Crushing
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大好きだよ、と。今日も甘い言葉を囁かれる。
チョコレートよりも甘い言葉。
「私は好きじゃないから」
ぺったりとのしかかってくる白いそれに冷たく言い放つ。
私の自室。唐突に窓が開いたかと思うといつもこの状態だ。
思ってもいないとげとげしい言葉がつい口をついて私は顔をしかめた。
白いふわふわのマシュマロが好きなきみ。
人の臓物が好きなきみ。
色とりどりのナイフが好きなきみ。
そして何より、血のような真っ赤っかが好きなきみ。
「ねえ」
「なにー?」
耳元から軽やかな返事。
見なくてもにこにこの笑顔なのがわかる。
「私は白くも赤くも無いし、身体の中身ははみ出てない。きみの"好き"ルールの中に私はいないと思うんだけど」
左肩に顎を乗せられて腕を回された。
強くもなく、弱くもない力加減。
私は特に抵抗もせずにそれを受け入れる。
「んー、なんでだろうねー」
うーん、と小さな唸り声。
耳元がくすぐったい。
世界的な殺人鬼に背中から抱かれてどこか安心している自分の神経を疑う。
「カノンはどこか赤い感じがするんだあ。ハッキリは分からないけど……殺したいのとはまた違ってどっちかって言うと……」
食べちゃいたいって感じかなあ?
「ひゃっ」
言い終わるのが早いか耳をべろりと舐められた。
驚いて振り向くといつもと同じ無邪気な笑顔。
「そ、そういうこと誰にでもすぐしないの」
「えー?カノンにだけ、特別なのにぃ」
「嬉しくない!」
動揺のあまり語彙が落ちる。
回された腕を解こうとするも外れない。なんつー馬鹿力。
「カノンは僕のこと嫌い?」
「大っ嫌い」
肩越しにギロリと睨んで言い放つが、
「……カノンは嘘つきだね」
柔らかな笑顔で受け流されてしまった。
"嘘つき"。
そうかもしれない。素直になれない私はこれからも変わらず彼に伝え続けるのだろう。
「殺人鬼なんて、本当に、大嫌いよ……」
真っ赤な嘘を。
end.
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