先輩の気まぐれ
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「誕生日、だァ?」
いつになく真剣に見上げてくる顔を、高杉晋助はいつものように気のない声で聞き返す。
「そうです。先輩はいつも欲しいものとかやりたいこととか、わたしに話してくれないので」
「……で、知りたいなら聞けばいい、と?」
「はい。また子ちゃんも是非知りたい、って」
協力してくれました、と、通せんぼのように両手を広げる。
いつも通る正門を避けて、裏門から帰ろうとしたところを引き留められた。何とはなしに嫌な予感がしたのは、これのせいだろうか。
部活だなんだと、やたらと構ってくるクラスメイト、万斉の誘いで学校に出てきたものの、本人は演奏を始めるやいなや自分の世界に浸り始めたので、高杉は帰ることにしたのだった。
「……」
まさかこの面倒な女まで来ているとは。
はぁ、とあからさまにため息をついてみせる。
誕生日だからと、後輩を名乗るこの女はやけに張り切っている。
高杉にとって、特別な日でもなんでもない。自分が生まれた日など、別に興味はない。
「欲しいものもやりたいことも、ありゃしねぇよ」
こんな世界では、な。
……別に病を患ってるとかではなく。
欲しいものは何もない。高校大学には行け、という、親の意向に従ったまで。
だから高校だってどこでもよかったし、選ぶ気もなかった。
比較的好きに生きてはいるが、意欲があってこんなところにいるんじゃない。
「構うんじゃねぇよ」
「あ、ちょっ」
無理やり押し退けて、学校の敷地をまたぐ。
咄嗟にシャツの背を引っ張られるが、じろりとにらめば、掴んだ手をびくりと放す。
「あ、の……すみません……」
「……ふん」
興味はない。
こんなことに、意味はない。
「……なんで、そんなに知りてぇんだ」
「えっ」
突然のことに驚いたのか、女は目を見開いてまた見上げてくる。
「なんで、って……そんなの」
手をきつく握り、決心したようにくちびるを噛む。
「好きだからに、決まってます」
驚きはしない、が、やはり好かれる意味がわからない。
高杉自身とこの女子生徒は、特につながりがないのに。
「ふぅん」
やはり興味がない、とでも言うように、高杉はきびすを返す。
存外、深い意味もなかったらしい。
「それだけじゃ、いけませんか」
「……あ?」
ふり絞るような声に、思わず振り返る。
そのまま瞳を揺らしながら、少し声を震わせる。
「ちゃんとした理由もないし、ただ、見てるだけだったけれど……わたし、先輩が好きなんです」
勇気を出したその声が、嘘や冗談ではないことはわかる。
「……へェ」
コツ、と靴を鳴らして、女子生徒に近付く。
そういえば、名前もクラスも知らない。
これからもそこまで興味があるわけではないし、休みが開けたら忘れてしまうかもしれないけれど。
「お前、名前は?」
今この瞬間は、知っていてもいいかもしれない。
「わたし、は……」
赤くなった瞳が、見上げる。
些細な楽しみくらいには、なるかもしれない。
いつになく真剣に見上げてくる顔を、高杉晋助はいつものように気のない声で聞き返す。
「そうです。先輩はいつも欲しいものとかやりたいこととか、わたしに話してくれないので」
「……で、知りたいなら聞けばいい、と?」
「はい。また子ちゃんも是非知りたい、って」
協力してくれました、と、通せんぼのように両手を広げる。
いつも通る正門を避けて、裏門から帰ろうとしたところを引き留められた。何とはなしに嫌な予感がしたのは、これのせいだろうか。
部活だなんだと、やたらと構ってくるクラスメイト、万斉の誘いで学校に出てきたものの、本人は演奏を始めるやいなや自分の世界に浸り始めたので、高杉は帰ることにしたのだった。
「……」
まさかこの面倒な女まで来ているとは。
はぁ、とあからさまにため息をついてみせる。
誕生日だからと、後輩を名乗るこの女はやけに張り切っている。
高杉にとって、特別な日でもなんでもない。自分が生まれた日など、別に興味はない。
「欲しいものもやりたいことも、ありゃしねぇよ」
こんな世界では、な。
……別に病を患ってるとかではなく。
欲しいものは何もない。高校大学には行け、という、親の意向に従ったまで。
だから高校だってどこでもよかったし、選ぶ気もなかった。
比較的好きに生きてはいるが、意欲があってこんなところにいるんじゃない。
「構うんじゃねぇよ」
「あ、ちょっ」
無理やり押し退けて、学校の敷地をまたぐ。
咄嗟にシャツの背を引っ張られるが、じろりとにらめば、掴んだ手をびくりと放す。
「あ、の……すみません……」
「……ふん」
興味はない。
こんなことに、意味はない。
「……なんで、そんなに知りてぇんだ」
「えっ」
突然のことに驚いたのか、女は目を見開いてまた見上げてくる。
「なんで、って……そんなの」
手をきつく握り、決心したようにくちびるを噛む。
「好きだからに、決まってます」
驚きはしない、が、やはり好かれる意味がわからない。
高杉自身とこの女子生徒は、特につながりがないのに。
「ふぅん」
やはり興味がない、とでも言うように、高杉はきびすを返す。
存外、深い意味もなかったらしい。
「それだけじゃ、いけませんか」
「……あ?」
ふり絞るような声に、思わず振り返る。
そのまま瞳を揺らしながら、少し声を震わせる。
「ちゃんとした理由もないし、ただ、見てるだけだったけれど……わたし、先輩が好きなんです」
勇気を出したその声が、嘘や冗談ではないことはわかる。
「……へェ」
コツ、と靴を鳴らして、女子生徒に近付く。
そういえば、名前もクラスも知らない。
これからもそこまで興味があるわけではないし、休みが開けたら忘れてしまうかもしれないけれど。
「お前、名前は?」
今この瞬間は、知っていてもいいかもしれない。
「わたし、は……」
赤くなった瞳が、見上げる。
些細な楽しみくらいには、なるかもしれない。
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