drowse/ハッカー
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ーーなんだか身体の節々が痛い……。
体が、重い……?
横になっている体を起こそうとするも体勢が悪いのか、はたまた自分の体が重いのか上手く起き上がることができない。
周りは闇。辺りを見回すがこれといって何も見えない。
そしてもう一つ。お腹の辺りが妙にあたたかい。
動く手を伸ばしてそっと確認してみる。
「ひゃ……っ」
思わず声が漏れた。
私のお腹に何か柔らかいものが乗っている。
生き物だ。眠っているのか動く気配はない。
どうやらこの生き物のせいでうまく起き上がることができなかったらしい。
起こさないよう気をつけながら、少しずつ体制を整えて上体を立て直した。
(ーーーーここはーー)
ーー私の部屋だ。
そうだ、思い出してきた。
仕事から帰った私は少し横になろうとベッドにダイブ、そしてそのままうたた寝してしまったのだ。
ベッドについた手元用のライトを手探りで探す。
腰から下を動かすと乗っている"何か"が目を覚ましそうなので慎重に。
なんとかスイッチに手が届き、視界が広がった。
「…………」
まず目に入ったのはよく知った顔。
無防備にも気持ちよさそうに寝息を立てながら私の膝に頭を乗せている。
ご丁寧に腰に腕まで回して。通りで動けないわけだ。
「ハッカー……。いつの間に……」
愛用の帽子は吹っ飛び、いつもならキチンと留まっている上着も全開だ。
明らかに気の抜けた格好に、何があったとヒヤヒヤしていた自分が馬鹿らしくなる。
そっと頭を撫でてみる。
ふわふわで柔らかい毛はまるで猫だ。
「こうしてると可愛いんだけどな……」
日頃の生意気さからは程遠いその寝姿を見ていると、なんだかまた眠たくなってくる。
「もー……、仕方ないなあ……」
幸いここはベッドの上だ。このままブランケットでもかけて寝かせてやろう、そう思い、彼の下から抜け出すために体をずらそうとし、
「……カノン、だめだよ……」
回されていた腕に力が入ったのを感じた。
「な、起きて……!?」
「起きてない……、まだ、寝てま……す……」
起きているだろうと思ったがどうやら半分は寝ているらしい。
つまり全力で寝ぼけているようだった。
いつもの敬語が時々砕けているのもそのせいだろう。
「何か掛けるもの持ってくるから少し待ってて」
優しく声をかけるも動く気は全くないようだ。
そっと回された腕を解いて立ち上がった。
と、同時に、
「え、ちょ、わぁっ!」
そのまま手を掴んで引き戻されて、
「……駄目だと、言いませんでしたか?」
再びベッドに座る形となった私はその勢いのまま横に倒された。
「……意外と力、あるん、デスネ……ハッカー……」
「…………」
どうやら彼は私を離す気はないらしい。
先ほどよりもガッチリとホールドされてとても抜けられそうにない。
このままだと寝返りも満足にできなさそうだ。
明日が休みでよかったよ、本当……。
観念した私はハッカーの髪に指を通した。
「風邪ひいちゃうよ?」
「……僕は別に…………そう、ですね」
もごもご呟いたかと思うと突然に起き上がり着崩れた上着を脱ぎ始めた。
白シャツ一枚となったハッカー。なかなかお目にかかれない光景に目が覚めた。
「この上着、体温調節機能がついているので。……ほら、これでいいでしょう」
脱いだ上着を私に掛けて、また先程と同じ体制に戻った。
いやいやいや。
「ハッカーが風邪ひいてーー」
「カノンがこうしてくれていれば問題ありません。あなたが一番あたたかいんですから」
こうなったらテコでも動かない。
「明日辛くなっても看病しないからね」
「それは残念です」
顔は見えないがなんとなく笑っている気がする。
こんなに甘えん坊だったかなと思いつつ、それだけ心を許しているのかと少し嬉しくなった。
「おやすみ、ハッカー」
「カノンもおやすみなさい」
たまにはいいかと思いつつ、明日風邪をひくであろうハッカーのための朝ご飯を考えながら目を閉じた。
end.
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