本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
冷たい風が頬を掠める。寒さに少し身震いしゆっくりと目を開ける。体育館のような…倉庫?だいぶ広い倉庫のような場所が眼前に広がっていた。
現状をもっと把握しようと立ち上がろうとしたが手足を縛られていることに気づいた。パイプ椅子の背もたれ部分と腕を拘束バンドで締められているようで、動かすとめり込んで痛い。膝下はビニールテープでぐるぐる巻きにされて動かせない状態になっている。
「えっ…」
混乱する。最後に何してたっけ、確か朝はちょっと早起きして待ち合わせに早く着いて朧くんと合流してそれから………
思考を必死に回らせていると見たことがある学ラン姿の屈強な男の人たちがいっぱいこちらに歩いてきていた。その中にさっきまで考えていた彼も、そこに居た。
「朧くん…?」
「名前」
「だっ大丈夫?!怪我ない?!」
「…?」
朧くんは不可解そうな顔をする。学校の怖い人たちに脅されてこんなことをしてるんじゃないのか。今考えた結論はこうだった。でも彼の様子からして違うようで。
「名前、勘違いしているようで悪いがお前は今から人質になってもらう…吉田松陽とお前を交換する、あと担任も絞める。悪く思うな」
「いや悪く思うな言われても」
朧くんは私のスマホをかざして見せた。画面には神楽ちゃんとのLINEトークに気絶して縛られてる私と脅迫文が並び、既読済みという文字が浮かんでいる。なんで!?と大きくツッコミを入れそうになるがぐっと堪えた。そんな雰囲気じゃなさそうだ。気になったことを聞いてみる。
「松陽くんと知り合いなの?」
「名前が言ってたクラスメートは全員知っている。吉田松陽は昔、俺の先輩だった。高杉と銀八は以前にここでやり合ったことがある…あの時は決着が付けられなかった。
松陽くん転校生だったのか、確かにいつの間にか居てたしな。というかそんな事件あった気がする。私が胃腸炎で休んでた時に高杉くんを追って3Z総出で他校に向かったって話…友達に詳細聞かなかったから全然わからなかった。"天照院高校"という単語はそこから聞いてたから、なぜか聞いたことがあったな〜と感じていたことに合点がいく。
「人質といっても来る確証があるの…?」
「ある。」
「まさか以前も人質作戦を…!?」
だからこんなに手慣れてるのか…と感心する。いや、感心してる場合じゃない!
もしみんな来なかったら…そう思うと背筋がひんやりする。
「もし…交換条件が拒否されたり、そもそも来なかったら、どうするの?」
「…」
彼は答えなかった。本当に来る確証があるのか、はたまた言えないような酷いことをされるのか。私は考えたくもなくて項垂れた。
しばらくすると辺りが騒がしくなっていた。みんなが来たのだ、本当に。
倉庫の入り口にみんなが立っている。そこに銀八先生が前に出た。
「おーおーまたこんなこすい真似しやがって天照院高校の番長さんはこれ以外のことはできないのか?」
「なんとでも言うがいい」
…ん?番長?
「え?番長?」
「お前知らなかったのか…天照院高校を総括した番長…それが朧だ」
「え?!!?朧くんが?!」
土方くんの発言に驚く。また土方くんも目を丸くした。
「朧くん…?まさかそいつ」
「前に話してた知り合いのことだけど」
エエエエ!?と驚いた様子だった。私も驚いた。後ろの強そうな生徒たちを仕切る側だったんだ…
そんな驚愕の事実を知って一息つくまもなく空気がピリピリとひりつく。このままじゃ争いは避けられないのか。
友達同士が喧嘩してるところなんて私は見たくない。しかも自分が噛んでると余計に。必死になって朧くんに訴えかける。
「そんな、無理に松陽くんを高校に戻そうとしなくてもいいよね?!まずLINE交換したりクラスに遊びにいくことだって…」
場にそぐわないような意見だがいい折衷案だと思う…そんな訴えの中1人のモブが私に向かった。
「うるさい。人質は黙ってろ」
そう言って頭を殴られた。脳が揺れる。女の子に対して力加減がなってないんじゃないのかと変に冷静になる。意識が朦朧としている中大きなぶつかる音がして、必死に誰かが私の名前を呼ぶ声がして…そこで意識が途切れた。
気がついた時には自分の高校の保健室で寝ていて、月詠先生がこの一件は終わったことを教えてくれた。