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ぺら、と薄い本のページをめくる。以前から何度も読み返しているその短編小説は、何度読んでも面白くて、いくらでも考察できて。最近は、この本を読むのが日課になりつつあった。力を抜いて、ソファに体重を預ける。普段は儀式に駆り出されて、いつも疲れているから、たまにはゆっくりと本を読むのも悪くない。
「やあ、ナマエ。久しぶりだね」
ふと、聞き慣れた声が聞こえる。今、一番会いたくない人が、やって来てしまった。本ぐらい、静かに読みたいのに…というか、なんで勝手に部屋に入ってくるんだ。
「…昨日も会ったばっかりでしょう、ゴーストフェイスさん」
「俺は毎秒君の隣にいたいと思ってるよ」
「そうですか。生憎、今は本を読んでいますので。早めにお帰りください」
「酷いなあ、折角俺が来てるのに」
「誰も来て欲しいだなんて言ってませんよ」
「もう、ナマエってばつれないなあ」
隣に見える煩い仮面の事は無視して、本に視線を戻す。ページをめくる音に混ざった陽気な声は、どう見たって全く耳を傾けていないのに絶えず話しかけてくる。
「…ねー、ナマエちゃんってば〜。そんなに俺に興味ないの?」
「今は本を読んでるんです」
「そんな事言ったって、それ前も読んでたじゃん」
「なんで知ってるんですか」
「そりゃあ君の事をずっと見てるからだよ」
「勝手に見ないでください、このストーカー」
どれだけ本に集中しても、隣の仮面がぺらぺらと煩くて、集中できない。映画でも見ようだの、デートに行こうだの。そもそも、何故恋人のように扱われているんだ。
「…はあ。静かにして下さい。本を、読みたいんですよ」
「……」
急に、隣の男が静かになる。いつの間にか腕を絡ませてきているのは気になるけれど、本の邪魔をして来ないなら良い。さて、これでやっと静かに本が読める。
__と、思っていたのだが。
不意に腕を引っ張られて、ソファに寝そべるような体勢になる。
私の上には、愉快な表情の仮面。
「…な、」
「…俺の事、もっと見て欲しいなあ、なんてね。その本から君の視線を奪ってやりたい。そんなに熱心な目で見られて、嫉妬しちゃいそう」
「…ぅ、うるさいですよ、そ、そもそも、普段から見てるなら、私が何もやってない時に来れば良いじゃないですか...」
まさか馬乗りになられるとは思ってもみなくて、思わず視線を逸らす。…ドキドキ、してしまった。ほんのりと甘い匂いがして、顔に熱が昇るのを感じる。
「あっはは、顔真っ赤にしちゃってかわい〜。何?ドキドキしちゃった?惚れていいよ?」
「ドキドキしませんし惚れません!い、いいから退いてください!」
「それは出来ないかな〜、ナマエがドキドキしてくれるまで続けるよ」
「っつ、続けるって__」
不意に、背中に手を回され、身体を抱き上げられる。彼の胸板に頭を埋めるような形になってしまって、体付きがしっかりしてるだとか、鼓動が聞こえるだとか、暖かいだとか、色々な情報が同時に流れ込んできて、頭がパンクしてしまいそうだ。
「ナマエ。好きだよ、君の事。ここまで本気で好きになったの、君が初めてなんだよ。君は綺麗で、可愛くて、仕草一つまで全部愛らしいんだ。好きだ、大好き。君の為ならなんでも出来る」
「っな…」
耳元で囁かれて、頭がくらくらしてくる。心拍数が上がるのを感じる。
「ナマエ。ねえ、ドキドキした?してない?」
「っし、しました!しましたよ、もう!」
「ほんとに?適当に言ってない?」
「適当に言っているように見えますか!」
「嘘嘘、そんな訳ないよ!…本気で俺に惚れちゃった?なーんてね!」
「…っ!…そんな…」
「…何その反応、まさかほんとに好きになっちゃった?」
…そうかも、しれない。
なんなら、前から好きだったのかもしれない。来たら来たでうざったいと思うけれど、彼がいない時間は退屈だったし、彼と話している時間は、なんだかんだ一番楽しかった。
「…かも、しれません、けど…」
「…え、ほんと?…あーだめ、それ可愛すぎ。耳まで真っ赤にしちゃってもー、カメラ持ってきたら良かった」
「い、一々言わないでください!」
「あー、もうなんだっていいや。君と両想いになれたって事でしょ?君に辛く当たられてもなんでもいいよ。ねえナマエ、キスしていい?」
「き、き…!?そ、それはまだダメです!心の準備というものが__」
「だぁめ、拒否権なんてあげないんだから」
ぐい、と腕を引かれて、思わずぐっと目を閉じた。
ちゅ。
軽くて優しいリップ音が、静かな部屋に響く。
いつの間にか手から離れていた本はぱたりと閉じてしまっていて、どのページを読んでいたのかは全く分からない状態になってしまっていた。
__ああ、でも。
これからは、静かに本を読む時間は、なくなりそうだなあ。
ふわふわした意識の中で、ぼんやりとそう思った。
「やあ、ナマエ。久しぶりだね」
ふと、聞き慣れた声が聞こえる。今、一番会いたくない人が、やって来てしまった。本ぐらい、静かに読みたいのに…というか、なんで勝手に部屋に入ってくるんだ。
「…昨日も会ったばっかりでしょう、ゴーストフェイスさん」
「俺は毎秒君の隣にいたいと思ってるよ」
「そうですか。生憎、今は本を読んでいますので。早めにお帰りください」
「酷いなあ、折角俺が来てるのに」
「誰も来て欲しいだなんて言ってませんよ」
「もう、ナマエってばつれないなあ」
隣に見える煩い仮面の事は無視して、本に視線を戻す。ページをめくる音に混ざった陽気な声は、どう見たって全く耳を傾けていないのに絶えず話しかけてくる。
「…ねー、ナマエちゃんってば〜。そんなに俺に興味ないの?」
「今は本を読んでるんです」
「そんな事言ったって、それ前も読んでたじゃん」
「なんで知ってるんですか」
「そりゃあ君の事をずっと見てるからだよ」
「勝手に見ないでください、このストーカー」
どれだけ本に集中しても、隣の仮面がぺらぺらと煩くて、集中できない。映画でも見ようだの、デートに行こうだの。そもそも、何故恋人のように扱われているんだ。
「…はあ。静かにして下さい。本を、読みたいんですよ」
「……」
急に、隣の男が静かになる。いつの間にか腕を絡ませてきているのは気になるけれど、本の邪魔をして来ないなら良い。さて、これでやっと静かに本が読める。
__と、思っていたのだが。
不意に腕を引っ張られて、ソファに寝そべるような体勢になる。
私の上には、愉快な表情の仮面。
「…な、」
「…俺の事、もっと見て欲しいなあ、なんてね。その本から君の視線を奪ってやりたい。そんなに熱心な目で見られて、嫉妬しちゃいそう」
「…ぅ、うるさいですよ、そ、そもそも、普段から見てるなら、私が何もやってない時に来れば良いじゃないですか...」
まさか馬乗りになられるとは思ってもみなくて、思わず視線を逸らす。…ドキドキ、してしまった。ほんのりと甘い匂いがして、顔に熱が昇るのを感じる。
「あっはは、顔真っ赤にしちゃってかわい〜。何?ドキドキしちゃった?惚れていいよ?」
「ドキドキしませんし惚れません!い、いいから退いてください!」
「それは出来ないかな〜、ナマエがドキドキしてくれるまで続けるよ」
「っつ、続けるって__」
不意に、背中に手を回され、身体を抱き上げられる。彼の胸板に頭を埋めるような形になってしまって、体付きがしっかりしてるだとか、鼓動が聞こえるだとか、暖かいだとか、色々な情報が同時に流れ込んできて、頭がパンクしてしまいそうだ。
「ナマエ。好きだよ、君の事。ここまで本気で好きになったの、君が初めてなんだよ。君は綺麗で、可愛くて、仕草一つまで全部愛らしいんだ。好きだ、大好き。君の為ならなんでも出来る」
「っな…」
耳元で囁かれて、頭がくらくらしてくる。心拍数が上がるのを感じる。
「ナマエ。ねえ、ドキドキした?してない?」
「っし、しました!しましたよ、もう!」
「ほんとに?適当に言ってない?」
「適当に言っているように見えますか!」
「嘘嘘、そんな訳ないよ!…本気で俺に惚れちゃった?なーんてね!」
「…っ!…そんな…」
「…何その反応、まさかほんとに好きになっちゃった?」
…そうかも、しれない。
なんなら、前から好きだったのかもしれない。来たら来たでうざったいと思うけれど、彼がいない時間は退屈だったし、彼と話している時間は、なんだかんだ一番楽しかった。
「…かも、しれません、けど…」
「…え、ほんと?…あーだめ、それ可愛すぎ。耳まで真っ赤にしちゃってもー、カメラ持ってきたら良かった」
「い、一々言わないでください!」
「あー、もうなんだっていいや。君と両想いになれたって事でしょ?君に辛く当たられてもなんでもいいよ。ねえナマエ、キスしていい?」
「き、き…!?そ、それはまだダメです!心の準備というものが__」
「だぁめ、拒否権なんてあげないんだから」
ぐい、と腕を引かれて、思わずぐっと目を閉じた。
ちゅ。
軽くて優しいリップ音が、静かな部屋に響く。
いつの間にか手から離れていた本はぱたりと閉じてしまっていて、どのページを読んでいたのかは全く分からない状態になってしまっていた。
__ああ、でも。
これからは、静かに本を読む時間は、なくなりそうだなあ。
ふわふわした意識の中で、ぼんやりとそう思った。