくて、まだ
登極=即位のこと
まだ来ていないイルに対して、医務官はヨナを悲しませないように焦って弁明した後、部屋から出た。
「大丈夫ですよ、ヨナ」
「あの王様、姫さんが病気つったら飛んでくるぞ」
『陛下は必ず姫様のもとに来ますよ、安心してください』
落ち込んでいるヨナにカナたち三人は、元気づける言葉を言う。
「三人とも、もうかえっていいよ。ヨナに近づかないで」
これ以上一緒にいたら風邪がうつると思ったヨナは、三人を部屋から出そうとするが…
「今、身体ポカポカで」
「俺なんか遊びすぎて、まだ雪団子の幻が見える」
スウォンとハクもぐったりし始めた。
「医務官ー、病人出たーっ」
『ちょっ、二人とも大丈夫!?』
ヨナは医務官を大声で呼びながらじたばたし、カナは二人の体を慌てて支えた。
医務官が到着後、ヨナを真ん中に三人が並んで寝ることになり、カナは看病として部屋に残った。
「どーりで雪団子が俺の周りを飛んでると思った…」
「三人とも…かえらなくていいの?とくにカナは元気でしょ?」
『私は元気ですので残って皆の看病をします。そもそも、ハクを置いて帰れませんしね』
「病を流行らせないように、ここで直した方が良いらしいです。でも、ヨナとは最近ずっと手をつないで寝てるしいつも通りですね」
ヨナはスウォンの言葉を聞いて、熱で赤くなってる頬が一層赤くなった。
「…そんなことしてんのかお前ら。やっぱ俺帰るわ」
『熱で体きついくせに、無理して動こうとしないで』
ハクは上半身を起こし、帰ろうとするがカナがそれを阻止する。
「えっ、ハク、四人で手をつなぎましょうよー」
「冗談…」
『私もつなぐんですね…』
スウォンの提案にハクは冗談として受け止め、カナは苦笑いで答えた。そんな話をしていると、猛スピードで部屋に近づいてくる人がいた。
――ドカドカ ドカドカ
――バターン
「ハクーッ、カナーッ!!!」
「『わーッ!』」
慌ただしく部屋に来たのは、ムンドクだった。
「じっちゃん!?」
『おじいちゃん!?』
「小僧、姫様に雪をぶつけて病にかけたらしいな」
「呪いみたいに言うなよ。そこに雪があったら投げるのが礼儀だろ!それに、なんで俺だけがぶつけたことになってんだよ!」
ハクはムンドクの迫力に冷や汗をかきながら話す。
「小童め!カナが姫様に投げるわけがないじゃろう!尻を出せ、ムチ打ちじゃああ!!」
「いやあああ、それだけはホントにいやあああああ」
『おじいちゃん、落ち着いて!ハクは今風邪引いてるから!』
ムンドクが鞭を出したことにカナは慌ててハクの前に立ち、ムンドクを止めようとした。
「将軍っ、お止め下さい、病人ですよ!」
医務官も慌てて止めた。
そして、怒られたムンドクは帰っていった。
「…やっぱ俺ここにいる…。帰ったら殺される」
『あれは、どっちみち帰ったら絶対何かしらの罰はあるだろうね…』
ハクは項垂れ、カナはヨナに直接雪玉をぶつけていなくても、ハクを止めなかった自分も何かしらムンドクからお叱りをもらうだろうと思い、遠い目になる。
「あれは…っ、風の部族長ムンドク将軍ですよね」
『そうですね』
そんな二人を他所に、スウォンは憧れの目をムンドクに向けていた。
「近くで初めて見ました。五将軍最強といわれるムンドク将軍、私の憧れなんです。ハクとカナのお
「俺とカナは孤児だ」
『おじいちゃんとは血が繋がっていませんよ。もちろん、ハクと私もです』
スウォンは二人の話を聞いて申し訳ない顔になる。
「そうなんですか」
「俺とカナは養子としてじっちゃんの部族に世話になってるだけだ」
「でも…、ムンドクきてくれた。ハクとカナのことすきなんだね」
三人の話を聞いていたヨナは優しい顔で言う。
「…どうかな」
――ドシドシ ドシドシ
『また何か来ましたね』
――ガタ…
次に姿を現したのはユホンだった。
「ち…、父上…」
スウォンは咳をしながら、ユホンが来たことに驚いていた。
「どうしてここに…」
「病にかかった息子を見舞ってはおかしいか?」
ユホンはスウォンに歩み寄り、膝をつく。
「病が父上にうつってしまいます」
「お前の病ごときに俺が負けると…?」
スウォンは風邪をうつさないように、布団を口元まで引っ張る。
そんなスウォンの言葉を聞いて、ユホンは不敵に笑って答えた。
「いっいえっ、でも今はとてもお忙しい時期だと…」
「ヨンヒが来るといってきかなかったのだが」
「母上が…っ!?」
スウォンは焦っていた顔から一変してヨンヒを心配する顔になる。
「あの体で病をもらっては危険だ。屋敷に置いて来た」
ユホンの言葉を聞いたスウォンは、ほっとする。
「母親に心配かけるものではない。病など早急にぶち殺せ」
「はいっ」
スウォンは元気に返事をしたが、カナはぶち殺すという言葉に驚きを隠せなかった。それはハクとヨナも同じことだろう。
そして、ユホンの視線がスウォンからカナにうつる。
「お前がムンドクやジュドから剣術を教わっている子供、カナか」
『あっ、はい…』
カナは突然ユホンから話しかけられ、驚きと緊張で反応が遅れた。
「話は色々聞いている。女にしてはいい腕をしていると。今度俺とも剣を交えてもらおうか」
『そんな、恐れ多い…。私はまだまだ若輩者です。ですが、いつかお願い致します!』
カナは最初は怖気づいていたが、最後はユホンの目をしっかり見て話した。
「お前達…、後で見舞いの品を届けさせよう」
ユホンは立ち上がり、背を向けながらそう言って立ち去った。
ドアが閉まってから、カナ、ハク、ヨナは息を吐いた。
「…っっさすがな迫力。カナ、お前よく話せたな、一気に熱が下がった気がする」
『いや、内心すごい緊張して手汗がやばい』
「こわ…っかった」
ハクは冷や汗をかき、カナは自分の手を見て呟き、ヨナは目をふるふるさせ今にも泣きそうな顔になっていた。
「今日はなんて幸せな日でしょう。よーし、がんばって病をぶち殺します」
「寝ろ、アホ」
『安静にしてくださいね』
一方でスウォンは、ぽわ~んとして幸せを噛みしめた後、病をぶち殺すために気合いを入れる。そんなスウォンにハクとカナはツッコむ。
ヨナはムンドクやユホンは見舞いに来ているが、イルがまだ来てないことに寂しさが増していたのだった。