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「駄目です」
彼女の言動はいつも突飛ない。
「ちょっともダメ?」
僕のドローンを抱えて上目遣いにうるうると訴えるカノン。
今回は何事かと言うと、突然僕のドローンに乗ってみたいと言い出したのだ。
これはおもちゃじゃないし、それにーー。
「そもそもすぐに乗れるような物じゃないんです。浮いてるんですよこれ、わかります?」
落ちて怪我でもしたらどうするんだ。
僕の心配を余所に、諦めないカノンは僕に縋る。
「やってみないとわかんないし!ほら、チャレンジチャレンジ!」
ガッツポーズを取りながらにっこりと笑うカノン。
全く、手が折れる。
「……いいでしょう。
ただし、少しでも危なそうだったら降りてもらいますからね。この場で少しだけですよ」
念を押すとカノンはうんうんと大きく頷いた。
早速ドローンを開くと、僕の肩に手を置いてそっと足を乗せる。
「わ、わ、わっ」
両足を置いたところでバランスを崩したがなんとか立て直した。
一瞬背筋が凍ったが顔には出さなかった……と、思う。
「肩から手、離せます?」
「う、うん」
促すと、カノンはそっと僕の肩から手を離した。
「み、見て!乗れてる!」
「そのようでーーーーっ!?」
ゆっくりと前のめりになるカノン。
言葉より先に体が反応した。
スローに見える彼女を捕まえるのは簡単だった。
そう、捕まえるまでは。
「ーーーーぅぐ!ーーっ!!」
ーードスン。
今日ほど体を鍛えておけばよかったと思った日はないだろう。
僕はカノンを抱えたまま思い切り床に尻餅をついて倒れた。
「ハッカー!」
心配そうに僕を覗き込むカノン。
「ぐ……全く……!少しダイエットが必要では?」
全身に響いたようで、起き上がるのには少し時間がかかりそうだ。
僕は横になりながら、僕の上に乗った彼女に言った。
「怪我、ありませんか」
「うん……!!ごめんね、ごめんね……」
瞳に涙を溜めて謝っている。
こんなことになるならやはりドローンなんかに乗せなければ良かったと少し後悔した。
寝たままの体勢。なんとか動く腕だけで頭を撫でてやる。
「僕は平気ですから。カノンも泣かないで」
泣かせてしまった……。これは僕にとっての大誤算だった。
カノンの望みは叶えてあげたい。
しばらくはドローンの改良に専念すべきか。
「次は少し場所を変えてやりましょう。きっと上手くいきますよ」
軋む体をなんとか起こして泣きじゃくる彼女を抱え直した。
魔法は使えないけど、叶う希望があるなら全力でやってみようじゃないか。
もう少しだけ待ってなよ。僕のお姫様。
end.
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