1章
夢小説設定
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「あっ、イヤ、スウォンって女性の扱い慣れてる感じ。スウォンのお屋敷では山程女を連れ込んでたりして」
ヨナは自分で、何を言い出してるんだと思いながらも先に声が出ていた。
それに対してスウォンは笑顔のまま固まり、無言になった。
「まさか……」
「えっ、いや、やだなあっ誤解ですよ。確かに縁談の話はいくつかあるけど」
スウォンの顔を見て、ヨナは自分が言ったことが実は本当に起きているのかと声を掛けたが、その返答に縁談という言葉が返ってきたことに焦りだした。
「何それ、知らな……っ」
「や、まだ決まってないし。やめましょこの話は。ヨナにこんなこと言っても仕方ないし」
自分に言っても仕方ないと言われ、ヨナはまた子供扱いされたと思ってムキになる。
「わっ、私にだって縁談くらいあるわ」
「えっ、誰と?」
「ハクとか!」
ヨナは年の近い男はハクしか知らないこともあったが、縁談の相手を従者の名前を挙げるなんてバレバレの見栄を張った。
いきなりヨナの縁談の相手が自分だと聞かされたハクは、不審な目でヨナをみ、カナは目を見張った後にハクを見た。
『ハク、あんたいつの間に姫様に手を出したの?締めるわよ』
「いや、だしてねぇよ」
カナは握り拳を作り、ハクを殴ろうとする。
ハクはそんなカナに弁明する。
「あの…、…それは」
いくらなんでも苦しい事を言っている自覚があったヨナは、言い訳を言おうとしたが、
「いいんじゃないかな。おめでとうございます」
スウォンが笑顔で祝福したことにより、何も言えなくなった。
「ひどいっ、あんまりよスウォン」
「ひどいのはアンタだ。そして迷惑だ」
城に戻ってきたヨナは、スウォンの言葉に落ち込み、ハクは先程の話で自分の名前を出したヨナに迷惑そうにしていた。
カナは、流石に何も言えずに苦笑いだった。
その様子を見ていたイルは、下を向きながらヨナに言う。
「お前の結婚は嘘にならんかもしれんぞ」
「え…?」
いきなり自分の結婚の話になったヨナは驚き、後ろにいるイルの方へ向く。
「無論、相手は然るべき者を選ぶがな」
「父上?」
「じきお前は16だ。婚約者がいてもおかしくないだろう。いずれ話そうと思っていた」
「や…、嫌よ。私はスウォンが…」
「スウォンは駄目だ」
スウォン以外の人と結婚したくなかったヨナは、スウォンが好きだと言おうとしたが、駄目だと一蹴された。
ヨナは怒りで、椅子から立ち上がる。
「父上に私の恋愛をどうこう言われたくないわ!」
「ヨナ。私はこれまでお前が望むものは何でも与えて来たよ。美しい簪に耳飾り、離宮に花の庭園、武器以外のものは何でも。しかし、お前がどれだけ望んでもスウォンを与える事は出来ない。お前は高華王国の皇女。お前の夫となる者は、この国の王となる者なのだ」
イルは冷静に、ヨナを諭した。
外は雨が降り出し、不穏な空気になっていった。
「…スウォンは父上の兄、ユホン伯父上の息子。王家の血筋でしょ」
「…そうだな。だが後継者は王である私が選ぶ」
「どうして…、スウォンは立派な人よ。父上は武器を恐れて、触れもしない、臆病な王様じゃない」
ヨナは俯きながら、スウォンがなぜ駄目なのか諦めが付かずにイルに問う。
「…確かに臆病な王だよ、私は。お前の母は賊に襲われ殺された。王の一族は皆、このような危険がつきまとう。それを知って私は再び妻を娶る気にはなれなかったよ。ヨナ、スウォンには幸せになってほしいだろう?」
「…わからない。わからないわ父上」
イルとの話が終わり、ヨナは1人、部屋の外の廊下に座っていた。
先程イルが言っていたことなら、自分の夫となる人は不幸になってもいいのか、自分はいいのか、自分は幸せになってはいけないのか。そんなことをヨナは思っていた。
「…でも、そうよね。たとえ父上が許してもスウォンにとって私は子供…。ダメじゃない」
最初からスウォンと結ばれることがないと分かってしまったヨナは、膝を抱え泣いた。
今はヨナをそっとしておこうと、ハクとカナは別の場所にいた。
『はぁ…。姫様、落ち込んでるだろうな。何故イル陛下はあそこまで頑なに駄目だと言うのだろうか…』
「まぁ、落ち込んではいるだろうな。でも俺達には関係ないことだ」
『それは、そうなんだけどさ。それでも姫様には幸せになって欲しいから…』
「……」
ハクは、ヨナのことを思い自分も落ち込んでいるカナを横目に、最後は無言でカナの頭を撫でた。
ハクと別れ、見張りのため城の中を歩いてたカナは嫌な気配を感じた。今はヨナをそっとしておいた方がいいと思いつつも、何かあってからは遅いのでヨナを探しに行った。
ヨナの部屋を見に行ったが、中は誰もいなかった。他に検討つく場所といえば、スウォンのところ。カナは次にスウォンの部屋を訪ねた。
『スウォン様、カナです。お入りしても宜しいでしょうか』
ノックをし、自分の名前を言ったカナは中から了承を得たので部屋に入った。そこに居たのは、部屋の主であるスウォンとヨナだった。カナはヨナがスウォンと居たことに安堵し、声を掛けた。
『姫様、スウォン様のところにいらしたのですね。探しましたよ』
「探してた?何かあったの?」
『いえ、見張り中に嫌な気配を感じたので、姫様は無事かどうか探していただけです』
2人の話を聞いていたスウォンは、先程ヨナが変な人に追いかけられたということを思い出した。
「カナ、ちょうどいい時に来ました。ヨナを部屋まで送ってあげて」
『何かありましたか?』
カナはちょうどいい時に来たというスウォンの言葉を聞いて、疑問に思った。
スウォンはヨナを再び怖がらせないように、先程の出来事をカナに耳打ちした。
『わかりました。では姫様、お部屋へ戻りましょう。日が沈んできましたし』
「そうね、わかったわ。おやすみなさい、スウォン」
「おやすみなさい、ヨナ、カナ」
『おやすみなさいませ。スウォン様』
カナは最後に礼をし、ヨナはスウォンに笑顔で告げてから、カナと共に部屋を出た。
ヨナと歩いてたカナは、ヨナが元気になってることに気づいた。
『姫様、何かいいことがございましたか?』
「え?」
『いえ、イル陛下と話してから元気を無くしていた姫様が今は元気に見られたので、何かあったのかと…』
カナからそう言われたヨナは、部屋でのスウォンとの会話を思い出し微笑んだ。
「そうね…、今まで妹みたいに見られていた私が女性として意識してもらえて、少しでもスウォンが私を気にしてくれたことに嬉しく思ったわ」
ヨナの微笑んだ顔を見たカナは、ヨナを抱きしめた。
『私は、ヨナ姫様に幸せになってもらいたいんです。なので、私にできることがあれば何なりと申してください。きっと力になってみせます』
「私、父上にああ言われたけど、やっぱりスウォンが好き。国とか王とかまだわからないけど、彼がいるだけで私は最高に幸せなのよ」
『それがヨナ姫様の幸せなら、私はハクと共にお二人をお守りせねばなりませんね』
ヨナを離したカナは、笑顔でそう答えた。
「ハクはいるかしら?」
真顔で言うヨナにカナは声を出して笑う。
『あはは!ハクはとっても強いんですよ、それは姫様も知っているはずです』
「そうね、強いのは知っているわ。でも、いつも意地悪ばかり言うあいつは生意気よ」
『それがハクなので、そこは何とも言えませんね…。
さてと、部屋に着きましたよ姫様』
ヨナの部屋に着いたカナは戻ろうとするが、さっき追われたことを不安に思ったヨナはカナの袖を少し掴み、引き止めた。そのことに気づいたカナは、ヨナの手を握って安心させる。
『私が側にはいますので安心してください、姫様』
ヨナは布団で、カナはその隣で2人は手を繋いで寝たのであった。