本編
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大変なことになった。そろそろ中間テストの時期が来てしまったことに気づく。今回の点数が悪かったら補習確定なのだ。大量の課題レポートをやらされるのは勘弁だ。どうしよう、と悩んでいる時あることを思い出した。そうだ朧くん賢いんだった!こうなれば相談だ思い切って直接頼んでみよう、そう思いながら家を出た。
8時、いつもの待ち合わせに合流して歩き出した時に私は切り出した。
「朧くんって数学と物理得意?」
「得意ほどではないが…苦手ではない。どうした」
「この科目すごい苦手で次のテストで赤点取ったら補習なんだよね、よかったら教えて欲しくって」
「構わないが…いつが良い」
「私はいつでも良いよ!放課後とかでも」
「そうするか」
承諾を得ることができてほっと胸を撫で下ろしていると、朧くんは首を傾げながら疑問を尋ねた。
「クラスメートに教えてもらう方が範囲や内容がわかりやすいんじゃないか」
「え〜…と…朧くんって数学と物理得意そうな顔してるから…」
「どんな顔だ」
ふと彼が微笑むように笑う。確かに。私もそう思うけど…なんだか教えて欲しかったのだ、朧くんに。
早速今日の放課後に勉強しようとのことで時間と場所の約束を取り付けてお互いの高校への道に分かれた。
放課後、お互いの学区の間にある大きめの図書館があるとのことなので、そこに向かうことになった。
たまに下校は一緒になることがあるが、いつもより長くお喋りできるのは嬉しいな、なんて話したら生憎勉強の話だからあまり面白くないかもしれない。なんて返されて私は笑った。
図書館の閲覧席に隣同士で着席して荷物を置き、テスト範囲とその課題を鞄から取り出す。とりあえず問題を解いてその後に答え合わせと、わからない問題を教えてもらうことになった。
…黙々と進めていたが一通り解いて何個かわからない問題に詰まってしまった。うん…と悩んでふと朧くんの方をのぞきみた。私が問題を解いている間に課題をしているようで、集中して問題を解いている横顔はなんだかかっこいい。
気づいてない様子なのでついまじまじと見て思案する。顔の中心に大きな傷が目立つが、顔が整っているせいかあまり気にならない…私の好みなんだと思う。それよりクマが強く出てるから、あまり眠れてないのか、疲れてないのか心配になる。あまり無理して欲しくないな、番長やってるとか言ってたし…なんて勝手に心配していると朧くんはもう問題を終わらせたみたいでペンをプリントの横に置いた。
「名前は終わったのか」
「えっと…終わったけどわからないのが何個かあって」
「どれだ」
覗き込むように朧くんが体を寄せる。なんだかすごい距離が近くだと感じてしまって集中できない。体温とか、匂いとか…良い匂…ん?鉄臭いぞ…?
恐らく学校にいる間シメて来たんだろうなと冷静になってしまった。怪我なさそうだから良いけど。
「この公式を使うと良い」
「あ、それ使うんだ!なるほど」
一人で勝手にソワソワしていたけど教えて貰ううちに朧くんの教え方がすごくわかりやすくて勉強に集中できた。教えるのがうまい人は頭がいいとは言うけど本当なんだなぁ
1.2時間経ち、窓の外がだいぶ暗くなっていた。放課後からだからかあっという間で少し惜しい気持ちになりつつもそろそろ行こうかと席を立つ。
「今回は数学だけだったから次は物理もやらなければな、いつがいい」
「いいの…?」
「短い時間で教え切るのは難しい。駄目だろうか」
「いや!本当に感謝してるよ!でも大丈夫?私に時間割いてくれて…」
「俺もテスト範囲が近い。一緒に勉強すれば捗るから気にするな」
朧くんの気遣いにじんと心に染み入る。お言葉に甘えて次の日もできるかとお願いした。
「名前ちゃん、どうしたの?そんなニヤけちゃって」
「え?へへ…そうかな」
翌日の昼休憩にて、テストの範囲が広いとか次のテストが終わったら休みの日はどこに遊びに行こうかとか買い物したいとかそんな話をしている中、妙ちゃんが話題を替えてきた。
「あんなにテストについて頭を抱えていたのにご機嫌じゃない。苦手教科の対策でもできたのかしら」
「え!なんだよそれ私にも教えろヨ!」
「対策というか、教えてくれる人を見つけたから…」
「まさか…他校生の?」
「な、なんで分かったの!」
「図星ね」
神楽ちゃんが身を乗り出してせがまれ焦っていたときに妙ちゃんに言い当てられてドキりとする。家庭教師とか塾講師とかあるのでは!と思ったが当てずっぽうのようでしまった…とがくりと項垂れた。
「そんなガッカリした感じ出されても…別に朧さんに私たちも教えてもらおうなんて思ってないわよ」
「う、そんなこと考えてないし…」
「それに、朧さんも名前ちゃん以外には教えたくないんじゃない?そんなにお人好しには見えないけど」
そうなんだろうか、友達だから親切にしてくれたと思ってたけど、みんなは友達というか敵対してたし確かにそうか…
「それに、名前ちゃんも2人きりの方がいいでしょ?好きな人と図書館デート、いいじゃない」
「ぶっ」
「名前汚いアル!」
口に含んでいたコメを少し飛ばしてしまった。す、好きとかまだそんなこと一言も言ってないのに!
「あら、私はてっきり好きなんだと思ってたけど」
「そっそれはあ…うう…」
何も言えず頬が熱くなる。す、好き…私は朧くんのことが好きなのか…否定できない。
「例えば、好きな人の前では身なりを気遣おうとしたり」
「うっ」
「好きな人のことばっかり考えたり、頼ってみたり見つめちゃったり…」
「うう…」
「距離が近くなっても嫌な感じしないとか?」
「な…るほど…」
全部当てはまる困った。困った…
結局また違う理由で頭を抱える理由ができてしまった。向こうはきっと友達だと思ってる相手に、好きだと思ってしまうとは…
「あと恋しちゃうと何も身が入らなくなるというから、図書館デートの時は頑張るのよ」
「とどめだよ、それ…」
妙ちゃんのニコリとした笑顔に対して机に頬をついてため息をはいた。
今日はきっと顔をまともに見れない気がする。
放課後、スマホで時間を伝えて待ち合わせ場所に向かう。急に好きだと自覚してしまったらどう対応したらいいんだ。いや、いつも通り…いつもどおりで行こう…落ち着け。脳内会議でどうするか試行錯誤していると見慣れた灰白色の髪の毛が見えた。朧くんだ。
か、カッコいい…
いや待ってもういつもとの気持ちじゃない!恋愛モードに突入しないように頭を振る。
「待った?ごめんね」
「いや、来たばかりだ。行こう」
そう言ってお互い歩き出す。
「?なんだ。そんなに端で歩くと溝に落ちる」
「え、アッ!そうだね…」
無意識に距離を開けてしまったみたいだ。違和感だろうか。でも近くにいたら心臓が爆発する…!
意識しないように頑張ろうとすると意識してしまうもので、顔から湯気が出そうな感じだ。
「…熱でもあるのか、無理はするな」
そう言って朧くんの大きな掌は私の額に触れた。少しヒヤリとする彼の手はあの時の風邪をひいた時の事を思い出して余計に顔が熱くなる。
「な、ナイナイナイナイ!」
「そうか…しかし体調が良くなさそうだ。今日はやめておくか」
正直気持ちの整理がついていないので彼の提案は大変助かる…けどまだ一緒にいたい気持ちもあって。
「ごめん…そうするね。で、でも家まで送って欲しいな〜なんて…」
「無論だ」
友達にこんなお願いしてもいいのか脳がパンクしている中、恋人みたいなお願いしてしまったか訳が分からなくなって、して欲しい事をお願いしてしまったが彼は元々送ってくれるつもりだったらしい。うう…優しい…
私の家に行くことになり方向を変えて歩き出す。
…いつもの日より言葉少なになる。これじゃいつも通りなんかできないじゃないか!なんて考えていたら自宅の屋根が見えて来た。玄関先で立ち止まる。
「また、都合の良い時があれば教えてくれ。まだ試験まで日にちがあるから無理はするな」
「うん…」
「名前は、そんなに勉強ができないわけじゃない…と思う。焦る必要はない」
「ありがとう、朧くん」
心配させてしまって申し訳なくなる。無理はしていない。私が勝手にパニックになっているだけだ。
また、そう言葉を交わして彼の背中を見送った。朧くんは優しいな、やはり絶対モテる…モテるよなぁ。なんて知りもしない架空の女子を思い浮かべ、玄関の門に寄りかかる。
はやく落ち着いて気持ちを整理して、朧くんにちゃんと教えてもらったところを勉強しないとな、なんてぼうっと考えながら家に入った。