聖女のため息
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「はぁ…………」
どうしたんだろう、ため息なんて吐いちゃって。
君が憂鬱だと僕もなんだか気分が落ちちゃうなあ。
少し遠巻きにしていたカノンに駆け寄って顔を覗き込む。
「なにか嫌なことでもあった?」
「嫌なことありまくりだよ…………」
頭を抱えるカノンも可愛い。
だけど僕は君の言う意味がわからなくて首を傾げるしかなかった。
「なんで君は行くところ行くところ血の海にしちゃうかなあ……?」
赤色に染まった世界、素敵じゃない?
あ、もしかして、
「ごめんよ。もしかして汚れちゃった?」
返り血が跳ねちゃったのかな。
心配になってカノンの周りを回って、頭のてっぺんからつま先までまじまじと見つめる。
うん、どこも汚れてないみたい。よかったあ。
「そういうことじゃなくて……」
「うん?」
「突然走り出したかと思ったらこんなことしちゃって……」
はぁ、とまたため息。
そう言われてもカノンを殺すわけにはいかないし、だけどこの衝動を抑えるためには何か誰かを殺さなくっちゃ。
「怪我はないの?大丈夫?」
心配してくれるんだ。優しいなあ。
「うん、返り血ひとつ付いてないよっ!カノンが一緒だと調子いいんだあ」
大切なナイフを仕舞いながら笑顔で答える。
カノンといると僕はいつも笑顔になっちゃうね。
やれやれって感じのカノン。あ、そうだ!
「カノン」
スッと近付いて、
「わわ、ちょっ、落ちーー」
カノンを抱えた。うん、お姫様抱っこってやつ。
「……重いでしょ」
「何言ってるの?まるで羽根みたいにふわふわ軽いよ」
カノンは僕の首に腕を回すと、そうですかと呟いたのが首元から聞こえてきた。
「じゃ、いこっか」
僕が作った赤い海。ここを渡るのカノンが嫌がりそうだから僕が運んであげるね。
運び屋みたい?なんか居たね、そーゆーの。
軽すぎて本当に居るのか不安になった僕はカノンの方をちら、と見ると、彼女はぎゅっと目を瞑って固まっていた。
「ふふ」
カノンを抱えたまま、一足飛びに民家の屋根に登り、駆け抜ける。
靴底に付着した血もそろそろ乾いたかな。
血は大好き。赤いから。
血は嫌い。ほっとくと黒くなるから。
血まみれの僕もほったらかしにしてると黒くなっちゃうから、こうして上書きをする。他人の赤で。
「カノンは僕のお守りなんだぁ」
「なにー!?何か言った!?」
「僕が黒くなっちゃったらその時はカノンに殺されたいな」
「なんか物騒なこと言ってない!?」
僕が黒くなるってことはそういうこと。きっともう動けなくなって、誰も殺せなくて、ゆっくり黒く染まっていくんだ。
だからどうかこのナイフで殺してほしい。
「その時はよろしくね、カノン」
end.
タイトルとテーマは殺人鬼のナイフ、聖女のため息から拝借しました。
いつもはそれっぽくなるという理由で英題にしているのですが、増えてくると分かりにくいですね。
そしてアクダマの皆さんはたまに関西弁が混ざっているのでちょこっと混ぜてみました。
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