Hard worker
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「天才に不可能なんてないんですよ」
彼の口からよく聞く言葉。
ボロボロの雑居ビルの一室。
今日も今日とてカタカタとキーボードを奏でている彼を眺める。
天才、なんてそんな安っぽいものではないだろう。
「君って真面目だよねぇ……」
「はい?」
高速で動いていた指が止まり、丸い目を更に丸くさせてこちらを向いた。
「僕が真面目?あなた変わった意見を持ってますね」
「そうかなー」
カントウに行きたいだかなんだか知らないけど、その為に直向きに自身の技量を磨いている。
好奇心旺盛だったり、そんなところはもちろんあるのだろうが、ただひたすらに一途に取り組む姿勢は真面目以外の何者でもなかった。
私からすればーー。
「天才っていうより努力家って感じだよ」
「努力だなんてそんな泥臭い言葉が似合うつもりはありませんが」
まあ悪い気はしませんね、と付け加えていた。
「ハッカーはそんなにカンサイから出て行きたいんだ?」
私といるだけじゃ物足りないのかなあ、なんて少しやさぐれる。
退屈だともよく言ってる。正直ちょっと寂しい。
「そうですね、早く僕を満たしてくれる……そんな世界に行きたいものです」
「満たしてくれる、ねえ」
「ええ、カノンも早く行きたいでしょう?」
「え?」
少し微笑んでそんなことを言うハッカー。
私はというと思いもしなかった言葉に脳の処理が追いつかない。
「私、も、一緒に行くの?」
何を言っているんです?と目の前の少年は事も無げに言う。
「てっきりハッカー一人でカンサイから出ちゃうのかなーって思ってたから。一緒だと足手まといになっちゃいそうだし」
「そんなこと……」
一人でデスクに着いていたハッカーが私へと歩み寄り、そのまま隣に腰掛けた。ソファが沈む。
「カノンがいないと物足りませんから」
今まで見たことがないような笑顔だった。
至近距離からの不意打ちに言葉が詰まる。
「それに、一人も二人も変わりませんよ」
なんと言っても天才ですから。
自信たっぷりに言い放つ様はいつもの彼だった。
彼ならきっとカントウ行きの切符を勝ち取ってしまうのだろう。
なぜなら彼は、最高の努力家なのだから。
end.
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