まだ見ぬパッショナート(GO24話)
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「兵頭の化身が……破られた……!?」
南沢は目を見開いたまま、その光景を見つめる。月山国光の選手たちに、動揺が広がる。絶対の守護神。誰も破れないと信じていた兵頭の化身が、真正面から打ち破られたのだ。
「見たド、南沢! これが俺たちのサッカーだド!」
天城が誇らしげに拳を突き上げる。その声が、南沢の胸を鋭く抉った。
(何が……俺たちのサッカーだ)
拳を強く握り締める。
(俺は認めない……お前らのサッカーなど……!)
試合は月山国光のキックオフで再開された。しかし、月山の動きは明らかに鈍っていた。兵頭の化身、必殺タクティクス、絶対だと信じていたものを立て続けに破られ、選手たちの心には迷いが生まれていた。
その様子をベンチから見つめながら、鬼道が静かに口を開く。
「管理サッカーの脆さが、こんな形で出るとはな……」
「脆さ……?」
葵が聞き返す。
円堂は腕を組み、小さく頷いた。
「あぁ。確かに月山国光は強いチームだ。だが、フィフスセクターの管理下の試合ばかりでは、本当の意味で逆境に立たされる事はなかった」
「それが逆境に立たされた……!」
車田が目を見開く。
「それで、月山の動きが鈍くなったんですね……」
青山も納得したように頷く。
鬼道はフィールドを見据えたまま続けた。
「チームの真価が問われるのは、逆境に立たされた時……」
その言葉に、一乃の表情が明るくなる。
「勝てますよね、この試合!」
「ああ。このままならな」
車田は力強く頷いた。だが、南沢だけは違った。拳を強く握り締める。
(ダメだ……)
味方の表情を見る。誰もが怯え、立ち止まっている。
(こいつらに頼っていたんじゃ……勝てる試合も、勝てやしない……!)
その瞬間、浜野から拓人へ送られたパスが視界に入った。南沢は迷わず地を蹴る。鋭く跳び上がり、空中でそのパスを奪い取った。
「なっ!?」
雷門の選手たちが息を呑む。着地と同時にボールを前へ運ぶ。一人、また一人。雷門の選手をかわしながら。
(この試合、負けるわけにはいかないんだ! ここで負けたら……雷門を辞めた意味が……!)
息は切れ、足は悲鳴を上げている。それでも南沢は止まらなかった。
「あれが……あのクールな南沢さんのプレー?」
ベンチから、青山が思わず目を見開く。ひたむきにボールを追う南沢の姿が、月山国光の選手たちの胸を揺さぶる。
だが、南沢の攻撃は長くは続かない。鋭い読みで飛び出した霧野が、南沢の足元からボールを奪い取った。
「長船!」
「ああ!」
その熱に突き動かされるように、長船と金平が動き出す。二人は霧野めがけて、一気に駆け寄った。
「ツインミキサー!!」
激しく土煙が巻き上がる。左右から渦を巻くように迫る二つの巨体に、霧野の身体が飲み込まれた。凄まじい衝撃とともに霧野が吹き飛ばされ、その足元からこぼれたボールを長船が力強く収める。
「南沢! 我らも共に戦うぞ!」
「お主のプレーで目が覚めたわ!」
「長船……金平……」
南沢は驚いたように二人を見つめる。その表情に、わずかな笑みが浮かんだ。
「皆の者!」
兵頭の力強い声が、グラウンドを震わせる。
「この試合――必ず勝つ!」
「「おおっ!!」」
南沢の闘志に応えるように、月山国光の選手たちの瞳にも再び火が灯り、その熱は仲間へと伝わりながら、やがてチーム全体へと広がっていく。
ベンチからその光景を見つめる円堂の表情も、いつになく真剣だった。
「円堂……」
鬼道が隣で声を掛ける。
「ああ」
円堂は大きく頷いた。
「勝ちたいって気持ちが、本気でぶつかり合ってる」
その瞳には、かつて自分たちが戦った数々の試合が映っているようだった。
「これが――サッカーだ!」
もう管理された勝敗ではない。ピッチにあるのは、お互いの勝利への執念だけ。その想いが激しくぶつかり合い、試合はさらに熱を帯びていく。一進一退の攻防。時計の針は、容赦なく終盤へ近づいていた。
ボールを受けた狩屋が、鋭い切り返しで相手をかわす。一人、二人と置き去りにし、一気にゴール前へ迫る。
「いいぞ、狩屋!」
天馬の声が飛ぶ。しかし、その前へ三人の月山国光の選手が立ちはだかった。
「ダメだ! 止められる!」
ベンチの車田が叫ぶ。
「狩屋!」
横から霧野が声を張る。狩屋はわずかに顔をしかめた。
「……チッ」
舌打ち混じりに息を吐く。だが、その足は止まらない。次の瞬間、迷いなく霧野へパスを送った。霧野はワンタッチでボールを流す。その視線はすでに前を見据えていた。
「奏音!」
ボールが一直線に奏音へ届く。トラップした、その瞬間だった。どくん――胸が、再び大きく脈打った。さっきよりも、もっと強く。風が奏音の髪を優しく揺らした。
(……聴こえる。押さえ切れないほどの音が、身体の奥底から響いてくる……)
胸の奥で鳴った小さな音が、今度は一音、また一音と重なっていく。鼓動に合わせるように、それは誰も知らない旋律へと変わり始めていた。
(私も天馬くんに続いてみせる……!)
身体が驚くほど軽い。風に背中を押されるように、一歩、また一歩。
その瞬間――。
「奏音!」
剣城の声が響く。その一声で、奏音の意識は現実へ引き戻された。鳴り響いていた旋律が、ふっと揺らぐ。淡く灯り始めた光も、静かに消えていった。
顔を上げる。ゴール前には、剣城。鋭い眼差しでパスを求めている。相手ゴールを守るのは、化身使いの兵頭。試合の残り時間もあと少し、化身は化身でしか対抗できない。
それなら――京ちゃんなら決めてくれる。
「……っ、くっ! 京ちゃん!」
鋭いパスがゴール前へ走る。
「任せろ!」
剣城は一歩踏み込み、ボールを収める。その瞬間、漆黒の闘気が爆発するように噴き上がった。
「――剣聖ランスロット!」
紫黒のオーラをまとった騎士が剣城の背後に降り立つ。天を衝く大剣。静かに構えたその姿は、戦場を支配する騎士そのものだった。
「ゴールは割らせぬ!」
兵頭も咆哮する。
「――巨神ギガンテス!」
大地を揺るがしながら巨神が立ち上がる。巨大な両腕を広げ、絶対の壁となってゴールを守る。二つの闘気がぶつかり合い、フィールドが震えた。剣城が右足を大きく振り抜く。
「ロストエンジェル!」
眩い光を内包したボールが、漆黒のオーラをまとって一直線に空を裂く。それに呼応するように、ランスロットが大剣を高々と掲げた。
次の瞬間――大剣が振り下ろされる。ボールと刃が重なった瞬間、膨大なエネルギーが弾けた。一撃はそのまま、ゴールへと突き進んでいく。
「ギガンティックボム!」
兵頭も全力で迎え撃つ。ギガンテスは両拳を合わせ、鋼鉄の城門のようにシュートを受け止めた。黒き閃光と岩の壁が激突する。激しい衝撃に大気が震え、轟音がスタジアムを包み込む。
「ぬおおおおぉぉぉっ!!」
兵頭が叫ぶ。
だが――
「行けぇっ! ランスロット!」
剣城の叫びに応えるように、ランスロットの大剣が一際強い光を放った。その一撃を受け止めるギガンテスの巨体が震える。メキッ……。耐え続けていた両腕に、ついに亀裂が走った。
「なっ……!」
兵頭の表情が凍りつく。
次の瞬間――岩の守りを断ち切った黒き一閃が、そのままゴールネットへ突き刺さった。三対二。雷門、逆転。
そして、試合終了を告げる笛が高らかに鳴り響いた。歓喜に包まれる雷門イレブン。仲間たちが勝利を分かち合う中、奏音だけは胸元へそっと手を添える。
(京ちゃんが決めてくれた……でも……)
あのまま前へ踏み出していたら。あの胸の高鳴りの先に、何が待っていたのだろう。答えは分からない。それでも、小さな悔しさだけが胸に残り続けていた。
「……ナイスパス」
剣城は短くそう告げると、小さく息を吐いた。
「うん」
奏音は微笑み、小さく頷いた。
胸の奥では、誰にも聞こえない旋律だけが、静かに鳴り続けていた。
南沢は目を見開いたまま、その光景を見つめる。月山国光の選手たちに、動揺が広がる。絶対の守護神。誰も破れないと信じていた兵頭の化身が、真正面から打ち破られたのだ。
「見たド、南沢! これが俺たちのサッカーだド!」
天城が誇らしげに拳を突き上げる。その声が、南沢の胸を鋭く抉った。
(何が……俺たちのサッカーだ)
拳を強く握り締める。
(俺は認めない……お前らのサッカーなど……!)
試合は月山国光のキックオフで再開された。しかし、月山の動きは明らかに鈍っていた。兵頭の化身、必殺タクティクス、絶対だと信じていたものを立て続けに破られ、選手たちの心には迷いが生まれていた。
その様子をベンチから見つめながら、鬼道が静かに口を開く。
「管理サッカーの脆さが、こんな形で出るとはな……」
「脆さ……?」
葵が聞き返す。
円堂は腕を組み、小さく頷いた。
「あぁ。確かに月山国光は強いチームだ。だが、フィフスセクターの管理下の試合ばかりでは、本当の意味で逆境に立たされる事はなかった」
「それが逆境に立たされた……!」
車田が目を見開く。
「それで、月山の動きが鈍くなったんですね……」
青山も納得したように頷く。
鬼道はフィールドを見据えたまま続けた。
「チームの真価が問われるのは、逆境に立たされた時……」
その言葉に、一乃の表情が明るくなる。
「勝てますよね、この試合!」
「ああ。このままならな」
車田は力強く頷いた。だが、南沢だけは違った。拳を強く握り締める。
(ダメだ……)
味方の表情を見る。誰もが怯え、立ち止まっている。
(こいつらに頼っていたんじゃ……勝てる試合も、勝てやしない……!)
その瞬間、浜野から拓人へ送られたパスが視界に入った。南沢は迷わず地を蹴る。鋭く跳び上がり、空中でそのパスを奪い取った。
「なっ!?」
雷門の選手たちが息を呑む。着地と同時にボールを前へ運ぶ。一人、また一人。雷門の選手をかわしながら。
(この試合、負けるわけにはいかないんだ! ここで負けたら……雷門を辞めた意味が……!)
息は切れ、足は悲鳴を上げている。それでも南沢は止まらなかった。
「あれが……あのクールな南沢さんのプレー?」
ベンチから、青山が思わず目を見開く。ひたむきにボールを追う南沢の姿が、月山国光の選手たちの胸を揺さぶる。
だが、南沢の攻撃は長くは続かない。鋭い読みで飛び出した霧野が、南沢の足元からボールを奪い取った。
「長船!」
「ああ!」
その熱に突き動かされるように、長船と金平が動き出す。二人は霧野めがけて、一気に駆け寄った。
「ツインミキサー!!」
激しく土煙が巻き上がる。左右から渦を巻くように迫る二つの巨体に、霧野の身体が飲み込まれた。凄まじい衝撃とともに霧野が吹き飛ばされ、その足元からこぼれたボールを長船が力強く収める。
「南沢! 我らも共に戦うぞ!」
「お主のプレーで目が覚めたわ!」
「長船……金平……」
南沢は驚いたように二人を見つめる。その表情に、わずかな笑みが浮かんだ。
「皆の者!」
兵頭の力強い声が、グラウンドを震わせる。
「この試合――必ず勝つ!」
「「おおっ!!」」
南沢の闘志に応えるように、月山国光の選手たちの瞳にも再び火が灯り、その熱は仲間へと伝わりながら、やがてチーム全体へと広がっていく。
ベンチからその光景を見つめる円堂の表情も、いつになく真剣だった。
「円堂……」
鬼道が隣で声を掛ける。
「ああ」
円堂は大きく頷いた。
「勝ちたいって気持ちが、本気でぶつかり合ってる」
その瞳には、かつて自分たちが戦った数々の試合が映っているようだった。
「これが――サッカーだ!」
もう管理された勝敗ではない。ピッチにあるのは、お互いの勝利への執念だけ。その想いが激しくぶつかり合い、試合はさらに熱を帯びていく。一進一退の攻防。時計の針は、容赦なく終盤へ近づいていた。
ボールを受けた狩屋が、鋭い切り返しで相手をかわす。一人、二人と置き去りにし、一気にゴール前へ迫る。
「いいぞ、狩屋!」
天馬の声が飛ぶ。しかし、その前へ三人の月山国光の選手が立ちはだかった。
「ダメだ! 止められる!」
ベンチの車田が叫ぶ。
「狩屋!」
横から霧野が声を張る。狩屋はわずかに顔をしかめた。
「……チッ」
舌打ち混じりに息を吐く。だが、その足は止まらない。次の瞬間、迷いなく霧野へパスを送った。霧野はワンタッチでボールを流す。その視線はすでに前を見据えていた。
「奏音!」
ボールが一直線に奏音へ届く。トラップした、その瞬間だった。どくん――胸が、再び大きく脈打った。さっきよりも、もっと強く。風が奏音の髪を優しく揺らした。
(……聴こえる。押さえ切れないほどの音が、身体の奥底から響いてくる……)
胸の奥で鳴った小さな音が、今度は一音、また一音と重なっていく。鼓動に合わせるように、それは誰も知らない旋律へと変わり始めていた。
(私も天馬くんに続いてみせる……!)
身体が驚くほど軽い。風に背中を押されるように、一歩、また一歩。
その瞬間――。
「奏音!」
剣城の声が響く。その一声で、奏音の意識は現実へ引き戻された。鳴り響いていた旋律が、ふっと揺らぐ。淡く灯り始めた光も、静かに消えていった。
顔を上げる。ゴール前には、剣城。鋭い眼差しでパスを求めている。相手ゴールを守るのは、化身使いの兵頭。試合の残り時間もあと少し、化身は化身でしか対抗できない。
それなら――京ちゃんなら決めてくれる。
「……っ、くっ! 京ちゃん!」
鋭いパスがゴール前へ走る。
「任せろ!」
剣城は一歩踏み込み、ボールを収める。その瞬間、漆黒の闘気が爆発するように噴き上がった。
「――剣聖ランスロット!」
紫黒のオーラをまとった騎士が剣城の背後に降り立つ。天を衝く大剣。静かに構えたその姿は、戦場を支配する騎士そのものだった。
「ゴールは割らせぬ!」
兵頭も咆哮する。
「――巨神ギガンテス!」
大地を揺るがしながら巨神が立ち上がる。巨大な両腕を広げ、絶対の壁となってゴールを守る。二つの闘気がぶつかり合い、フィールドが震えた。剣城が右足を大きく振り抜く。
「ロストエンジェル!」
眩い光を内包したボールが、漆黒のオーラをまとって一直線に空を裂く。それに呼応するように、ランスロットが大剣を高々と掲げた。
次の瞬間――大剣が振り下ろされる。ボールと刃が重なった瞬間、膨大なエネルギーが弾けた。一撃はそのまま、ゴールへと突き進んでいく。
「ギガンティックボム!」
兵頭も全力で迎え撃つ。ギガンテスは両拳を合わせ、鋼鉄の城門のようにシュートを受け止めた。黒き閃光と岩の壁が激突する。激しい衝撃に大気が震え、轟音がスタジアムを包み込む。
「ぬおおおおぉぉぉっ!!」
兵頭が叫ぶ。
だが――
「行けぇっ! ランスロット!」
剣城の叫びに応えるように、ランスロットの大剣が一際強い光を放った。その一撃を受け止めるギガンテスの巨体が震える。メキッ……。耐え続けていた両腕に、ついに亀裂が走った。
「なっ……!」
兵頭の表情が凍りつく。
次の瞬間――岩の守りを断ち切った黒き一閃が、そのままゴールネットへ突き刺さった。三対二。雷門、逆転。
そして、試合終了を告げる笛が高らかに鳴り響いた。歓喜に包まれる雷門イレブン。仲間たちが勝利を分かち合う中、奏音だけは胸元へそっと手を添える。
(京ちゃんが決めてくれた……でも……)
あのまま前へ踏み出していたら。あの胸の高鳴りの先に、何が待っていたのだろう。答えは分からない。それでも、小さな悔しさだけが胸に残り続けていた。
「……ナイスパス」
剣城は短くそう告げると、小さく息を吐いた。
「うん」
奏音は微笑み、小さく頷いた。
胸の奥では、誰にも聞こえない旋律だけが、静かに鳴り続けていた。