短編
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仕事の付き合いで部長と営業先の方と食事をしたのだが、どうも疲れる。結構有名なお店だと知ってたが仕事で食べると美味しいと思うより気疲れが勝ってしまう。
業務が終わり、ため息を吐きながら自宅のアパートに向かうと窓が明るい…どうやら尾形さんが私の家にいるらしい。
恋人様はもう仕事が終わってわざわざ私の家に待ち構えているようで珍しいな、と考えつつも少し口角が上がる。好きな人が仕事終わりで疲れた時に会えるのは随分気分が良いものだ。私は少し急ぎ足で階段を駆け上がった。
「尾形さんただいま!」
「…おう」
「私の家に来るなら事前に行ってくれば良かったのに、ビール足りてるかな」
「買ってきた」
「本当?やった!」
家に帰ると尾形さんが買ってきたであろう晩酌用のおかずと缶ビールを私に見えるように掲げた。ただいまに応えてくれる声で心が満ち溢れていくのがわかった。笑顔で缶ビールを冷蔵庫から取り出し早速煽った。冷たい炭酸が体に染み入る。夢心地になりながらもふとした疑問を尾形さんにぶつけた。
「尾形さん今日はどうしたの?」
「たまたま近くに寄ったから……おい、そのジャケット」
そう言って彼は鼻をすんとさせてこちらにふみ寄って上着を脱がせる。そのまま上着が床に放られてしまった。皺になっちゃうよ、なんて言いながらハンガーにかけようと身を屈ませたらラリアットの如くお腹に腕がヒットしそのまま一緒に床のクッションに沈んだ。
「ぐぇ、何するんですか尾形さん」
「…」
どうやら抱き寄せたかったつもりが力み過ぎてこんな感じになったのだろうかなんて都合のいいように考えていると、ぽそりと彼が「香水の匂い」なんて呟いているのが聞こえた。
「あー今日営業先の人と食事したから…匂いついてたのかな。そこで食べたご飯緊張して味しなかったから今度行こうよ」
「…そうか」
「それでこの腕はなんでしょう」
ぐっと抱き寄せて胃が圧迫していることを訴えると、さっさと解放してくれた。ぬるくなる前にと缶ビールに口をつけながら、「今の腹のラリアットはキツかった!」なんて笑いながら話していると、尾形さんは私から目線を逸らし残ったビールを飲み干してやや投げやりに口を開けた。
「すまん。嫉妬した」
「え…え!?」
まさか尾形さんの、あの尾形さんの口からそんな素直な言葉が出てくるなんて!目と口を大きく見開いて驚きつつも喜びの感情が湧き出てくる。
「尾形さん…が、嫉妬!は〜…尾形さん…でも大丈夫。これは営業先の男に人のだと思うし、あ!次から尾形さんの香水借りて行こうかな!?」
「煩い。前言撤回だ。知らん」
「そんな〜〜!」
ふい、とそっぽを向いて髪を撫で上げている尾形さんの背中にひしりと縋るように抱きつく。普段はさっぱりとした対応なのに、ごくたまに見せてくれる一面がこんなにも愛おしい。機嫌を直してもらうように私は冷蔵庫へと向かった。