1章
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ヨナはヘンデが戻ってきた知らせで目が覚め、テヨンに薬を渡してから負傷した商談の人たちのもとへ向かっていたのだ。そこの光景に、この人達は何も関係ないのに…!と目に涙を溜めて見ていた。そんなヨナに声をかけたのがヘンデだ。
「大丈夫ー。若長やカナ様、長老がいる限りね。カナ様はもちろん、若長も長老もああ見えて家族思いだから」
「家族…」
「そう。風の部族の皆は家族なのです。だからリナさんも、もう俺らの家族なのです」
ヨナはヘンデの暖かい言葉に涙を流す。
「あれっ、リナ…さん?」
「泣かせたな、ヘンデ」
「わーっハク様に殺されるー。てか、先にカナ様に怒られるー」
ヘンデはヨナを泣かせてしまったことに慌てはじめ、そんなヘンデにテウが小突く。
ハクやカナ、ムンドク、やさしい風の部族の人達。強い痛みもあるだろう。激しい怒りもあるだろう。胸にしまって笑う、誇り高い風。この人達を巻き込んではだめだとヨナは決意する。
ヨナは走っていた。ハクとカナ、ムンドクを探して。そこにちょうど、カナに抱きしめられたあと頭を撫でられたテヨンと出会う。
「リナ…」
テヨンはヨナに気づき、涙を袖で拭う。
「今の…、ハクとカナ?」
「…うん。リナはどうしたの?」
一瞬悲しい顔をしたテヨンだか、明るくヨナに聞く。
「お礼を…、言いに来たの」
「お礼?」
ヨナは正座をし、頭を下げる。
「あったかいごはんをくれて、涙をぬぐってくれて、元気をくれて、ありがとう。お世話になりました」
「…行くのか?リナはずっとここに居るんだと思ってた。…なぁんだ」
テヨンは涙を堪えることができず、両手で帽子をまぶかにし目を隠し、震えた声で言う。
「…なぁんだ」
ヨナはテヨンを抱きしめたあと、手を握り額をテヨンの額に付ける。
「私、忘れない、テヨンとここの人達を。体を大切に、元気で」
そしてヨナは去っていった。
「…ごめんなさい、ハク兄ちゃん、カナ姉ちゃん。リナを守るって約束したばかりなのに、守れそうにないや」
テヨンは空を見上げながら、呟くのだった。
「さてと、行きますか」
ハクとカナほ門へとたどり着いた。
『テウ、今日はちゃんと門番してるみたいだね』
門の前で待っていたのはテウだった。カナが笑いながら話しかける。
「背中預けるヤツがいないと、眠れねーんで」
「ねるな」
「ハク様とカナはどちらへ?」
ハクのツッコミを無視し、テウは問う。
『私たち、ここ出るわ』
「へー…いってらっさい。…マジで?」
「つーわけで、次期風の部族長はお前な」
ハクとカナはテウの前を通り過ぎながら答える。
「やだよ、めんどくさい!…の前に色々あるけど、リナさん置いてくの!?」
「最後ぐらい顔見ようかとも思ったけどな」
『会ったら、何言われるかわかんないしね〜』
「あいつもまとめて頼むわ」
『お願いね』
ハクは背を向けながら、カナは最後にテウの顔をみて笑顔で言った。
「ワケありのお姫様なんて、荷が重いっすよ」
「お前気づいて…」
ハクはテウの言葉に振り返るが、テウは寝たフリをする。
「ハクーー、カナーー」
ハクとカナは声のする方を向く。そこに居たのはヨナがいた。
「私ここを出る、一緒に来なさい」
二人は目を見開きすぐに戻す。
「…何だって?」
「ここを出るの。ここにいたら、風牙の都を争いに巻き込んでしまう」
『…帰ってください。長老にはその旨伝えてあります。もうここは大丈夫です、あなたはここで静かに暮らしてください』
「ハクとカナは?行くのを許した覚えはないわ」
「許すも許さねェも、もう俺たちは将軍や副将軍じゃねぇし、あんたの従者でもない。これから兄妹水入らず、自由の旅に出ようってのに、あんたの面倒まで見る義理ねェな」
ハクはヨナを突き放すように冷たい態度をとる。
「あんたが静かにしてればスウォンも手出しはしない」
ーーダッ
ハクとカナがヨナを無視して門を出ようとすると、ヨナが二人の前に腕を広げて立ち塞がる。
『…どいてください』
「もう決めたの」
『どう思われようが、私たちはあなたを連れて行けません。帰ってください』
カナは睨みを利かせながらヨナに言う。
「…じゃあ、金は?金はあるのか?これから先、一緒に行くならどうしだって俺らはあんたを守らなきゃならない。今のあんたに俺たちの働きに見合う金を払う事が出来るのかって聞いてんだよ。ああ、それとも体で払うか?」
ハクがヨナの手を掴み、体を近付ける。ヨナは体で払うという言葉に顔を顰める。そんなヨナを顔を見てハクはこれで諦めただろうと思う。
「…あげられるものなんて、何もないわ」
「物分かりがいいな。さあ、戻れ。さようならヨナ姫」
ハクは、ぱっと手を離し別れを告げる。行ってしまうと思ったヨナはハクの羽織を掴んで向き直る。
「でも、お前たちが欲しいもの。私にハクとカナをちょうだい」
ハクは顔を顰めたあと、ヨナの真っすぐハクを見る瞳を見て顔に手を置いてしゃがみ込む。
「なんだそりゃ…。あんた…、すっげワガママ。あーあ…、くそムカつく…。これだから…………」
ハクは目を少し伏せたあと顔を上げる。
「…あんたの勝ちです、姫様」
そしてカナはヨナを抱きしめる。ハクが負けてしまったから…私がいまさら何を言おうと意見を変えないだろう。と思っていても言わずにはいられなかった。
『ほんとうに……、私たちと一緒に行くのですか?』
ヨナもカナの背中に手を回す。
「うん…、これ以上テヨンや他の人たちに迷惑かけたくないから。それに…、ハクがいればカナも来てくれるでしょ?」
カナは少し体を離して拗ねた顔でヨナを見る。
『それは、ズルいと思います』
「ふふっ、そうかもね。でも、そんなことしなくてもカナは私について来てくれるって信じてるから」
カナは微笑みながら信じてると目を見て言ったヨナに驚く。
『やっぱり…、ズルいですね姫様。そんなこと言われたら勝てないじゃないですか』
カナは苦笑い気味に言うが、どこか嬉しそうだ。
「…ハ…ク…」
「げっ、じじい」
ずっと門でハクとカナを待っていたムンドクが、弓を構えハクを射ようとする。
「さっきから聞いていれば、姫様に対する暴言の数々、何度射殺そうかと…」
ムンドクは矢を折り、怒りをあらわす。そんなムンドクにヨナが近寄る。
「ムンドク、探してたのよ。…私…っ」
「…孫をまた一人、手放すようじゃ」
ムンドクは右手をヨナの頬に置く。
「私…、皆にも言われたの、家族だって。嬉しかった。だから出ていくの」
ムンドクの手をヨナは触りながら言う。
「ムンドク、どうか風の部族を守って」
「…忘れないで下され、姫様。いつか、あなたが再び絶望に立たされ助けを求めた時、我ら風の部族は誰を敵にまわしてもお味方いたします」
そしてヨナとハク、カナは風牙の都をたったのだった。
――火の都
風の部族の反発に備えて川を塞き止めるだけだったのだが、商団も山賊か何かのせいにして襲わせたテジュンは父親に勝手に行動するなと怒られ、しょんぼりしていた。そんなテジュンのもとに、風牙の都付近でヨナを見たという情報が入った。そして、ヨナを捕まえるために北山に向かうのだった。
北山でこれから何が起こるのか…、それはまだ誰も知らない。