後日談や学校ネタ関係短編
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文化祭。
私のクラスの3年Z組は銀八先生が各自好きなようにしろとのことで、みんな散り散りに好きなようにしている。一応展示ということで缶ジュースに「丸ビル」とつけて教卓に置いてある仕様だ。…これを展示と言い切るのはやや難しい気がするが。
私は何をするかというと、1日かけて文化祭の催し物を物色したり観たりダラダラと過ごそうかなと考えていた。…朧くんと。
この高校は外部の人でも来場可能とのことなのでせっかくならと先日お誘いしてみたのだ。他校生なだけあって中々長く時間過ごすことが少なくて、登下校を共にすることが殆どだった。
「朧くん、来週の週末に文化祭があるんだけど、良かったら一緒に回らない?私のクラスは展示だけだから一日中時間あるし!」
「文化祭か、友達と回るものではないのか」
「朧くんがいいんだよ!友達模擬店で忙しいから1人で寂しいんだよね…」
「…俺で良ければ」
「じゃあ校門で待ち合わせね、ホームルーム終わったらメールするから!」
「わかった」
少しほっとしたような表情をしている彼を見て、天照院高校の生徒が来ていいのかと迷っていたのかなと考える。最初から一緒にいたいから誘うつもりだったなんてちょっと恥ずかしくて素直に言えない自分も自分だ。その後お互いの通学路へ向かうために別れた後嬉しくてスキップしながら学校に向かった。
…そんな事を思い出して自室で思わずにやけながらベッドへ飛び込むように寝転ぶ。明日がその文化祭だ、楽しみだなあ。
ややくたびれた文化祭パンフレットをもう一度広げて出店や催し物を見直す。どこでご飯を食べるか、見てみたい映像作品、展示は何かなど思考を巡らせる。
朧くんとならどこへ行ってもきっと楽しいけれどもっと楽しくしたい…朧くんがどんなリアクションをするのか、色んな表情が見たいのだ。
期待に胸を弾ませながベッド上で左右に転がる。そんな時に友達から一通のメールが届いてきた。新作の映画の話かな、なんてメールを開くと、
『名前!ごめん風邪ひいたみたいで私のクラスの催し物のシフトちょっと代わってくれない…?お願い!』
と記載されていた。
シフトだとしても1時間くらいだろうか、確か友達のクラスの催し物は…
文化祭当日。
外部の人用の会場時間はHRが終わったくらいの時間帯なのでHRが終わるや否、すぐメールを送り教室を飛び出した。校門より高い位置にある正面玄関から辺りを見回す。そこそこの人が正門から入ってくる中でやはりあの灰白色はわかりやすいなぁと思いながら急いで階段を駆け下りた。
「朧くん本当にごめん!友達のシフトを少しだけ変わらないといけなくて…開始早々の午前中なんだよね、その間だけ好きに回ってくれてもいいから…!」
「メールでも確認した。その友達のクラスは何か出店でもするのか」
「う、うん…ちょっとね、喫茶店みたいな」
「名前と文化祭を観て回るのが目的だ、俺もそのシフトの時間の時に同行しよう。客としてだが」
う…嬉し恥ずかしいような、シフトの代行がコスプレ喫茶店の接客なのだ。その友達がメイド服を着れるとウキウキしながら教えてくれたことを思い出す。数少ない経験として割り切ればいいが…もしかしたら違う衣装も残ってるかもしれないけれど、朧くんに見られるのは照れる…と考えながらその模擬店をしている教室に二人で向かった。
「あ、名前さん今日はありがとう。本当に助かるよ〜」
そう言いながらクラスの人がお礼を言う。
「風邪だから仕方ないよ…あと私が裏方じゃダメなのかな」
「裏方の子は基本こういう格好は苦手なことが多くて…だからお願いね」
「そっか、仕方ないかぁ」
そう渋々着替えようと隣の着替え用の教室に向かおうとするとあっ!と驚くような声が聞こえた。
「誰そのイケメン!他校生?あなたもヘルプにきてくれたの?」
「いや、俺は」
「名前さんヘルプも呼んでくれたの!?助かるわ」
「え……うん!」
勢い良く頷く。朧くんには悪いけれど、朧くんが色んなコスプレしているところがめちゃくちゃ見たいと瞬時に脳が判断してしまったのだ。
「名前」
「お客さんとしてずっといるより一緒に働けたらいいかな…って私からもお願い!」
手を合わせながらお願いすると仕方なさそうに同意してくれた。優しい…
辺りを見回すとクラスの子が衣装が沢山あるラックを見せてくれた。男物、かなり豊富だな。
「俺は…なんだ、どれを着ればいい」
「ぜ、全部…」
欲望が全部漏れてしまったような発言をしていると、ファッションショーじゃ無いんだからとクラスの子に呆れられてしまった。
結局私は悩みに悩み執事服を選んで朧くんに渡した。それを受け取ってさっさと着替えようと隣教室に入っていった。
数分後、改めて教室が開く音がしてそこへ視線を移すと執事服の朧くんが立っていた。
「これでいいか」
カッコイイ…
思わず言葉を失ってしまう。体のラインがわかるベスト服にスラリとしたスラックス。そして白手袋…コスプレ用なので少しチープな素材だが逆にサテンの艶がへんに色気みたいなのがあってドキドキしてしまった。
「すごい似合ってるよ、朧くん!凄くかっこいい」
「…名前は何を着るんだ」
話題を逸らすように目線を逸らし、私にそう投げかけた。
「朧くんが接客やってくれるから私は裏方でもいいんじゃないかなって…」
「…」
「もちろん貴方も出るんだけど」
不服そうな朧くんと何やる事を転換させてるんだと言いたげなクラスの子の両方の圧で、わかりました…といそいそと着替え用の教室に向かった。
メイド服はクラシカルなロングタイプだといいなと思っていたがいざ衣装を広げると秋葉原タイプの短めのメイド服だった。似合うのだろうかと心配しつつも覚悟を決めてさっさと模擬店の教室に入る。
「着ました!シフト終わるまで頑張ります!」
そう勢い良く飛び入ると、クラスの子が似合ってるよ、がんばれ〜と言いながら早速入っているお客の相手をしている。反応が薄くて逆に恥ずかしくなくて良かった。早く案内しないととメニュー表を取ろうとしていると朧くんがずっと立ち止まっていることに気づく。まだ彼のリアクション見てなかった…。
そろりと彼を見上げると目が合う。それが急に恥ずかしくなって少し俯いてエプロンを指で弄ってしまう。
「ど、どうでしょうご主人様〜、なんて」
「執事とメイドは同職種だからご主人様ではないと思うが…その、可愛らしい…というのだろうな…お嬢様」
そんな朧くんの返しに頰が熱くなる。彼も肌が白いせいか耳が少し赤くなっているのを見てお互い落ち着きのない動きをしていると、何いちゃついてるの!仕事して!とクラスの子に一喝され慌ててお客さんを席に案内した。
1時間と半ば程が経ち、そろそろ交代してもらっていいよと声をかけられた。まだ午前中だけなあってそこまで忙しなく対応しなくて良かったと息をついた。
そうだ、と朧くんに声をかける。
「朧くん、せっかくだし写真撮ろうよ。記念に!今なら残ってる衣装に替えて撮ってもいいって。何がいい?」
「…何でもいい」
やや思考を巡らせながら彼は言った。あまり頓着がないのかなと思うと、
「名前がどの服を着ても似合うと思う。どれも見てみたいが…名前の好きなもので良い」
そんな直球なこと言われるとは思わず両手で顔を覆う。顔から火が出そうだ。ずるいよ朧くん…
じゃあ今きた衣装で撮ろうとクラスの子に何枚か撮ってもらったり自分でもうちカメラで自撮り風に撮ろうとすると朧くんが屈んでくれた。身長差があるのでいつもとは違う彼との顔の距離にソワソワしつつもなんとか写真を撮った。そのあとお礼にお菓子がいろいろ入った小袋をお礼に貰い、元の制服に着替え二人で教室を出る。
「ありがとう朧くん…付き合ってくれて」
「こんな経験するとは思ってなかったが、楽しかった」
「お礼にここの屋台のフランクフルト奢るね!」
「ああ」
そうパンフレットに印をつけておいた屋台を指差す。
早速良い思い出ができたなと感じながら屋台へ向かう。文化祭はまだまだ始まったばかりだ。
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