1章
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ここは高華王国
そしてかつての緋龍城は
当時王の他には世継ぎの皇太子も
世継ぎを産む皇后も無く
ただ齢一五の皇女が大切に育てられていた
「ねぇ父上、私の髪変じゃない?」
「変じゃないとも。ヨナの美しさはどんな宝石もかなわんさ」
不安そうなヨナに、イルは笑顔でそう答えた。
「顔はね私もそこそこ可愛く生まれたと思うわ。
でもね父上。
この髪!どうしてこう赤毛でくせっ毛なのかしら。
亡くなられた母上はサラサラの黒髪だったのに
ちっともまとまらない〜〜っ」
髪を触りながら自分の髪に文句をつけ、ムキになるヨナ。
そんなヨナに、イルは少し汗をかきながらハクとカナに問う。
「そんな事ないだろう。なぁハク、カナ」
『はい。私は姫様のその赤い髪、とてもお好きですよ』
「えぇ、イル陛下。姫さまのお髪が変などと誰が申しましょうか。あえて申し上げるなら…
「お黙り下僕」
跪きながら笑顔でカナは言うが、
その隣に同じく跪きながら無礼なことを言うハクに、ヨナは即答する。
「父上、こいつ何とかして!従者のくせに態度でかすぎ!」
ヨナは周りにある物をハクに投げつけ、ハクはそれを全て受け止める。
その2人のやり取りをカナは笑みを浮かべながら見ている。
「まぁまぁ、ハクもカナもお前の幼馴染みだろう。
それにハクは18にして城でも指折りの将軍でカナも女武人のなかでは最強と言われている、護衛にはうってつけ……」
「そんなの知らない、護衛ならもっとカナみたいな可愛げある人がいい。そうよ、カナがいれば十分だわ」
「可愛いといえば、いいんですか?可愛くしとかなくて。お着きになったみたいですよ、スウォン様」
ハクは片手で湯呑を受け止めながらヨナに言う。
「それを早く言いなさいっ!」
ハクの言葉を聞いて、ヨナは慌ただしく部屋から出て行った。
「スウォン?だから髪を気にしていたのか?
彼はヨナの髪なんて今更だろうに、イトコなんだから」
「乙女心ってヤツなんじゃないですか」
『はぁ…。ハクがそれ言う?
とりあえず、姫様追いますか。行こう、ハク』
茶を飲みながら言うハクにカナは呆れながら、部屋をハクと共に出た。
『そんな意地悪なことばっか言ってると、姫様から嫌われるわよ?今に始まったことじゃないけど…』
「いいんだよ、俺はこれで」
『ハクがそれでいいなら、私は何も言わないよ』
カナはハクがヨナのことを昔から好きだということに気づいている。そして、ヨナがスウォンのことを好きなのも。いつもハクの隣にいたからこそ、カナはハクが気持ちを伝えないことも分かってるし、伝えたところで変わらないことも分かってる。それでも、ハクには後悔して欲しくないとカナは思ってる。
ヨナはスウォンのことを思いながら、城の中を走っていた。
そして、夢中になって走っていたヨナはスウォンとぶつかってしまった。
「おっと、危ないなぁ。
相変わらず元気ですね、ヨナ姫」
ヨナとぶつかったスウォンはヨナに微笑みながら言う。
「どうしたんです?慌てて」
「スウォンが来たっていうから、出迎えてやったのよ」
「わぁ、えらいえらい」
スウォンはヨナの頭を撫でながら、ヨナを褒める。
ヨナはそんなスウォンの行動に顔を赤らめる。
「こっ、今回は?しばらくいられるんでしょ?」
「もちろん、1週間後のヨナの誕生日のために来たんだから。や~、誕生日といえばヨナは16になるんですよね。大きくなったなァ。
で、イル陛下とハク、カナはどこです?ごあいさつしなきゃー」
ずっとヨナの頭を撫でながら言っていたスウォンは、イル陛下たちに挨拶するためにヨナのもとから去った。
スウォンが去った後のヨナは、スウォンの自分に対する子供扱いに気に食わない顔で不満を零す。
「今日は朝からとっておきの絹の衣、極上の香を焚き染めて最高級の美容液と化粧を施したのに」
「ムダ遣いですね」
「お前は黙ってて」
『まったく…』
ヨナとスウォンのやり取りを見てたハクは、肉まんを食べながら悪態をつく。
そんなハクにカナはハクを肘で小突きながら言う。
ハクとカナのやり取りを背景に、ヨナは母親を亡くしたばかりの小さい頃、スウォンが一緒にいて優しくしてくれたことを思い出していた……
翌日、ヨナはスウォンの部屋を訪ねていた。
「おっ、おはようスウォン!とっておきのお菓子があるのよ!一緒に………って」
ヨナは部屋の扉を開けながら話し掛けたが、中にはイルの側近であるミンスしかいなかった。
「あ、姫様。スウォン様ならハク将軍とカナ副将軍と外で…」
その頃、外ではスウォンとハク、カナは流鏑馬をしていた。
ミンスから3人が外にいることを聞いたヨナは、イルと共に外に出て、3人を眺めていた。
「ハクとカナ、ずるい。
この私をさしおいてスウォンと遊ぶなんて」
「まあまあ、あの3人も久々に会ったんだし同い年だから気も合うんだろう」
不満を言うヨナに、イルは慰める。
「私もスウォンと弓やる!」
「なっ、なんだと。
ダメだダメだ、武器等持たせられるか。本当はあの3人にだって持たせたくないくらいなのに」
スウォンの弓を射る姿にキュンときたヨナは、自分も一緒にやりたいと言うが、イルに反対される。
「じゃあ、父上やってよ」
「怪我しちゃうじゃないか」
「まーっ臆病!」
反対したイルにヨナはやってと言うが、イルは真剣な顔で怪我をするからと断る。そんなイルにヨナは文句を言う。
「ヨナ。いらっしゃい。馬に乗せてあげます」
そんな2人のやり取りを見ていたスウォンはヨナを誘う。
「スウォン!」
「大丈夫です。馬に乗るだけですから」
イルはスウォンを叱るが、そのままヨナは馬に乗ることになった。
「高いっ、怖い…っ」
「落ちついて、私とハク、カナで支えてますから」
「でも~~~」
「姫様の重みで間もなくハクは絶命~~」
「張り倒すわよ!!」
『姫様、大丈夫ですよ。落ちそうになったらハクを下敷きにして助けますから』
「おい」
初めて馬に乗るヨナは、馬に乗りながらヨナを引っ張るスウォンと下からヨナを支えているハクとカナに手助けしてもらいながら乗る。
「私に身体を預けていなさい」
馬に乗ったヨナを、スウォンは後ろで手綱を握りながら支える。
一気に距離が近くなったスウォンに、ヨナは内心ドキドキしていた。
「これは反則じゃない?」
「ん?」
子供の頃は女の子みたいに可愛かったスウォンが、今はカッコよくなったことに対してヨナは心の声が漏れる。