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「……ナマエ。また会えたね」
彼は、私の顔を見るなり、挨拶もなしにいつもそう言う。
いつもと変わらない表情だったけれど、声には少しの震えがあって。
そんな彼の様子を、初めは気にしていなかった。彼の格好って寒そうだしな、とか、呑気な事を考えながら。
「……ナマエ……また……会え、たね」
聞き覚えのある、けれどいつもより震えた声を不思議に思いつつ声に振り返ると。
そこには、足を引きずり、腕から血を流し、身体に傷が刻まれた彼の姿。
どうして?彼は殺人鬼なのに?他の殺人鬼と喧嘩をした?それとも何か……
驚きで声が出ず固まって居る間に、彼が近付いて来る。
一歩ずつ、ゆっくりと。
助けて。そんな言葉が聞こえてきそうな程、ゆっくりした歩みで距離を詰めてくる。
目の前まで来た彼に手を伸ばされ、反射的に目を瞑る。
彼の、冷たく、血に濡れた手が、頬に触れた。
驚いて目を開けると、彼は苦しげに眉を寄せている。
「あぁ……ナマエ、だ」
絞り出すような掠れた声で私の名前を呟いたかと思うと、いつものように微笑む彼。
その姿は、どこか儚げに見えて。
「レイ……ス、それ……」
「 」
「少し話があるから、あの車屋に来て」
始まりは、ある日突然、儀式の直後にエンティティに呼び出された時。
儀式の成績は悪くないし、殺人鬼間で何かあった訳でもない。特に何とも思わず、またあの邪神の気紛れだろう、と、大人しく向かったのだが…
「この世界の神たる物にわからない訳がないんだから、初めからしなければ良いのにねえ?」
そう言って笑うエンティティの言葉を聞いて、真っ先に彼女の顔が思い浮かんだ。
……ナマエ。
「何の、話……ですか」
「はは。君、本当嘘下手だね」
「……っ、嘘、なんか」
嘘を見抜かれ、思わず声が詰まる。
……ダメだ、ここでバレちゃ。カマをかけているだけの可能性もあるんだから。
「まあいいや。あの生存者の子、確かに君が好きそうだからね〜。仕方ないよねえ、うんうん。まあ経験した事のない味の感情だったし、放置しとこうと思ったけど……そろそろ、君にも支障が出ているみたいだからね」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
……バレてる。僕が彼女に恋心を抱いている事が。嫌な予感がする。
「……それは……どういう意味、ですか」
「あれ?まだシラを切るつもり?ふーん、まあいいや。君があの子との接触を続けるなら…」
僕の背中を、見覚えのあるエンティティの爪がなぞる。
そして、それを深く刺し、ぐり、とそのまま傷を抉られる。
「う、っ……!」
鋭い痛みに、思わず悲鳴が漏れる。
耐えきれず地面に倒れ伏す僕を見て満足そうに笑い声を上げたその邪神は、「じゃあね。次までには考えを改めな」とだけ言い残し、消えて行った。
僕、は。
「また会えたね」
「ほんと、いつもそれ言うね、レイスは」
背中の傷を匿いつつ、彼女に近づく。
何も知らない彼女の無邪気な微笑みだけが、僕の救いになる。
だから、もっと、笑って見せてくれ。僕の事なんて、気にしなくて良いから。
どうか、君にはこのままで居て欲しい。このまま、ずっと、笑って。
日常は突然崩れ去る。
エンティティによる拷問は続けられた。でも、僕はそんなの気にしなかった。彼女に会う為だと思えば、安い物だった。
身体から、ぼた、と血が落ちる。
もう、左足がまともに動きそうにない。それでも、いつも通り、彼女の名前を呼んで、近づいた。
「レイ……ス、それ……」
彼女が、今にも泣きそうな声で、僕の名前を呼ぶ、
……無理もないかな。だって、今にも倒れそうなほど僕の身体は傷ついているし、もう、頭もぼんやりとしてきてる。
彼女の頬に触れる。ああ、君の暖かさも、もう殆ど分からないよ。
……彼女に、ナマエに、伝えなきゃ。
力を振り絞って、切り裂かれた喉から、精一杯音を出す。
「愛、してる」
彼は、私の顔を見るなり、挨拶もなしにいつもそう言う。
いつもと変わらない表情だったけれど、声には少しの震えがあって。
そんな彼の様子を、初めは気にしていなかった。彼の格好って寒そうだしな、とか、呑気な事を考えながら。
「……ナマエ……また……会え、たね」
聞き覚えのある、けれどいつもより震えた声を不思議に思いつつ声に振り返ると。
そこには、足を引きずり、腕から血を流し、身体に傷が刻まれた彼の姿。
どうして?彼は殺人鬼なのに?他の殺人鬼と喧嘩をした?それとも何か……
驚きで声が出ず固まって居る間に、彼が近付いて来る。
一歩ずつ、ゆっくりと。
助けて。そんな言葉が聞こえてきそうな程、ゆっくりした歩みで距離を詰めてくる。
目の前まで来た彼に手を伸ばされ、反射的に目を瞑る。
彼の、冷たく、血に濡れた手が、頬に触れた。
驚いて目を開けると、彼は苦しげに眉を寄せている。
「あぁ……ナマエ、だ」
絞り出すような掠れた声で私の名前を呟いたかと思うと、いつものように微笑む彼。
その姿は、どこか儚げに見えて。
「レイ……ス、それ……」
「 」
「少し話があるから、あの車屋に来て」
始まりは、ある日突然、儀式の直後にエンティティに呼び出された時。
儀式の成績は悪くないし、殺人鬼間で何かあった訳でもない。特に何とも思わず、またあの邪神の気紛れだろう、と、大人しく向かったのだが…
「この世界の神たる物にわからない訳がないんだから、初めからしなければ良いのにねえ?」
そう言って笑うエンティティの言葉を聞いて、真っ先に彼女の顔が思い浮かんだ。
……ナマエ。
「何の、話……ですか」
「はは。君、本当嘘下手だね」
「……っ、嘘、なんか」
嘘を見抜かれ、思わず声が詰まる。
……ダメだ、ここでバレちゃ。カマをかけているだけの可能性もあるんだから。
「まあいいや。あの生存者の子、確かに君が好きそうだからね〜。仕方ないよねえ、うんうん。まあ経験した事のない味の感情だったし、放置しとこうと思ったけど……そろそろ、君にも支障が出ているみたいだからね」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
……バレてる。僕が彼女に恋心を抱いている事が。嫌な予感がする。
「……それは……どういう意味、ですか」
「あれ?まだシラを切るつもり?ふーん、まあいいや。君があの子との接触を続けるなら…」
僕の背中を、見覚えのあるエンティティの爪がなぞる。
そして、それを深く刺し、ぐり、とそのまま傷を抉られる。
「う、っ……!」
鋭い痛みに、思わず悲鳴が漏れる。
耐えきれず地面に倒れ伏す僕を見て満足そうに笑い声を上げたその邪神は、「じゃあね。次までには考えを改めな」とだけ言い残し、消えて行った。
僕、は。
「また会えたね」
「ほんと、いつもそれ言うね、レイスは」
背中の傷を匿いつつ、彼女に近づく。
何も知らない彼女の無邪気な微笑みだけが、僕の救いになる。
だから、もっと、笑って見せてくれ。僕の事なんて、気にしなくて良いから。
どうか、君にはこのままで居て欲しい。このまま、ずっと、笑って。
日常は突然崩れ去る。
エンティティによる拷問は続けられた。でも、僕はそんなの気にしなかった。彼女に会う為だと思えば、安い物だった。
身体から、ぼた、と血が落ちる。
もう、左足がまともに動きそうにない。それでも、いつも通り、彼女の名前を呼んで、近づいた。
「レイ……ス、それ……」
彼女が、今にも泣きそうな声で、僕の名前を呼ぶ、
……無理もないかな。だって、今にも倒れそうなほど僕の身体は傷ついているし、もう、頭もぼんやりとしてきてる。
彼女の頬に触れる。ああ、君の暖かさも、もう殆ど分からないよ。
……彼女に、ナマエに、伝えなきゃ。
力を振り絞って、切り裂かれた喉から、精一杯音を出す。
「愛、してる」
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