1章
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――ザッ
「姫様、見えてきましたよ。風の部族、風牙の都です」
山を登っ先には、ハクとカナの故郷である風牙の都があった。三人は都の門の所へ向かうが、黒髪の男と金髪の男の二人が昼寝をしている。ハクが黒髪の男をカナが金髪の男をそれぞれ蹴り起こす。二人は壁に頭を打ち付け、悶えていた。
「見張りはお昼寝の時間か、この部族は」
『まったく…、見張り役はちゃんと見張りをしなさいよね』
「ハク様?カナ様?」
「よ」
『久しぶり』
男二人は振り向き、ハクとカナに気付く。
「へー、久しぶりー、10年ぶり?なんでいんの?」
「将軍と副将軍クビになったの?明日があるさ」
黒髪の男はテウ、金髪の男はヘンデと名乗る。
『三年ぶりだよ』
「相変わらず、ユルいな」
「我らは風の部族。風の赴くまま逆らわずに生きるのであります〜〜」
「誰だ、こんなヤツら見張りにしたの」
『あはは…』
テウとヘンデは手を横にゆらゆらさせ、ユルいポーズを取りながら言う。ハクは呆れた顔をし、カナは苦笑いだった。
「長〜っ」
「若長〜」
「カナ様」
「ハク様」
「お久しぶりですーーっ」
門で話していたのが聞こえたのか、里の人はハクとカナの周りに集まる。
「あら、誰?この子」
「ハク様の女?」
「えーっ」
ヨナがいることに気づき、今度はヨナの方に人が集まる。
「違う、城の見習い女官だ」
『訳あって私たちと来たのよ』
それを聞いた里の人はヨナを質問攻めにするが、ヨナは今までの疲れが出たのか倒れてしまった。そしてカナも故郷に帰ってきたことに気が緩んだのか、フラつき始めた。
『ごめん、テウ。肩借りるわ』
カナは近くにいたテウの肩を借りるつもりが、そのまま体を預けるように気を失ってしまった。
「えっ、カナ様!」
テウが慌ててカナの体を支え、ヨナの所へ行ったハクがテウの言葉に振り返る。顔を青白くさせてるカナを見て指示を出す。
「テウ!カナは毒がまだ残ってる可能性が高い。肩の傷を見てもらってくれ。そんで、この人にはすぐに寝床と食事の用意を」
「はっ、はい」
テウはカナを抱えすぐに医者に見せに行った。周りの人はハクがカナ以外の女性に優しくしてることに驚いた後、すぐに支度をするため動き出す。
「じっちゃん…、ムンドク長老はどこにいる?」
「長老なら緋龍城だよ」
ハクはヨナを姫抱きにして抱えながらヘンデに質問する。
「何…?」
「やっぱり知らないんだ。急に城から五部族召集令が下ったんだよ」
「五部族召集だと?」
「普通なら城にいる若長か、いなければ副将軍のカナ様が出席すれば良いでしょ。既に将軍を退いたムンドク長老が呼ばれたから変だなと思ったんだ。ハク様とカナ様はやっぱりクビですか?」
五部族召集ーー各部族の長が集まり協議する場。高華王国は火・水・風・地と王族「空」を加えた五つの部族を中心として政治を行う。各部族の長は「将軍」と呼ばれ王と部族を守護する最強の戦士であった。
ーー高華王国王都「
「国王が崩御された!?」
声をあげたのは、褐色肌で野性味あふれる精悍な男、地の部族長ーイ・グンテ将軍
「一体どういう事だ、急な呼び出しがあったかと思えば国王崩御だと?」
「ヨナ姫もソン・ハク将軍、ソン・カナ副将軍も行方不明との事。城で何があったのかな?」
城で何かあったのかと心配するのは、目を細め表情が読みづらい男、水の部族長ーアン・ジュンギ
「ハク将軍とカナ副将軍の行方について…ムンドク長老は何かご存知なのでは?」
ハクとカナについてムンドクに聞いたのは狡猾な野心家の男、火の部族長ーカン・スジン
「何が言いたい、火の部族の若僧よ」
そして、スジンの言葉に皺を寄せ睨んでいる男が、風の部族ームンドク長老
「緋龍城ではこんな噂が広まっておりますぞ。陛下はハク将軍によって殺害され、カナ副将軍もそれに加担し、ヨナ姫は人質に彼らに連れ去られたと。これは風の部族の謀反ではないかとな」
ムンドクは睨むだけで、何も言わない。
「決めつけるのは良くないな。行方が分からないのだから、ハク将軍やカナ副将軍にも何かあったのでは?」
「あの雷獣は齢十三にして我をも凌ぐ力を持っていたんだぞ、そう簡単に死ぬものか。それこそ鳥獣は傷が早く治るという噂がある、そう簡単に死ぬ娘なわけがないな」
「私は城の兵が何人も彼らに重傷を負わされたと聞いています」
ー-カツ
「お静かに」
終わることのない問答を終わらせたのはスウォンだった。その傍には空の部族ー―ハン・ジュド将軍もいる。
※空の部族に限り「長」は王か王の血を継ぐ者
その後話は進み、イルの殺害とカナ達の行方不明の件を公にすれば国内の混乱を招き、部族同士の争いを煽ることになる。そもそも、国内は不安定でいつ北の
「眠い。眠い眠い、難しい話は年寄りには眠いわ。ワシは帰る」
今まで口を挟まなかったムンドクが自分は将軍ではない、将軍であるハクを呼んでから話をしろ、だから自分は帰ると言い出す。だが、ここでスウォンを王に承認しなければ風の部族はますます
「うーん…、五部族全ての承認を得られなくては、私は王にはなれません」
スウォンが頭をぽりぽり搔きながら呑気に言う。
「しかし王がいなければ国は立ち行きませんし…、どうしたら認めて頂けるでしょうかねー」
「スウォン様がヨナ姫と婚礼をあげて正式に高華の王となられるのでしたら、ワシは大喜びで祝いの品を献上したじゃろう」
ムンドクの言葉を聞いたスウォンは少し下を向いて悲しい顔になる。
「それに、ハクやカナは理由もなしに城を去ったりはせん。ワシはスウォン様の即位を承認できない」
「三日後…、新王即位式を執り行います。風の部族の承認がなければ、即位式は行えません。しかし三日後ムンドク長老は必ず来て下さると信じています。風牙の都の
「……悲しい事です。スウォン様、あなたの事はハクやカナ同様、孫のように思っておった」
背を向けながら話すムンドクの表情は、誰も見ることが出来ないが、きっと寂しくて悲しい表情をしているだろう。
五部族会議が終わり、スウォンとスジンは外で話しをしていた。
「ヨナ姫やハク将軍、カナ副将軍を追わず殺さずとは、もし三人の口から真実が広まれば」
「ハクとカナは馬鹿じゃないです。真実を広め、騒ぎを起こせば逆にヨナ姫の命が危ない。姫を守る為、今はじっと息を潜めている事でしょう。風の部族の反発に備えて、カン将軍は次の計画に移って下さい」
「御意」
スジンはスウォンからの命を受け、下がる。塀の上から外を眺めていたスウォンは、馬に乗り風牙の都に帰るムンドクを見つけた。
「……ありがとう。孫のようにって言ってくれて、嬉しかったです。ムンドク師匠」
スウォンの言葉は誰にも聞かれることなく、広い空に消えていったのだった。