1章
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ヨナは目を覚ますと、見知らない天井が視界に入った。体を起こし、周囲を確認するがどこか分からず、服も新しいものに変わってることに気付く。いい匂いがし、傍に置いてあった粥を食べると涙を流し始めた。
――カタ
「……なんで泣くんだ?ま…不味かった…?」
ちょうど部屋に入ってきたのは、金髪の少年だった。ヨナは不味いわけではいと首を横に振る。
「あ…温かくて…」
「温かくて泣くのか、変なヤツだな」
「ち…父上を……、思い出して」
ヨナはいつだったか、自分の為に鶏粥を作ってくれた父親のことを思い出していた。そんな悲しそうな顔をしているヨナに、少年はヨナの涙を拭ってあげる。
「俺はテヨン。ハク兄ちゃんとカナ姉ちゃんの弟だ」
「ハクとカナの…、弟……」
「お前はカナ姉ちゃんの友達か?」
「カナは……、友達というか、相談相手?」
「じゃあ、ハク兄ちゃんの友達か?」
「……………………たぶん」
――ガラッ
「たぶん友達ーーッ!?」
突然テウとヘンデが襖を開け叫んだため、ヨナはビックリした。
「そんな…、愛人とか恋人とかは無理にしても」
「たぶん友達って、視界にも入ってね―っス。あわれ、ハク様超片思い…」
――ぐしゃ…
「目ん玉ほじくったろか」
ハクが後ろからヘンデを潰して強制的に黙らせた。
「…誰が友達だ」
「え…、じゃあ従者…」
――ガッ
ハクはすぐにヨナの口を左手で塞いだ。その体制はハクがヨナを襲ってるように見えなくもない状態だ。
「あんたの名はリナ、城の見習い女官という事になっている。俺らもここでは女官として扱う、いいな?」
ハクはヨナにだけ聞こえるように小さな声で説明をする。ヨナはそんなハクの迫力に少し汗を流し、コクッと無言で頷く。
「よし…、いい子だ…」
ハクはそのまま手で口を塞いだまま後ろにいるテウ達の様子を伺うが、そこにはテウがテヨンの目を手で塞いで、ヘンデと一緒に顔を赤らめている姿があった。
「テヨンが見てマズイ事はなんもしてねーだろーがっ!」
「だって何かやらしいよ、ハクさまー」
ハクは怒ってテウをドカドカ蹴る。
「リナ、兄ちゃんと姉ちゃんは城ではどんな人なの?俺が三歳の時に兄ちゃんと姉ちゃんは将軍と副将軍になって、お姫様を守ってたから俺、兄ちゃんと姉ちゃんの事あんまり知らねんだ」
「……城でのハクとカナ…、カナはいつも優しくて私の話をよく聞いてくれる、とても素敵な人よ。ハクは……、無礼者…、あ、イヤ、無神経…、あ、えと、態度でかい…、あ、ううん、可愛くない……、あ……」
「よーし、わかったもういい」
ヨナの言葉を聞いていたハクはだんだん目が点になっていき、これ以上何か言われる前に終わらせた。その後ろではテウとヘンデは、リナさん最高~っと笑い転げていた。
「かっかっかっ、可愛くないときた!そりゃ、可愛くねーわ!」
「楽しそうだな、ヘンデこっち来いや」
皆笑顔で、賑やか…、これがハクとカナの育った場所…。ヨナはハクたちのやり取りをみて久々に笑顔になった。その顔を見てたハクもまた口角が上がる。
「ところでハク、カナはいないの?」
ヨナはカナがいない事に気付き、ハクに聞く。
「あー、あいつは疲れて今は寝てるだけだ。心配することはねぇよ」
――別の部屋
ーーガラ
『…んっ』
「起きたか、寝坊助」
『ハク…?』
カナはハクが襖を開けて部屋に入ってくる音で目が覚めた。
「お前、毒を受けすぎだ」
『…あー、毒矢と毒蛇の相性が良かったのかな、あはは…』
「……ここまで倒れないでよくやったな」
カナは苦笑いで答え、ハクはそんなカナの頭を撫でる。
『ちょっと最近、頭撫ですぎじゃない?年は同じなんだなら、妹じゃないんですけど?』
「俺にとっては妹みたいなもんだろ」
カナはそう言いつつもハクに頭を撫でられることは嫌というわけではない、むしろ好きな方だと自覚はしているが、素直に言うのは癪なので絶対言わないと心に決めている。ハクもカナが嫌がってないのを分かってるから、撫でるのをやめない。
『姫様は起きたの?』
「あぁ、ついさっきな。姫さんは城の見習い女官ということになってる。名前はリナ」
『そっか……』
「俺はまた姫さんの様子を見に行ってくるから、お前はもう少し休め」
『いや、テヨンの所にでも行こうかな』
「…無理すんなよ」
『過保護』
「うっせ」
カナは呆れた顔をハクに向けるが、ハクはそれを気にせず部屋から出て行った。カナは立ち上がり身支度をした後、テヨンのもとへ向かう。
『テヨン?』
「あっ、カナ姉ちゃん!」
テヨンの部屋に向かってたカナだったが、途中でテヨンと出会う。テヨンはカナのもとまで走り、腕の中に飛び込んだ。
「姉ちゃん、もう体調は大丈夫なのか?」
『うん、もうすっかり良くなったよ。ありがとう、テヨン』
カナは、腕の中からこちらを見上げるテヨンの頭を撫でながら優しい顔をしていた。
『私たちが帰ってきて喜んでくれるのはとても嬉しいけど、あまりはしゃぎすぎると発作が出るから気を付けてね』
「…わかった」
『ふふっ、いい子』
カナはテヨンの視線を合わせるためにしゃがみ、体が弱くて発作が時折出てしまうテヨンに注意をする。テヨンは少ししょんぼりした顔をしたが、カナがいい子だと抱きしめると嬉しくて笑顔になる。
「カナ様、大変です!」
カナとテヨンが、ぎゅうぎゅうと抱きしめあってると、里の男性が慌てて声をかけてきた。
『何かあったの?』
「…川の水が枯れました」
『え?』
カナはテヨンと共に川に向かう。
『ハク!』
「おー、カナか」
ハクが木の枝を持ってしゃがみ、地面になにやら書いてる様子だった。
『川の上流の調査は…』
「今、ヘンデに向かわせてる」
「何してんの?長」
「もしこれからずっと川が枯れてたら当分は商談から水を買わなきゃならない。遠方へ汲みにいったとしても人手とそれにかかる費用ときたら…。クックック…もはや笑えてくるな」
ハクはぶつぶつとお金の計算をし、黒い顔になる。
「『金の計算か』」
「兄ちゃん、お姫様守ってるのも金目当てって聞いたけど、本当か?」
黒い顔になって変な笑いをしてるハクに、テウとカナの声が被る。テヨンが城の見習い女官として働いてたリナに不思議に思ってたことを聞く。
「他に何があるってんだ」
ーーベシッ
ハクの言葉にヨナが目と口を大きく開け驚く。カナは即答するハクの頭を叩く。
「あっ、長老だ、ムンドク長老が帰ってきたーっ!」
ハクとヨナ、カナは顔を上げすぐにムンドクのもとへ行く。
「ジジィーーーー」
『おじいちゃん!』
馬から降りてこちらに気づいたムンドクは、ヨナを抱きしめる。
「よかった。ご無事だったか、よかった。信じたくなかったが…、陛下が亡くなられて貴方とハク、カナが城を去ったと言う事はやはりそうなのか…。その時お守り出来ず口惜しい」
ヨナはムンドクの暖かい言葉に涙を流す。
「……苦しい」
ムンドクが強い力で抱きしめてたみたいでヨナは苦しがった。
「お。……少しお痩せになられましたか」
「……ううん、温かいもの、おいしいもの、たくさんもらったの。あんなに美味しいごはん、初めて食べた。風の部族はムンドクみたい、あったかくてほっとする。」
ムンドクはヨナの言葉に微笑み、優しい顔になる。そして、ハクとカナの方を向き、抱きしめようとジリジリ寄ってくる。カナは自分から抱きつきに行く。ハクも一緒に抱きしめようとムンドクは腕を広げるが、ハクはムンドクの額に指先をつけて制止させる。
「愛の抱擁をよけるヤツがあるか」
『ふふっ』
「受け取ってるぜ、指先でな。そもそもカナが受け取ってるだろ」
「じっちゃん、俺も俺もー、ぎゅっとしてー」
ハクとカナ、ムンドクのやり取りを楽しそうに見てたテヨンは自分もして欲しいとお願いする。
ーーガサッ
「ヘンデ、どうしたんだお前…っ」
突然草むらから、上流の調査に行ってたヘンデが傷だからけで帰ってきた。
「あ、長老もいたんだ。お帰りー…」
『ヘンデ、その傷は…』
「上流で何があった!?」
ヘンデの周りに人が集まる。
「いやはや、ちょっと失敗しちゃった。上流に行ったらびっくり、火の部族のヤツらが川を塞き止めてたのさ。何それ新たなイジメ?みたいな。思わず武装したヤツらにケンカ売っちゃったのねー、そおしたらボコボコでポイよ」
ヘンデの話を聞いた風の部族の人たちは、火の部族に怒りだす。
「火の部族のヤツら、何してくれちゃってんだ?」
「俺らと戦争でもやんのか!?風の部族ナメてっと、雷獣と鳥獣出すぞコラ」
「ハク様、俺に行かせてください」
「……待て、火の部族に手を出してはならん」
火の部族と事を荒立てようとする里の人たちにムンドクが止める。
「どうして!?ヤツら川を止めてヘンデを殺したんスよ」
「そうですよ長老、このままだと風牙の都が」
「落ちつけ、川の事なら心配いらん、とにかくヘンデの治療を急げ」
「はい」
テウがヘンデを治療のため、連れて行く。
『おじいちゃん…』
「…これは、火の部族の警告じゃ」
「警告?」
少しの沈黙があったあと、ムンドクが口を開く。
「ヤツらは、スウォン様を王に即位させたがっている」
ヨナの心臓が大きくなる。
『火の部族が……!?』
「火の部族は前々からスウォン様と癒着していたようじゃな。ワシがスウォン様を王に承認せんから、圧力をかけてきたんじゃろう」
ハクとカナが険しい顔になる。自分の父親を殺したスウォンがこの国の王になることに、ヨナは身震いし腕をさする。
「姫様、大丈夫じゃ、承認はせん。スウォン様を王に認めてしまったら、ハクとカナに国王殺害の疑いがある事も認めてしまう事になる」
ムンドクがヨナの頭を撫でながら言う。
「ハクとカナが国王殺害……!?」
『……だろうね』
「俺らに罪を着せるのが一番てっとり早い」
「心配いらん、火の部族とてこれ以上の無茶はせんじゃろう」
ムンドクの言葉に、本当にそうなんだろうか…?とカナは思ったのだった。