本編
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ご飯を食べるまであと数日。どこへ行こうかなと思考を巡らせる。ラーメン、ファミレス、ハンバーガー、牛丼…朧くんがご飯食べてる姿を想像して口角が上がりっぱなしだ。特に見てみたい彼の食事風景で決めちゃおうと下心がこもる選択で絞ることにした。
次は着ていく服を決めなければ。何にしようか迷っている時に私服姿の朧くんが見られることに気づきさらにグッと拳を天井に突き上げた。側から見たら気味が悪い姿だけども。
自分の格好は、ご飯食べにいくだけだし、張り切りすぎるのもと考えてラフな服装を選んだ…けどなるべく新品な服を下ろしてしまおうかな。
こんなに浮ついてるのは私だけだろうか、楽しみすぎてうまく寝付けない。待ち合わせと時間が載っているトーク画面を眺めながら布団を被り直した。
当日、駅前で待ち合わせしようと決めていたので早めに家を出る。朧くん10分前行動派なのか早いから私も負けじと10分前行動だ。
待ち合わせ場所に向かうともうあの見慣れた灰白色の髪が見えた。手を振ると向こうも気づいたようで小さく微笑んでくれた。朧くんはジャケットにパーカーとシンプルな格好をしていた。なんでも似合ってカッコイイ!見惚れちゃうなぁとその姿を噛みしめながら彼の方へ走り寄った。
「朧くん!相変わらず早いねぇ」
「そうか、早すぎるだろうか」
「早く会えるから全然いいよ!」
そう話ながら電車に乗り込む。目的地は数駅先のハンバーガーショップだ。値段も手ごろでお喋りもしやすいし、何より朧くんがハンバーガーをいっぱい食べてるところが見たいという気持ちが一番大きかった。
早速目的の店に入りメニュー表を眺めながら何にしようかウンウンと悩む。朧くんはもう決まったのかなと声をかける。
「朧くん、遠慮なく食べてね!私の奢りだから」
「そうだな、遠慮したら色々言われそうだ。…名前の好きなものは何だ」
「私?」
「どれが良いのか判断しかねる」
「じゃあ私はいっぱい迷ってるから、それ全部頼んじゃおうか。朧くん頑張って食べてね」
「善処する」
そんな話をしながら適当なものを注文して会計を済ませ、番号札を受け取って端の席で待つことにした。
すぐにハンバーガーやサイドメニューが運ばれてきて早速食べることにした。ポテトを摘みながら朧くんが食べる様子を見ようとすると彼と目が合った。何故かそっちも様子を伺ってる様だった。
「名前、食べないのか」
「食べるよ!朧くんも食べようよ」
お互い食べず様子を伺うのがおかしくて、笑いながらハンバーガーに口をつけた。
…美味しい!久々にここの店に来たけど正解だったなとしみじみ思いながら食べ進める。朧くんも一つ目を食べ終わりそうな所で少し頬を膨らませて食べているのがなんだか可愛い…これがギャップという奴だろうか。
大方食べ終えて残ったポテトを食べながら前回のテストの話をする。朧くんのおかげで苦手教科が好きになりそう!とか…因みに今回の朧くんのテスト結果を教えてもらったらさすがと言える点数揃いで感心してしまった。次回も朧先生にお願いしたいと言ってみたら構わない、と承諾をもらった。やった!しかし凄く優等生なのに番長やってるのが不思議だ。
お話しできると選んだ店だとしても長居しすぎるのも良くないので場所を変えようと席を立つ。
「この後用事なかったらどこか行きたい所ある?なんて」
「用事はない。お前といくならどこへでも楽しいと、そう思う。不思議だ」
「そ、うなのかな…エヘヘ…」
そう照れながら頬をかいていると後方からザワザワと喧騒が聞こえてきた。振り向くと複数人の短かったり長かったりと改造された学ランをきた不良がこちらに向かって歩いてきている。その中の1人の不良がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「おいおいあの天照院高校の番長様とやらが呑気に女連れてるぜ」
「…」
「そこのカノジョ、そんな仏頂面の奴よりも俺たちと遊んだ方が楽しいよ?」
「えっ!そんな…朧くんの彼女に見える…?」
「何照れてんだこいつ」
まぁいいか、なんて改めて周りの不良を取り巻いてそうな人がこちらに向き直った。
「朧、お前は天照院の番長らしいな。お前とタイマンで勝ってここ周辺の高校のテッペン目指ジッ
ゴッと鈍い音が鼓膜を震わせた。男が話し終わる前に顔面に一発朧くんが入れたからだった。
「彼女に少しでも触れてみろ。只では置かないと思え」
「もうすでにタダじゃないね」
あれほど威勢よく向かってた相手がすぐ撃沈している姿を見て自業自得だけどなんだかかわいそうだなぁと他人事のように考えた。取り巻きの人たちドン引きしてるし…
さてどうしようかと朧くんを見やれば手を握られ走りだした。喧嘩沙汰になってめんどくさいことにならないように撤退するのだろう。慌ててついていけるように走る。朧くんの手の大きさにドキドキしている場違いな自分になんだか呆れてしまった。
2人で走って人通りが少ない所で立ち止まる。
数分の沈黙。
「すまなかった」
息を整えている私に朧くんがポツリと呟く。彼を見上げると少し寂しそうに視線どこか遠くを見て、数秒後視線を私に移した。目と目が合う。
「また怖い目に合わせてしまった。」
「ううん。朧くんかっこよかったから全然怖くなかったよ!本当に何もされずに終わったし…朧くんは有名なんだね」
「そうなんだろうな、俺と喧嘩に勝って名をあげたい奴もいる」
朧くんそんな強いんだ…番長だから勝ったら高校の中で1番になるからって事なのだろうか。勝っていいことあるのかわからないけれど…
「……中途半端な時間になってしまった、今日はもう帰ろう。家まで送る。」
「そうだね…ちょっと寂しいけど。ありがとう」
次はどこに行こうか、他に食べたいものとかない?とかそんな話をしながら電車に乗って家に向かう。
電車のシートに座りながら考える。
朧くん、私のこと嫌いじゃないと分かるけど、恋愛感情としての好きが欲しいと思ってしまうのは…わがままだろうか。でも友達としてこうしてご飯を食べたり出かけたりお話ししたりするのがすごく楽しくて、ずっとこのままでいいと思う自分がいる。でも彼の世界と自分の世界はちょっと違うんだなぁと実感してしまうのも事実だ。番長っていうのも大変なんだな。
こういう時どうしたら良いのかわからない。時間に身を任せてたら解決してくれたら良いのに…
「今日は奢ってもらって感謝する、楽しかった…そしてすまなかった」
「いいよいいよ、あの店気に入った?また行こうね。私こそ送ってくれありがとう」
「……そう、だな」
家の前まで送ってもらいお礼を言う。なんだか歯切れが悪い回答の彼に申し訳なさすら感じる。そんな気にしてないけどな。
「まあ週明けに!」
「また」
ちょっと無理やりに元気よく、笑顔で別れの挨拶をする。朧くんには笑って欲しいな。
彼が帰路につく様子を眺めながらそう思った。